院内見聞録 医療タトゥー
2022年11月7日
「シャイニー・シュリンプス」を見てから乳輪を作るための医療タトゥーを入れるために大学病院へ。ここ数カ月仕事が忙しくて全然映画を見る余裕がなかったから、底抜けに明るくて景気のよさそうなバカっぽいものを見たいと思い、あんまり予備知識なく行ったら底が抜けるほどは明るくないし、景気もよくないし、とってつけたようなブリアナちゃんで無理やり東京と思い込ませようとしていたが、どう見ても東京じゃなかったから東京の設定は要らないかったのでは? と思った。
この病院では予約の時間に来てもかなり待たされるのが常なのだけど、さすがに手術の時間は決まってるんじゃないかと思って急いできたが、待つように言われた3番のドアのサイネージを見ると13:30の予約の人が受診しているもよう。ちなみに私の予約時間は15:00でござる。もちろん、もうすぐ呼ばれる予定の番号にわたしの番号はない。
大丈夫、このためにちゃんと本を持ってきてるから。友だちが富士山の裾野でやっている出版社、虹霓社(読めないし、変換できないから毎回打つのが大変、ちなみにこうげいしゃと読む)が出している「放浪の唄」を読む。これが滅法面白い。わたしは寡聞にして知らなかった高木護という詩人が経験したありとあらゆる職業を通しての放浪の記録なのだけど、一応、口減らしという目的はあるものの、なんかめんどくせ~と思えば故郷に幼い弟や妹を残してあっさり放浪の旅に出るし、行った先々でいい娘がいればねんごろになるし、儲かりそうなことがある方へと渡り歩き、飯を食うために手あたり次第というか場当たり的に与えられた仕事をする。もちろんそういう人は今までもたくさんいただろうけど、そういう人たちはほとんどが言葉を持たないので、これまでほとんど内側からは語られてこなかったのでは? 大体は外の人から困った人というか、非難の形で語られることが多いもの。ここまで生きるという欲を全肯定していると読んでて気持ちがいい。そして後書きまで読むとずっと世俗社会のいわゆる“底辺”を放浪している話だと思っていたのが、意外と「イントゥ・ザ・ワイルド」な生き方だったと分かった。
すると受付のほうから名前を呼ばれたので行ってみると、3番ではなく5番で待てと言う。っていうか、3番の前は人が多くて座る場所ないからもともと5番の前に座ってたっちゅうの。しかし5番のサイネージには一切予約番号が出てなかったので時間が読めんなと思っていたら40分ぐらいで呼ばれる。この病院では早いほう。いつものようにまず写真を撮ったのだが、いつもと違っていたのは正確な乳輪の色を取るためにカラーバーのようなシールを貼られ、手作りの女優ライトみたいな装置がガラガラと運ばれてきた。胸部全体を網羅するぐらいの大きさの枠組みに電球がついているのだが、手元のスイッチで白色と白熱灯色に切り替えられるようになっている。写真を撮ったら、左の残ってるほうの乳輪や乳首に透明フィルムを乗せてトレース。ただし、実際の胸は乳首に向かって円錐形になっているから、そのままのサイズでのっぺりした人工乳に施すと大きすぎるので「一回り小さくしますね~」と先生は言ってカットしていた。なるほど、勉強になります。(続く)