「WHY.inc」始動カウントダウン

「概要は大変興味深く、挑戦させて頂けるなら是非やらせて頂きたいと思います。けれど、利益を目的としない活動と仰られていましたが、自分の給与は何処から捻出されるのでしょうか?」

「あぁ、すまない。その部分の説明をしなくてはいけなかったね。毎月の給与は君が解雇される前の賞与を含めた給与年収を12分割し毎月こちらから振り込みます。ドバイでの打ち合わせ渡航、滞在費や、広告代理店の追加諸経費等も全て、私の資産から清算します。シャンカールの見通しだと、ノベルティとしてのTシャツは利益を生み出す可能性が高い。その販売益30%も半期ごとに君の口座に振り込みます。毎月の給与の一部を(East Sun)社で運用してもらう事も可能です。」

「進道さん。自分の最終の手取り年収は家族手当等含めて890万円でした。現時点で、全く収益を目的として進めていく段階のプロジェクトから、前職レベルの給与では貰いすぎではないでしょうか?」

今現在独り身の自分である。夢の様なオファーに金額にたじろいながら言葉を返した。

「君は善良な魂を持った青年だね。想像して下さい、もし前回聞かせて頂いた解雇がなければ君はここに居ない。君が貰いすぎだと思うのは卑屈な錯覚だよ。君は勇気を持ち、信念を貫き、家族も社会的ポジションも、安定した収入も失ってしまった。敗者復活の案件を統括してもらうんだから、前職と同じ給与で当然です。若し、身に余る金額だと思うなら、先程説明した通り「East Sun」での運用にまわしてしまえば、必要な時期にある程度の資産として使う事もできます。」

自分には、返す言葉は無かった。確かに自分を追いやった人間が自分と同じ収入を得ているだろう。解雇後どこか卑屈になっていたのかも知れない。

「分かりました。進道さんの言われる通りだと思いますし、敗者復活の意味するものも、おぼろげですが理解できました。自分は独り身ですし日本の口座にお金を置いておいても金利で利殖されていく訳でもないので、890万円から400万円は最初から無かったものとして運用に廻してください。それでも充分過ぎる金額だと思いますので。是非このプロジェクトをやらせて下さい。」

自分の回答を得て、進道、シャンカール氏の眼に安堵と喜びが浮かび上がってくるのが見えた。


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