ペルシアの七草粥(後編)
昨日お届けした、願い事が叶うペルシアの七草粥。でもよく考えてみると、どろっとした見かけも、素朴ながらとっても甘い味わいも、今の日本に伝わる七草粥よりもぜんざいやおしるこのほうに似ているんですよね。
そこでぜんざいのルーツを辿ってみると、出雲に伝わる神在餅(じんざいもち)にあるそうです。十月に日本中の八百万の神々が出雲に集まるので神在と言って、小豆を煮てお餅を少し入れたものをお供えにしたそうです。そんなルーツを持つぜんざいやおしるこは、昔から立春の頃の節分に厄よけを願って頂いたり、また厄よけぜんざいと言って、厄年の人がぜんざいをご近所の人たちに振る舞って厄払いの祈願とする風習も、もうずいぶん廃れてしまったけれど、今でもひっそりと残っていますよね。
春先のお正月に大鍋でつくるペルシアの(もと七草)粥ことサマヌーも、春のはじまりに無病息災や新年の幸せを祈って、たくさんの人に振る舞うもの。やっぱり七草粥だけでなくて、ぜんざいやおしるこに似ていますよね。そういえば、多くの人が願い事や祈りを胸に鍋をかき混ぜては炊き出すペルシアのお粥にも、バラカと呼ばれる幸せのおまじないがぎゅっとつまっているそうです。
お砂糖なしで炊いた小麦芽のあんこに滲み出たほんわりとした素朴な甘さも、ほっと優しい甘さのおしるこや和菓子にどこか似ています。優しい味わいは甘さだけじゃなくて、きっとみんなの幸せを祈ってつくる優しいお粥だからでしょうか。
願い事のある日は、サマヌーは無理でも、おしるこでも作って配ってみようかな?とふと思ってしまう今日この頃です。
(CopyrightTomoko Shimoyama 2019)