スマートシューズが気になる。
東京オリンピック男子マラソンでの大迫君の活躍や、マラソン界レジェンド”キプチョゲ”の圧巻のパフォーマンスに感化され、こんな本を久しぶりに読み返しました。
大迫君へのインタビュー、NIKE「厚底革命」特集、我らが市民ランナー向けの「速さ」「疲労」に対する科学的アプローチ特集等、ボリューム満点の内容で、NumberDoの中でもかなりの傑作号ではないかと思っています。
そんな中で今回読んでいて気になったのが、「スマートシューズの可能性とは」というタイトルのスマートシューズのお話。
スマートシューズって何?
スマートシューズは、誰もが普通に行っているが、実際どのように体を動かしているかよくわからない「歩く」「走る」といった行動を、センサーを使って分析することができるシューズです。そして、その分析から得た情報をフィードバックすることで、人はより健康的で効率的な活動が行えるようになります。
NISSHA株式会社公式ホームページより
https://connect.nissha.com/filmdevice/filmdevice_column/smart_shoes
簡単に言えば、ランナーの多くの方が身に着けているウェアラブルデバイス「スマートウォッチ」のランニングシューズ版で、常時身に着けることで体に関するデータを取得し、それを走りや日常生活の向上に役立てるのが狙いです。
2020年1月、ラスベガスで開催されたテクノロジー見本市CESでASICSがスマートシューズを初出典。NumberDoでのお話はここまででしたが、開発は順調に続いていたようで、同年12月18日にEVORIDE ORPHEとして市場に登場していた模様。お値段は33,000円らしく思っていたより安い印象です。
スマートシューズが登場した背景
しかし、スマートウォッチという便利なアイテムが普及している中、なぜ、”ランニングシューズ”にセンサーを埋め込む必要があったのでしょうか?私の考える背景は下記になります。
スマートシューズの登場した背景
・スマートウォッチにはセンシングできる項目に限界がある
・スマートウォッチとスマートシューズでは測定・分析アプローチがそもそも異なる
⇒スマートウォッチと共存繁栄可能
スマートウォッチとスマートシューズの違い
・スマートウォッチ
心拍数を計測→運動生理学的アプローチ
・スマートシューズ
走りの癖、足運びの特徴をデータ化→バイオメカニクス的アプローチ
スマートウォッチといえばやはり心拍数を計測できることが有名でしょうか?ランニング時の最大心拍数や安静時心拍数を計測することで、心拍数ベースの練習メニューを作成している人も多いと思います。また、最近のスマートウォッチは血中酸素濃度を測定可能とするものも増えており、分析精度、項目ともに益々発達しているようです。
ではスマートシューズはどうでしょうか?スマートシューズは加速度センサーやジャイロセンサーを搭載したデバイス部をミッドソールに持ち、走りの癖や足運びの特徴をデータ化して解析します。つまり、体の動き=バイオメカニクス的なアプローチでランニング向上に貢献しようとしている訳です。スマートシューズと得られる情報が異なる為、スマートウォッチと顧客層が同じであるものの、共存繁栄が可能となるわけです(たぶん)。
ちなみに下記の様なシューズ特有の特徴もウォッチとの差別化の一因となるよう見たいですね。
シューズ>時計な特徴3点
1. みんなが身に着けるもの
2. センサーを埋め込む容量も大きく取れる
3. 耐久性が高い
確かに時計をしていない人はいても、シューズ履いていない人を見ることは滅多にないですもんね。また、スマートウォッチ用のセンサは極薄化が進んでいる(心拍数等の測定は密着性に精度を左右されるため)見たいですので、なおさらスマートシューズとスマートウォッチのポートフォリオはだぶらなさそう。
スマートシューズによる分析で期待されること
ではスマートシューズを使用するとどんなことが期待されるのでしょうか?
スマートシューズによって得られる情報の例
1. 速度
2. 移動距離
3. 着地箇所の判定(フォアフットorミッドフットorヒールストライク)
4. 接地時間
5. ピッチ
6. ストライドの長さ
7. 蹴り上げの高さ
8. 効果的な練習メニューの提案
etc...
「1. 速度」「2. 移動距離」はスマートウォッチのGPS機能でGETできますね。しかし、「3. 着地箇所の判定」以降はシューズでしか得られない情報であることが分かります。(ミッドフット着地はできた気になっているだけでほとんどの人が会得できていないという話も聞いたことがあるので、スマートシューズを使うと、そうした悩みも解決できるかもしれないですね)
「8. 効果的な練習メニューの提案」については、ASICSがかなり力を入れている項目のようです。スマートシューズを通して得られるデータを集め(ビッグデータ化)、AIの力を借りて科学的にパーソナライズされた最適解を提供する「センシング+AI分析」の実現を目指して頑張っているようです。(がんばれ!)
他に期待されること
ASICSさん曰く、スマートシューズの開発はランニングの向上のみならず、様々な分野への展開の可能性を秘めているそうです。
期待されること
1. 病気の早期発見:歩き方のちょっとした変化を検知
2. 他業種との協業:ビッグデータを活用
購入するか?
チャンスがあれば購入を検討したいと思います。
”競合は他の靴ではなくフィットジム”
という言葉からも分かる通り、レース用の靴というよりは自己コーチングの為の靴ですので、普段の練習用シューズに+αで購入しなければならないのがネガティブポイントですね。。(NIKEの厚底シリーズに加速度センサーが投入されたら購入したいですね!)。まあ、ビッグデータ解析をやるならそれなりのデータ数が必要になるはずですので、5年くらい様子見かな。データ量が確保されて、シューズからのコーチング精度が上昇したら、本当に素晴らしい製品へと化けるかもしれませんね!