「WHY.inc」始動カウントダウン
「さぁ、奥の部屋でMR・進道とパートナーのMR・シャンカールがお待ちです」
サラバナンに促されて、竹山は広いオフィスを奥へと進んでいった。
スカイプの画面に映しだされていた青空が広がる、開放的なオフィスだった自分の左右には5人ずつ大きな何枚ものモニターがセットされたデスクで、チャートを見ている人間、モニター越しにWEBミーティングをしている人間と、投資系コンサル会社と概要に記載されていた通りの業務内容だった。
「長旅お疲れ様でした。体調は如何ですか?」
通された執務室で、進道は英語でそう話しながら握手を求めてきた。
隣にいるインド系のパートナーは日本語を理解できないな?進道氏が今日、英語で挨拶をしてきた事で理解した。
「ビジネスクラスでの移動は快適でした。お心遣い有難うございました。」
自分はそう言いながら握手を返した。
進道氏の出で立ちから投資の世界での成功者をイメージしていた自分は、彼の、肉体労働者の様な無骨で硬い手に違和感を感じていた。
「山竹君。紹介しよう。こちらが私のパートナーのシャンカールだ。この会社の経営者は彼と、会うのは今夜になるが彼の友人アナンダンの二人だ。」
紹介されたシャンカール氏も握手を求めてきた。
「ようこそ。East Sunへ。MR・進道は謙遜しているが、彼が居なければこの会社は設立されていない。経営は私とアナンダンでやっていますが、MR・進道は会長職についてもらっています。」
そう説明してくれたシャンカール氏の手は、このオフィスのイメージにそぐう柔らかい手だった。
「さぁ先ず、ソファーに腰を降ろそうじゃないか」
50インチはあるであろう大型タッチモニターが埋め込まれたテーブルを挟み自分は進道氏達と向かい合う形で、重厚なソファーに腰を降ろしたモニターの待機画面には
「WHY.inc.」という文字が、白から黒へゆっくりグラデーションしていた。