【鋼の錬金術師】アニメ1期がなぜ原作勢に批判されるのか

鋼の錬金術師アニメ1期、2003年版、旧鋼、なんて検索したらだいたい批判意見が出てきます。原作改悪、アニメオリジナル失敗、とか色々と。
なぜ旧鋼がこんなことになっているのか、原作ファンかつアニメ1期ファンの視点から個人的に考えてみました。

どんな層が批判しているのか

批判してる人は大体、原作ファンかつ1期アンチばかり
というか、旧鋼単体で批判する人はほぼいない。
それはなぜかというと
旧鋼は、ひとつのアニメ作品としては良いものだから

旧鋼は2003年、サンライズから独立したばかりのボンズの、カウボーイビバップ以来のヒット作品です。作画も音楽も演出も当時の少年漫画原作アニメとしてはかなり良いものだと思います。

なぜ批判意見が多いのか

「アニメオリジナルストーリー」

これが原因です。
ただでさえ原作モノのアニメオリジナルは賛否両論になりがちなのに、王道ダークファンタジー少年漫画の原作をよりダークに展開してしまったから、納得いかなかったり、ショックを受けた一部原作ファンは文句をつける。まあ、気持ちはわからなくもない。

なぜアニメオリジナルストーリーを進んだのか

①アニメ進行が本誌を追い越した
2001年から月刊誌で連載していた原作を2003年末から始まったアニメが追い越した。当時のアニメは今みたいに12話くらいずつ数クールに分けて放送するなんてほぼなかった概念らしいですね。アニメが先行してネタバレする訳にもいかないので、オリジナルという展開に。

②監督の意思
実は旧鋼の1話から、というか序盤からすでにオリジナルストーリーをやりまくってる。なぜか井上敏樹回まである。
というのもこの水島監督が「アニメを作るからには原作通りではなくやりたい」という考えで、実際に作者もこれに賛成しています。旧鋼の第一のファンは作者であると、おまけ漫画でも書いています。

オリジナルストーリーのどこが批判されるのか

①原作とは別方向の鬱展開
ダークファンタジーをよりダークに展開してしまったと書きました。原作は作者が女性で人格者なのもあって、旧鋼と比べれば、超健全です。少年漫画なりに血は多いけど、悪者を主人公（正義）がやっつける。
旧鋼は、原作と比べて生々しいんです。原作もリアリティがあるんですが、それよりも戦争や異常者やキャラの思考の描写が、げんなりするほど写実的なシーンもあります。（これが土曜夕方のコナン枠で放送されていた…）
原作の後に旧鋼を見た人（私含め）にはより鬱展開と捉えかねない改変も。
個人的には、原作は道徳、旧鋼は倫理という印象。

②キャラクターの性格が違う
オリジナルストーリーなので、原作とは違うイベントが起きたり起きなかったり、キャラクターが登場したりしなかったりします。
メインキャラクターの初期の性格は全く同じと言えるけど、そーゆー小さな差が少しずつ影響を与えていって、原作と同一人物とは思えないような言動をするキャラクターもいる…

※映像が地味と言われる
脚本の話を少し外れますが。
原作は少年漫画だから、とにかく拳で語り合うんですよ。
でも旧鋼はヒューマンドラマ主体というか、じめじめと侵略や出し抜きが裏で行われていて、ここぞという時で主人公が戦うし、そこで作画の良さも出てくるんですよ。FAの方が確かに演出も派手で技術の向上も見ててわかるけど、旧鋼はリアルで生々しい動きがいちいち丁寧に描かれています。
バトルシーンは原作よりは少ないけど、あまりそっちを
（原作よりかは）盛り上げどころとしていないことは主張したい点です。

公式が旧鋼に冷たい

特にアニメ2期放送以降、公式の対応が旧鋼に冷たい…
上で書いたように、作者は旧鋼のファンと公言しているんですが、アニメ1期にあまりよく思ってないみたいです。
ウィンリィをもう少し早めに、かわいく登場させてほしいと伝えたらしいですが、旧鋼見るとわかるけど初登場回は8話と遅め、しかも快楽殺人鬼に誘拐される話です。
ロゼに関しては、紛争に巻き込まれて暴力を受けます。直接なシーンはないけど、これには作者も苦言を伝えたことは結構有名。
作者の大事なキャラクターをこんな目に遭わせたから少しセーブさせたのかな…

大きい言葉の見出しだけネットで流れがち

ネットだと「原作改悪に作者激怒」とか「まさかのアニオリで原作ファン困惑」とか大きい言葉な見出しで投稿されることも少なくないけど、だいたいは人目につくように誇張させてる人か、ごく一部の過激派原作極上ファンが感情に任せて発信しているだけです。
でもこんな批判意見見ちゃうと「あー鋼の錬金術師アニメ1期ってよくないんだー」って印象を与えかねないですねーー

こう書くとあたかも
『熱血原作ファンvs陰湿ハードコアアニメ1期オタク』
みたいなオタクバトル体制かのように見えるかもしれませんが、そういうことを言いたいわけじゃないんです…

アニメ1期も原作も好きなファンは少なくないです。
旧鋼が理不尽に過小評価されるのも、過激な批判を受けるのも、ファンは悲しみます。ストーリー抜きでもとても良い作品なので。
鋼の錬金術師アニメ1期は、ストーリー込みで素晴らしい作品なんです。切なくて、美しい。（←これが一番言いたかった）

上で書いたように、原作は道徳、旧鋼は倫理と考えてみてください。原作の主人公サイドのキャラクターは、人として正しく生きることの「正解」を常に進んでいます。
旧鋼は、現実に起こりうる最悪な状況でも主人公たちは自分の価値観の中で正しくあろうと悩み踠きます。

結構違うんですよね。原作愛が強いほど旧鋼にツッコミを入れたくなるのもわからなくもないですが…

とにかく、みんな鋼の錬金術師アニメ1期を見よう！