杳堺の呪偶いちまの話
Twitter(現X)で杳堺の新カードが公開されました
コスト1でパワー500しかなく、ノーマルスクエアにいれば常在能力により攻撃することもされることもありません。よって能力での対処を強要されますが、噂話3枚以上を表向きにしてれば発生源のゼクスを破壊します
一見すると無害な市松人形ですが、危害を加えると呪い殺されるというデザインですね。さて、その呪いはどこまで向かうのか
前提となるルールの話
今回の解説に必要な情報のおさらいをします
優先権前処理と発生源、あと数値の増減
このnoteを書いてる時点で最新の総合ルールはバージョン6.3.1で、その更新日は2024年8月22日です
Z/X 総合ルール
優先権前処理
イベントや能力の使用を宣言するには優先権を得る必要があり、その直前にまだ解決されていない効果が残っていないかを確認する工程のことをそう呼びます。詳細は下記の通り
要約すると「なんかする前に片づけろ」って書いてます
例えば、ダメージ受けたゼクスがいつまでもスクエアに残り続けてたら困るので、パワー以上のダメージ受けてないか、なんらかの効果を解決したその都度にチェックして、限界を超えてたら破壊しますよね。そういうチェックをするのがこの優先権前処理です
発生源
その効果がどこから来たのかを特定する必要がある場合に、辿り着いた先が発生源です。このnoteの題に絡めると「杳堺いちまの呪いが向かう先」
誰が殺したクックロビン
仮に「指定した対象にダメージを与える能力」があるとして、その能力の持ち主がダメージを発生させてますよね。そういうことです。基本的に、ゲームに影響を与えるのはカード能力で、その能力の書かれたカードが発生源になります。虚空に湧いた概念が何らかの効果を発生させている場合でも、その概念を産んだ元になる能力があったはずなので、それを辿ります
パワーの増減と継続効果の処理
数値の増減は増加をすべて適用後に減少して最終的な値を算出します。その結果としてパワーが0以下になることもあり、その時点でルールエフェクトにより破壊されます
パワーが0以下になることで破壊されたゼクスは、パワーを減少させる効果の発生源から破壊されたことになりますが、状況によっては発生源が特定されないこともあります
詳細はあとで解説しますが今回の肝は1204.4と1204.5
杳堺の呪偶 いちま
カード詳細
コスト1でパワー500の種族トーチャーズ
常在能力により、ノーマルスクエア上では攻撃することもされることもありません。デッキによっては攻撃を封じられるのでロックかかるかもしれません。ニグテオゴとかとても困る
常在能力により、相手からトラッシュを触られなくなります。このためだけにカテゴリ外の黒デッキに出張する可能性すらあります
自動能力でターン終了時にデッキ上1枚をトラッシュに置けます。これは自分のターン終了時だけでなく、生き残れたら相手ターンもです
自動能力により、いちまが相手のゼクスによってスクエアを離れることで誘発し、表向きの噂話が3枚以上なら、そのゼクスを破壊できます。一応この能力は任意なので破壊しないことも選べはします
相手のゼクスによってスクエアを離れる状況として、真っ先に思いつくのは能力による破壊などですが、プレイヤースクエアにいれば攻撃されることでも誘発します
トラッシュに触るな
杳堺デッキはトラッシュの枚数を参照したり、トラッシュから手札やスクエアへ移ったり、とかくトラッシュを活用するカテゴリです。黒にはそういうデッキ多いのですが、それゆえに対策されることもありがちです
大事なトラッシュを除外したりデッキに戻したりされると機能不全に陥ることもありますが、いちまがいればその心配もありません
いちまがいると、トラッシュにあるカードを選べませんね
狙って使われることはないでしょうからフラーマのことは忘れてもよさそうですが、マンモンで破壊はあるかもですね
お前も連れていく
総合ルールに照らした言い回しをすると、いちまがスクエアを離れる事象の発生源を破壊できます。フレーバーテキストに沿った言い回しをすると、呪いの人形を破壊した者は祟られます
過去にも殺された恨みを晴らすかのような自動能力がデザインされていたことはありましたね。それらは発生源ではない無関係な対象も巻き込んで逆恨みできたりもしましたが、いちまは明確に発生源だけを追い詰めます
