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100日間マンガの「好きなところ」を語り続けるための3つの切り口

マンガサービス「アル」でライターをやらせていただくようになってから約半年が経ちます。今回のnoteでは、僕がアルのライターとして活動する前から挑戦していたことについて今更ながら振り返ってみようと思います。

noteだと「おしゃべり症候群」を発症してしまうため、導入の語りが長いです。「興味がないよ。本題から読みたいよ。」という方は目次の「■チャレンジルール」に飛んでください。

■これは、100日連続でマンガの好きなところを語ってみたいと思った男の話である

アルには自分が好きなマンガの「好きなところ」を言語化して投稿し、他のユーザーと共有できる機能があります。

僕はこれが大好きでして。

自分が愛する作品を他の人はどんな風に読んだのか。みんなが書いた「好きなところ」を読んでは頷いてみたり、「なるほど、そういう読み方があったのか!」と膝を叩いてみたり。比較的スタンダードな機能だとは思いますが、とにかくマンガ好きが利用する「アル」なのでそれぞれが語る作品への愛も語りも千差万別。非常におもちろいのです。

もともと僕は、なぜだか人と面と向かって好きなことを語り合うのが苦手な人間です。好きなことへの情熱は人一倍あると自負しているのですが、声に出して語ることがどうにも性に合いません。

しかし、言語化して伝えることに関しては(得意ではありませんが)好きなのです。やはり、自分の中からこみ上げてくる熱い思いは取りこぼしたくないわけで、共有したいという気持ちは一丁前にあるわけです。

そんな僕がアルと出会い、マンガの好きなところを語る(表現する)喜びを再認識した時、あることを思いついたのです。

100日間、毎日「好きなところ」を投稿することは可能だろうか。

大きな挑戦でした。実は思い立った頃からうっすらとアルのライターに応募したいと考えていました。自分は本当にマンガが好きと言えるのだろうか、「好き」を言語化することができるのだろうか。そんな不安があったのも確かです。

それでも、好きなことをもっと語れる自分になりたい。何か新しいことにチャレンジしてみたいという自分の背中を自分が押してみた結果です。

それが、【100日後に本棚がパンクするあごたふ】というTwitterでの毎日投稿チャレンジの始まりでした。

■チャレンジルール

毎朝7時台に投稿する。(通勤時間が7時〜8時でした)

投稿内容は通勤時間内で考える(基本、予約投稿や書き溜めをしない)

文字数の制限はなし(アルの「好きなところ」は最大2000文字まで投稿できます。)

「読んでいて楽しい!このマンガ読んでみたい!」と思ってもらえる楽しい文章を意識する。(コンパクトにインパクトのある語り口)

・途中であきらめずに100日連続投稿を何が何でも達成する!

■100日間語り続けるために何が必要だったのか

挑戦するにあたり、もっとも不安だったのは100作品を語るということが果たして可能なのかということ。

幸い僕の家にはいつしか数えるのを諦めたほど、マンガが所狭しと並んでいました。日々は新たなマンガとの出会いの連続です。正直ネタには困らないはず。

実は飽き性な自分にとっては「継続する」方がハードルが高かったので、あとは根気勝負だと思っていました。

しかしというか、やはりというか、そうは問屋が卸さないのが現実です。始めてみてすぐに気づきました。

100作品分の魅力を毎朝通勤時間中の1時間以内に考え、面白楽しく言語化することがいかに難しいことなのかを!

人に好きなものを語るとき、または薦める時あなたならどう伝えますか。おそらく「とにかく読んでみてよ!(音楽なら聞いてみてよ!ゲームならやってみてよ!)」と言ってしまうのが一番楽なんです。

しかし、「自分の言葉で」語らなければこの挑戦の意味がありません。では、いったいなにが必要なのでしょうか。

語彙力表現力僕はこれらは最優先に獲得するべきものではないと考えています。どちらかというと最後です。第一に、これらは一朝一夕で身に付くものではありません。意図してこれらの能力を鍛えるにはやはり、とにかく「良き文章」に触れていくことが大切だと考えますが、ここではその話は一旦置いておきます。前置きが長くなってしまってもね。

