「WHY.inc」始動カウントダウン
「ホテルはその後どうだ?」
山竹をサラバナンと送り届けた後、自宅からガーナのイマノワにスカイプの着信を入れた。
「お久しぶりです。MR・進道。お陰さまで順調です。ダニエルもホテル支配人が板についてきて、ガーナ国内企業の外貨獲得コンベンションや、日本のNGOの会議などの受託を取り付けてきました」
画面に映るイマノワは快活そのものだった。
背中に大きなラジカセを背負っていたひょうきん者のダニエルの大きな成長は俺にとっても嬉しいニュースだった。
「ダニエルには余り根を詰めないように伝えてくれ。こちらも3ヶ月以上掛かってしまったが、プロジェクトの責任者も決まり、いよいよ近日中に始動できそうだぞ。新しい仲間を連れて落ち着いたら、又ハンモックに揺られに行くよ」
そう話しながら俺の脳裏には、「名も無き村」の星空がよぎっていた。
「そういえば、シャンカールからウラニのリベリアの農園で、産業用の麻の栽培し繊維用に加工まで出来るか?・・と調査依頼が入ってますが、何か聞いてますか?」
シャンカールは、既にプロジェクトの次のステップを見据えている。
ウラニ達の農園経営を安定される事を踏まえて、Tシャツを麻にしていたのか?流石切れ者だ。
「聞いてないが、あいつはいちいち昔から細かい事は俺に何も言わねぇからなぁけど、ウラニ達がクリア出来るようにサポートしてやってくれ。シャンカールは、金鉱時代にアフリカにこれなかった事を悔やんでる所があるからな、それも合わせて(名も無き村)の仲間の輪には大きな拘りがあるんだと思うぞ。」
「僕もそれは、感じます。先日もシャンカールの友人が、うちで販売しているハンモックをWEBで販売を仕掛けたいと、訪ねて来ました。うちの親戚を含め、あの村の周りで雇用を生み出し、収穫から編み上げまでを撮影し、フェアトレードの流通に乗せて行くと言ってました。今はシャンカールさんの部下とあの山の麓に居ますよ。村を含めたメンバーには出来る限りの恩返しを続けていきたいと、何時も連絡を入れる度に口にしてると言っています。」
「いい奴だな、シャンカールもアナンダンも。今夜はプロジェクトの決起も終えたし、お前の話も聞けたし、胸一杯だ。プロジェクトが一息ついた時点で、お前のホテルで皆でな!」
ほろ酔いも手伝ってか、今夜はやけに「名も無き村」で過ごした日々を
恋しがっている俺だった。