呪いのケーススタディ
杳堺いちまをスクエアから離すような事象と、それにより自動能力が誘発した際の処理を解説していきます
単発効果で破壊
もっともシンプルな事例
この例の破壊が、手札に戻したりデッキに戻したり除外したりでも、スクエア以外のゾーンに移動する点で同様です
グリースくんの能力で破壊したので、発生源のグリースが破壊されます
致死ダメージエフェクトで破壊
慣れると違和感ありませんが少し複雑な事例
ダメージやパワー減少によって致死ダメージエフェクトが発生する場合、その優先権前処理の直前にダメージ与えたりパワーを増減させるカード能力があったなら、そのカード能力の発生源が破壊したと見なされます
この図の場合、まずフゥイくんの能力で杳堺いちまのパワーを減少させ、効果の解決でパワー0以下になった直後の優先権前処理で、未解決のルールエフェクトとして致死ダメージエフェクトを処理したことで杳堺いちまが破壊されます。この致死ダメージエフェクトが発生した要因を辿って、フゥイくんのせいでパワーが‐7500になったことが明るみに出ると呪殺されます
ただの攻撃でも致死ダメージエフェクトは発生するので、慣れ切って「そういうものだ」と意識しなくなりますが、パワー0以下だったりパワー以上のダメージを受けたゼクスも優先権前処理まではスクエアに残っています
複数の発生源による破壊
おそらくこのnoteを読む動機ここなんじゃないかと思います
先にバイコーンとヒメカミが存在していたとして、そこに後から杳堺いちまを登場させたとしましょう。登場したと同時に常在能力でバイコーンから2000とヒメカミから1000のパワー減少させる効果を受けて、杳堺いちまのパワーは-2500となります。そのため登場した直後の優先権前処理で致死ダメージエフェクトにより破壊されます
この場合、杳堺いちまを破壊した効果の発生源は、バイコーンであるのと同時にヒメカミでもあります。根拠というか理由は総合ルール1204.4ですね
たった500下げるだけで破壊するに足る数値ですが、パワー3000も下げるという悪事に2枚とも加担していたということです。そして杳堺いちまは犯行グループの誰一人として逃がさず許しません
そして致死ダメージエフェクトはパワー減少だけでなくダメージでも実行されます。その事例も置いておきます
戸塚尊の自動能力で、ダメージを与える単発効果とゼクスを登場させる単発効果を解決し、登場させたバイコーンが持つ常在能力は戸塚尊の自動能力を解決している最中にも既に継続効果を発生させているので、この直後の優先権前処理の最初にチェックされる致死ダメージエフェクトで杳堺いちまは「パワーは-1500で、そのパワー以上の5000ダメージを受けている」ことになります
世にも珍しい904.1と904.2を同時に満たして破壊される稀有な例です
呪いが届かないパターン
前提条件として噂話は3枚以上ですがトラッシュ15枚未満だとします
杳堺いちまと杳堺ターボレディが先にいたとして、そこへ白緑パニッシャー衣奈を登場させます。一見してバイコーンがいたのと似た状況ですが、デュナミスに噂話が3枚以上あるということは、衣奈の常在能力で減少するよりもターボレディで増加する方が上回るために衣奈が登場した時点で杳堺いちまは生存していられます
ターボレディの常在能力で相殺されているために、衣奈の常在能力で杳堺いちまのパワーを減少させた直後の優先権前処理では致死ダメージエフェクトを処理しませんでした。そして衣奈の自動能力でターボレディをリソースへ置くと、増加分が失われたために杳堺いちまのパワーが0以下になり、直後の優先権前処理で致死ダメージエフェクトを処理します
衣奈がパワー減少させても耐えてましたよね、ターボレディが支援を打ち切ったせいで杳堺いちまは破壊されました。よって衣奈は無罪
ターボレディが消えた理由? さぁ、死体は土に還るものでしょう?
暫定的な結論
これ書いてる2024年10月12日未明の時点では公式回答ないので、これはあくまでも総合ルールから読み解ける正解に近そうな解釈と言うことになります
おそらく「よくある質問」で複数のパワー減少させる常在能力がある状況で杳堺いちまが登場したらどうなるかは回答されるかとは思います