「WHY.inc」始動カウントダウン
4人を乗せた車は、近代的なビルが立ち並ぶエリアから、少し古ぼけ煩雑な一角に入っていった。
カンドーラという、ここに来るまでに見てきたサウジアラビアを中心としたエリアの正装を着た人が減り、ラフな格好をした人達が増えてきた。
「このエリアは、ドバイバブルに連動した建築ラッシュが始まりだしたのと合わせて、スリランカ、パキスタン、バングラディッシュやインドネシアと言った、どちらかと言うとイスラム色の強いエリアからの労働移民達で形成されているエリアなんです。(East Sun)社の共同経営責任者であるアナンダンは変わり者でねぇ、この場所を余り離れたがらないので・・・・。山竹さんを含めた日本人には余り馴染みのない場所ですがお付き合いください。」
進道氏が、口元に笑みを浮かべながら説明を終える頃、車は一軒の薄汚れた食堂の前に停車した。
「車を、駐車場に入れてきます」
サラバナンを見送り、移民客で賑わう店内へと山竹達は入っていった。
確かに、ドバイ入国以来見ることの無かった人種たちだった。皆、カレーを頬張りながら、訝しげに自分を見つめていたが、進道氏には笑顔で会釈をする客も多かった。彼は、ここの常連のようだった。
「アナンダン。彼がプロジェクトを任す事になった山竹君だ。」
店の奥にある、事務所は質素だがこ綺麗なオフィスになっていた。
少し気難しさをまとった顔つきだが、目元に深く刻まれた笑い皺が相手を安心させる特徴となっていた。
「MR・山竹。今日から仲間になったんですね!。僕も最初にMR・進道からプロジェクトの話を、聞いた時、正直良く理解出来きませんでした。けれど、何度もシャンカールを含めプロジェクト全体が持つ意義とMR・進道の揺らがない信念を感じるにつけ、挑戦するべき事案だと思うようになりました。先程オフィスで説明を受けたと思いますが、このプロジェクトには成功も失敗もありません。MR・進道は、自分自身の還元だと言って聞かないですが、シャンカールも私も、幾らでも資金投下出来ますから何も心配せず参加してください。今夜はうちの店で祝杯の席を用意してますので・・・。」
そう言って、食堂隅に設けられた一席に自分達を案内してくれた。