食堂の前に立った日本人の俺を見つけ 駆け寄ってきた男が目的の男アナンダンだった。
シャンカールとは対照的に、とても温和でふくよかな顔をした男だった。
多くの労働移民が食事でごった返す中 店舗奥の応接間に案内された。
「MR・進道、覚えていないと思いますが、実は僕も
シャンカールと一緒に、クアラルンプールの屋台に居たんですよ。」
目じりに智と苦の深い皺を波打たせながら、シャンカールとの大学院での出会いから、ほぼ同じ時期に米国のIT企業に就労した事等、矢継ぎ早にまくし立てた。
この食堂を経営しながら、移民の持込みや、今から俺が行う密輸されてくる
金のブローカー業をアンダーグラウンドで行っているとの事だった。
彼の手元に今から向かう先である西アフリカ・ガーナの金が届いた事で、
今こうしてガーナ入国の打ち合わせをしているのだった。
「ガーナの空港には、今回のキーとなる、イマノワという男が迎えに来ますから、初めてのアフリカ入国でしょうが安心して向かって下さい。次回ここで会えるのは、向こうの採掘次第ですから、それまでお元気で。」
先ず俺が、現地に入り此処に採掘を終えた金を持って辿り着かなければ
シャンカールも、アナンダンも経費倒れで終わってしまう。
俺自身も、未知なる案件に不安と高ぶりとを併せ持った奇妙な心持ちだったが 「いよいよガーナ共和国入りか」
寝しなに足早に過ぎた日本出国からドバイに辿りつくまでを思い返していた。
「Good Luck」・・・との励ましとアナンダンの力強い握手が、
アドレナリンを高ぶらせ寝付くのに時間を要した。