名も無き村へ・・・
翌日俺を乗せたEK機は9時間のフライトで、
ガーナ共和国の首都アクラにある コトカ国際空港に着陸した。
「人生初のアフリカ大陸だ」
南インドや、ドバイとは比べる事の出来ない屈強な男たちから入国審査を受けた後、到着ロビーへと向かって行った。
「あぁアフリカ人もインド人以上に見分けがつかねぇなぁ」 一人ごち呟きながら、アナンダンの食堂で渡された写真と 出迎えゲートで押し合いへしあいしている アフリカン人群集の中を必死で探している最中、 漆黒の肌の男イマノワが肩を叩いた・・・。
少しコミカルなアクセントを持つ英語で、ドバイには中古車の買い付けで良く出向いていた事、現地のヤードで働く仲間からアナンダンを紹介された事そして、彼の父親が所有している山に金脈があり、それを安価な買い上げ金額しか提示しない政府機関を通さず現金化する為に、サンプルをアナンダンに渡した事等 荷物を積み終え走り出した、かなり年季の入ったパジェロのハンドルを握りながら、彼は話し続けていた。
イマノワに取っては、俺が換金作業の為の大事なパイプ役だ。
興奮が抑えきれない気持ちは、十分理解できた。
車は程なくアクラ市内に入った。市内は、紛争とは無縁だった数少ないアフリカの都市として栄えており、爽やかさを含む乾いた暑さはドバイを体験した俺には、拍子抜けする位だった。
そして混沌の楽園チャンナイやオールドドバイよりすっきりした触感の町並みが勝手にイメージしてきた、雑踏の中を体力で渡りきる国アフリカ・・からは随分異なっていた。
車は、イマノワの事務所にこの日は立ち寄らずホテルへと到着した。
「明日はここから15時間の移動になります。今日はゆっくり
身体を休めて、明日の移動中にじっくり話をしていきましょう」
チェックインを終えたイマノワはそう言って別れた。
年齢は、シャンカール達と同じ位だろうか?既に日本を離れて一週間以上経つが、俺が出会い関わっているこの三人の様な、未知へとリスク承知の上で乗り出し綿密なプランを策定し、3国を跨いだ信頼だけをベースに 壮大なプランを現実化しようというタイプは、疲弊を始めていた日本では巡り合う事のないタイプの人種だった。
日本から南インド、ドバイからガーナ、少し身体に堪えるスケジュールをこなし終え、いよいよ明日には 金鉱へ向かう。
この夜は、苦味のある現地のスタウトビールも程ほどに
早めに身体を休めようと床についたのだった。