シメジシミュレーション感想 深淵音楽
シメジシュミレーションを読みました。
以下感想
※自分用
どうでもいいこと
私達の現実世界で気楽(低コスト)に生きていくために、哲学を切り捨てていくことはやはり必然なのでしょうか。
かくいう私も、夏休みに入る前までは多忙による合理化合理化な生活で、何より人と精神的にも距離を取れない密閉空間で、他者からの自衛として思考の停止を無意識に繰り返す日々でした。
夏休みに入って、キャパオーバーな顔見知りとの接触がなくなり、行動のバラエティーも本来の自分の器量に合うところまで減り、やっと、考える余裕が生まれました。
そんな時に読んだ、シメジシュミレーション
私のその希薄になってしまった部分に、とても沁みた。
出会い
少女終末旅行のアニメを見て、続きが気になったので、漫画の方を読んだ。アニメ以降の5、6巻の内容はより思想や哲学の空気が強く感じた。実際私は、アニメまでの内容はなんとなーく雰囲気の良い終末モノかと思っていたので、漫画を読んで作品の深さに少し驚いた(遅い)。今までのほほんと見てたもの全てが抽象であり象徴だったのでは…?何度か読み返した。
色々な解釈ができる作品だと思った。そしてとにかく、作者の物事への捉え方や思考を、もっと知りたいと思った。
なのでずっと読みたかった、シメジシュミレーション。
夏休みになり時間と精神に余裕ができたので手を出して見た。ってこんな経緯どうでもいい。長すぎる前置き。
印象
序盤は、不思議なきらら作品みたいな印象でした、まだ4コマ割りの原型があった頃。始まりは突拍子でしたが、しめじ、まじめ、周囲の環境や状況説明ばかりだったから、作者の作画の真価も哲学も影が薄かった。
この作品が哲学要素が強いことは事前に知ってましたが、この作者に普遍的な意味や意図を求めるべきではないことも前作で知っていたので良かったです。これ知らずに読むとあまり効率的ではない。
永久機関
タイトルの通り、永久機関の話が序盤の印象に残った部分です。
永久機関は理論的に証明できないもの、というのは知っていました。今まで不思議な展開ではあったけどサラッと永久機関穴掘り機が稼働しているのは違和感がありました。しめじ姉が装置にべったりつきっきりになったあたりから西よもぎ市の『違い』が現実味を帯びてきたのではないでしょうか。
変化
話の展開がただ支離滅裂なわけではないとわかるのは3巻あたりからでしょうか。
西よもぎ市、という世界の、法則のような、それでいてすべてが自由自在な意思?
しめじ、まじめの出会い→3人の夢→地球ドーナツ化→おかしな西よもぎ市→月島姉が自由にした世界→文化祭→人の形を保つ鍵が外れた世界→しめじ、まじめと別れる→孤独を横たえる→電車で他人の夢の旅→まじめの王国に着く→まじめと再会
もっとあるけど、こんな感じかな。
しめじと私
上でも少し書いたけど、
私もしめじちゃんほどではないけど他人が自分の中に入ってくるのは怖い。他人に、自分の深いところ、自分自身でも曖昧なところまで入って来られるのが恐怖で。
でも私は現実の社会生活では他人を完全にシャットアウトすることも引きこもることもできないので、自衛のために、考えることをやめる。
日常生活の中でも加速度的に思考に走ってしまう人こそこれは有効で、他人に深く考え込まずに対応すること、物事に深い思想を持っていないように見せることは『考えてしまう』ことを考える自分へのプレッシャーを軽くする、という個人の経験論。
でも、しめじちゃんは引きこもって他人から距離を取る中でも考え続ける。彼女の過去の経験や本のテキストなどから構成された思想は、無意識かもしれないが彼女の哲学になった。
そこは、自分とは違うなーと思った。
読み終わって
1日1冊、じっくり読んだ。
1冊2時間くらいかかった。
読み終わった時、泣いてた。
少女終末旅行でも泣かなかったのに。
終わり2巻の、膨大な質量の思想に圧巻されて、まあそれだけではないけど、涙涙でした。
前作は、目的地まで「1つのいきものになった」ようにずっと2人一緒で、最期までいっしょだったんだろうなーー、て思える結末だったけど
その対となる今作は、一度離れてしまったけどお互いが(中略)でまた出会えて、「ほぼ1つになりまたそれぞれ自己の輪郭を持った」ことができて、もう、、あーまた涙、、
一言で表すならば、
『抽象的』を漫画に起こした作品、でしょうか。
語彙力が無さすぎる…
哲学や思想を言葉だけでなく絵で表す、これはもがわ先生も言っていた「芸術」です。確かにこの作品は活字、芸術に近い。でも、少ない文章で何か、考え方を伝えるために絵を使う、やっぱり漫画なんです。唯一無二だと思います。
やっぱりこの作者は絵が上手いですよね。言葉で表しにくい感情とか、今朝見たぼんやり覚えてる夢とかを絵に起こすの上手そう。
人に安易に薦めるのは難しい作品です。自分とは違う解釈や考察を聞くのは楽しいでしょうが、つまらない、とか言われてしまうと、その人の思考の浅さとか漫画に求めるもの求めないものなどの嗜好を勝手に考えてしまいそうです。まあどんな作品でもその可能性はあるものですが、この作品はリスクが高い。傷つくことはわかりきってるので、臆病な私は身内にお勧めすることに消極的です。
この作者の作品、少女終末旅行に出会えて、シメジシュミレーションに出会えてよかった。本当に読んでよかったと思いました。