語彙力や表現力は自分の中に蓄積されたものを取り出す(アウトプットする)ことです。限度があります。だから、僕は外にあるものでどうにかならないか、ということに着目してみました。「好きなこと(もの)」を目の前にしてみて以下のことを考えてみます。

(1)なにが見えているか一つ一つ丁寧に見てみよう。

(2)自分にはどう見えているか考えてみよう。

(3)見えていないものに目を向けてみよう。

さて、そろそろ本題です。(本当に長かった)

僕は、100日間欠かさずマンガの「好きなところ」を語り抜くために、これらの着眼点を「切り口」という武器へと変化させ、磨いていくことを同時に意識しながら挑戦していました。

では、具体的にマンガのどんなことを切り口にして「好きなところ」を語っていったのか、実際に投稿した文章と共に振り返ってみます。

■3つの切り口から考える「好きなところ」の語り方

(1)なにが見えているか一つ一つ丁寧に見てみよう。

何を伝えようか迷ったら、まずはこれが基本だと思っています。読んで目に入ったものを「そのまま」語ってみる。言い換えればマンガを構成するもののことです。ここではキャラクター、セリフ、ストーリー、装丁を例に挙げてみます。

▼好きなキャラクターで語る

ドラゴンをこんなに美味く喰らう主人公はどこを探してもミカだけだろう。ドラゴンの造形、ドラゴンの肉を使った料理、どちらも魅力なのだが、個人的に推したいポイントはクィン・ザザの乗員を掘り下げてどのキャラにも愛着が湧いてくること。同じ釜の飯を食う仲という絆、タキタ救出はアニメでも泣きました。ジローの恋も好き。(『空挺ドラゴンズ』の好きなところ)

何者も登場しないマンガなどありません。ちょっと脇役のキャラクターにスポットを当ててみたり、自分だけが好きかもしれないキャラクターの魅力を語ったり。登場キャラクターが多いマンガほどこの切り口は活きます

▼好きなセルフで語る

唆るぜ、これは!科学というテーマでここまでワクワクさせられたマンガに出会ったことがない。主人公がややチートだが、気にならない。科学が必ずや答えを導き出してくれる。小学生が自由研究で自分にもできるんじゃないかって勘違いさせるくらい簡単にチャートを描いているが、真似できないので気をつけて。(『Dr.STONE』の好きなところ)
開いた事もない本を馬鹿にするなど愚の骨頂だな!」口も態度も悪いけど、司書としては一流。仕事を誠実に全うしている主人公を見ては自分の姿勢を正してしまいます。図書館がこんな司書で溢れたらいいのになあ。(『図書館の主』の好きなところ)

良きマンガには最高のセリフがつきものです。中には自分の人生に大きな影響を与えたセリフなんてものもあるでしょう。思わず口にしてみたくなる主人公の口癖について触れるのもいいかもしれません。

▼好きなストーリーで語る

こずえという犬の視点で平穏な日々を過ごしていくシュールギャグマンガなのかなと油断してたら、唐突に少し不思議なストーリーをぶっ込んできてスパイスを効かせてくる。横須賀といえばカレーだという風潮に対し、表だってカレー屋をやりたがらないゲリラカレーの話がめっちゃ好き。(『横須賀こずえ』の好きなところ)

次はマンガの面白さの根幹をであるストーリーについて触れてみようという話です。特にストーリーの起伏が激しい作品や、最後にあっと驚くどんでん返しが待ち受けているもの、斬新な設定の世界観など。ストーリーに作品の特徴を表すバロメーターが振り切っている場合にオススメの切り口です。

しかし、この切り口には注意が必要です。

ネタバレ」には十分配慮した上で語りましょう。これから作品を読もうとしている方が目にした時にそのモチベーションを削ぐようなことはしたくありません。

斬新なストーリーが最大の魅力だけでど、それを伝えるとネタバレになってしまう!という作品の場合、逆に難易度が高くなる切り口かもしれません。だからこそ、書く力が上がるとも言えます。

