名も無き村へ・・・
翌早朝、イマノワがホテルに迎えにやって来た。
「MR・進道。村(ヴィレッジ)に向かう前に私の事務所に立ち寄って、スーツ等村での生活に必要のないものを降ろして行きましょう。私が責任を持って保管しますから。」
俺達はアクラ市内にあるイマノワの事務所に立ち寄ちより、全ての荷物を降ろして村に向けて出発した。
小一時間程でアクラ市内を抜け終え、そこからは 自分が今まで見た事の無い原色の世界になっていった。
「木々(植物も)」の緑、「赤土の大地」の赤「真っ青な空」の青
この単純な三色の繰り返しが延々と続くのだが、
時折鯨が回遊するかの様な大きな雲が空に横たわったり、みすぼらしい村を通り抜ける位で景色自体は3原色の繰り返しだった。
「MR・進道、今回の案件に参加してくれて本当に有難うございます。 シャンカールとビデオチャットで打ち合わせを重ねている際、一番のネックは 安全な運び出し要員だと、何時も悩んでいました。まさかその要員が日本人になるとは夢にも思っていませんでした。シャンカール、本当はMR・進道と此処に来たかったと思います。けれど又入国のビザ取れなかったんですね。彼が再三言っていた様に 自由に多国間を移動できるパスポートは日本国が一番だと・・言う通りになりました」
「イマノワ。感謝するには未だ早いだろ?感謝の言葉は運び出しから換金が成功してからだよ?今この時点では、お前達3人が経費を投入しただけじゃないか?」
そんな雑談を延々と続けているうち、大きな夕陽は大地に吸い込まれそこからは今まで体験したことのない様な、深く濃い闇に車は飲み込まれて行った。
唯一の明かりは、この車のヘッドライトのハイビームなのだがその光すら飲み込んでしまう漆黒の闇だった。
夕食を粗末な食堂小屋にて、豆の煮込みを、フフ・・と言うトウモロコシや芋などの粉を練り上げた物をつけて食べての小一時間の休息後、俺は、開けっ放しの車窓越しに広がる、星空の洪水を見ているうちに 寝てしまっていた。