その男シャンカール
あっという間に迎えた出発日・・・・
俺を乗せたSQ機(シンガポール航空)は
シンガポールを経由し、人の波が溢れんばかりの チェンナイ国際空港に降り立っていた。
人生2回目の渡印になるが、南インドはこの時が 初めてだった。
深夜着便にも関わらずごった返す空港内、荷物を受け取るにも入国審査を受けるにも、
人の波を掻き分ける 体力を要求され続ける空間に「何ともならんな・・」と
うんざり小言を吐いている間に俺は到着ロビーに押し出されていた。
「どの顔も同じでわからんなぁ」 そう辺りを見渡している時
「MR・SINDOU Well Come」と言うボードを部下に持たして
迎えに来ているシャンカールを見つけたのだった。
後一歩で、ノイズ(不協和音として)に到達しそうでしない街中から溢れ出すタミル音楽、
ヒンドゥの神々に捧げられるのであろうジャスミンの甘い香りが漂うが、その道路脇には野良牛とその汚物・・・・
そしてたっぷりとスパイスを消化した人々の体臭等が、重なり合い、縺れ合う
「騒音と香りの混沌(カオス)」に、軽く挨拶を交わして乗せられた車窓越しに圧倒されていた。
「この圧巻ぶりは、他アジアの国とは比べ物にならない混沌(カオス)だなぁ」
そうシャンカールに話しかけると
「人が生きようとするエネルギーが、高いんでしょうねインドは・・」
と他人事のような感覚で言葉を返した。
送り届けられたホテルでシャワーを浴びた後顔は笑うのだが、目の奥は決して笑わず
途中立ち寄ったガネーシャの銅像には平伏すのだが、 自らを明け渡す宗教心は感じさせない男・・・・
そんなシャンカールの顔を思い起こして深い眠りについたのだった。