▼装丁の魅力で語る

退廃ラブコメということで。ラブコメらしからぬ独特な世界観がめちゃくちゃ癖になります。2人以外みんな眠ってしまった世界に栄螺のような魔物たち。先が読めない。装丁デザインのポップさがとても可愛いので手にとって読みたい!(『羊角のマジョロミ』の好きなところ)

ジャケ買い」という言葉がありますよね。主にCDを購入する際にジャケットのデザインの魅力をきっかけとすることです。マンガにも同じことが当てはまります。「装丁買い」です。装丁のデザインと言っても要素は様々です。イラスト、タイトルロゴ、帯、カバーの素材

筆者がマンガを購入する際に、完全に電子派になれないのはこの要素があまりにも魅力的だからです。であるならば、それを語ってもいいんじゃないかということです。

(2)自分にはどう見えているか考えてみよう。

(1)とはちょっと違うというか、少し掘り下げて書いてみるということです。作品のどこに面白さを感じるかは人それぞれ。自分の目と心のフィルターは他人のそれとは基本的に異なることが多いはずです。

ならば、自分はどう読んだのかを赤裸々に語ってみましょう。自分にとっての当たり前が他人にとってはそうではなかったということがあるように、あなたのスクリーンと他の誰かのスクリーンに映し出される物語は違う意味を持っているかもしれません。

▼そのストーリーの何が楽しかったのか、面白かったのか

朝が来たことにも気づかないくらい集中してしまうとか、もっと早く出会っていたらと悔しくなってしまうこととか、師匠に見ていてもらえることへの安心感とか、でもいつまでも甘えてたらダメだって自立するとことか。夢中になることを見つけた先にあるものが全部描かれてる。そして、いつのまにか自分がこのマンガに夢中になっていることに気づいた。(『ボールルームへようこそ』の好きなところ)

子供の頃に、嫌な宿題ランキングの中でも上位であろう作文とか読書感想文というものがありましたよね。それが苦手な子ほど、ほとんどの文末が「〜だと思った。」「楽しかった、面白かった」で結ばれていたと思います。

これは心の第一深層です。楽しかったのも、面白かったのも確かなはずなので何も間違っていません。これを文章自体も楽しく面白く、興味深く伝える手段が、心の中の「なぜ」があるところまで潜るとより具体的に語ることができますね。

▼そのキャラクターの何が魅力なのか

何のために戦うのか」が明確だからここまで面白い。ガッシュが「清麿が変わったんじゃない、清麿を見る周りの目が変わったんだ」って叫びから清麿が動き出し、やさしい王様を志すコルルとの戦いで2人の絆が強くなった。このはじまりがあるから全ての行動、出会いに感動が生まれる。(『金色のガッシュ!!』の好きなところ)
一見するとめちゃくちゃな人間ハルヒが実は現実をしっかりと理解していながらも、その憂鬱とは裏腹に世界を改変する神様的能力を持って自分を飽きさせないという構造が非常に面白い。世界が崩壊しないのは、ハルヒが常識人だからこそである。 とてもシンプルだ。日常が退屈だと感じてしまうのは、お前が悪い。その憂鬱に甘んじるか、世界の見方を自分で変えるか、ただそれだけ。宇宙人も未来人も超能力者も、そんな簡単にいてたまるか。現実と折り合いをつけろ。リアルを生きる読者にとっては、実にキョンが羨ましい。(『涼宮ハルヒの憂鬱』の好きなところ)

次はキャラクターの性質に迫ってみました。(1)で好きなセリフで語る切り口をご紹介しました。それに似ています。ただ〇〇というキャラクターが好きだとだけ伝えてもいいのですが、この紹介文で書いたようにもうちょっと踏み込むとさらに魅力とともに作品の性質が伝わると思います。

例えば、

Aさん「『図書館の大魔術師』のティファお姉ちゃんって良いですよねえ!」

Bさん「同意。あの包容力とシオくんに甘いところがたまらん!可愛がられてぇ!」

Aさん「いやいや、時には厳しく叱ってくれるところが良いんじゃないか!」

Cさん「拙者、あのおっp…」

Aさん、Bさん、Cさんはそれぞれキャラクターのどこに魅力を感じているのかが違います。この違いこそがその人独自の切り口の素となるわけです。

キャラクターの魅力には、容姿、性格、生き様、物語の中での役割などなど、様々な角度から語ることができるのです。語れる要素が多いということは、それだけ物語だけでなくキャラクターの作り込みが深いということです。そういう作品って感情移入もしやすいですよね。

(3)見えていないものに目を向けてみよう。

見えないものを見ようとして望遠鏡を覗き込んだ的なアレですね。(違います。)冗談はさておき。これはどういうことかというと、実際にマンガには書かれていないことについて考えてみるということです。

例えば、作者がどんな思いを持ってその作品を描き上げたのかを考えてみたり、史実に基づくストーリーを描いた作品であれば実際の歴史とマンガでの描き方を比較してみたり、お仕事系マンガがどれだけリアルに描かれているか興味を持ってみたり。

図書館や美術館、静かなイメージを抱く職場の裏側は実はハードなことが多い。博物館も然り。むしろ、研究者の類の中では相当アクティブな人種なんだと思い知りました。2巻のクジラの骨の発掘のお話にとても感動しました。マスコットキャラクターのコノハがめちゃくちゃ可愛い。(『へんなものみっけ!』の好きなところ)

これはマンガの中の見えていない部分にスポットを当ててみることでしたが、自分以外の読者に目を向けて書くことも重要です。今回のテーマで言えば、自分が書いた「好きなところ」を読んでくれた人にいかにそのマンガに興味を持ってもらえる文章にするかを考えることです。

一番わかりやすいのはその作品がどんな人にオススメなのか。ターゲットを明確にしてしまうことです。

次に当てはまる諸君へ推薦する。1.「年上の美人なお姉さんとの同居に憧れる」2.「猫が大好き」3.「尻フェチ」4.「尻フェチ」5.「尻フェチ」(『猫のお寺の知恩さん』の好きなところ)
『マギ』は言うまでもない。ファンタジー好きなら必修科目。こちらは第2の主人公である「シンドバッド」にスポットを当てた作品。シンドバッドがいかにしてシンドバッドとなったのか。本編のシンドバッド思想のルーツを辿ることができる。才ある少年の冒険活劇、にとどまらず、「人の上に立つ人の思考や苦悩」を覗ける面白さ!(『マギ シンドバッドの冒険』の好きなところ)

■マンガの数だけ好きがある

こうやって筆者は100日間の連続投稿チャレンジを無事完走することができました。このチャレンジの20日目あたりでアルのライターに採用していただきました。当然まだまだ未熟な身ですが、一つのチャレンジのおかげでこうして文章を書くことをお仕事の一つとすることにも少しだけ自信を持てる気がします。

長くなってしまい申し訳ありません。ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました!最後に、100日目の投稿を紹介して終わりにします。(これからも「好きなところ」投稿するぞー!)

僕が「時」を同じくしてこのマンガと共に図書館員として生きている。きっとこれは運命なのだろうと感じるほどに震えている。この作品がマンガ界の後世に伝わる大作になると確信してやまない。作者がこの作品を通して伝えんとすることの偉大さ、並々ならぬ想いが痛いほど感じ取れ、その尊さに現実の自分が使命感すら覚えてしまう。 「書」とは何なのか。 なぜ「書」を護らねばならないのか。 誰が「書」を護るのか。 作者が導いてくれる結末までの大冒険を、心ゆくまで楽しみたい。 約束された「マンガを読む喜び」を共に見届ける仲間が増えることを願う。(『図書館の大魔術師』の好きなところ)

マンガと読者の組み合わせは「無限通り」です。ぜひ、あなたの好きを聞かせてください。そして、あなたもアルで大好きなマンガについて発信したいと興味を持ったのなら、ぜひ一緒にやってみませんか!?


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