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かつて、レッドだった君へ 〜なぜ「GOTCHA!」は僕らに「こうかはばつぐんだ」ったのか〜
かつて、レッドだった僕らは…
かつて、レッドだった僕らはもう、大人になってしまった。
君は、赤を買っただろうか。緑を買っただろうか。
博士から最初に託される相棒に、どの子を選んだだろうか。
幻のポケモンには出会えただろうか。
あの頃、誰もがポケモンに夢中だった。
そして…
いつしか君は、ポケモンを卒業してしまっただろうか。
とうとう僕は、ゼニガメを選んで、そのまま大人になってしまったんだ。
君に置いていかれた訳ではない。立ち止まっている訳でもない。
僕は、好きなものが変わらなかっただけなのだ。
今、それが誇らしい。そのことが無性に、泣けてしまうくらいに、誇らしい。
なぜだろう。
図鑑完成を諦めて大人になってしまった君に、僕はこの感動をどうにか届けたいんだ。
「GOTCHA!」と「こうかはばつぐんだ!」
先日、ポケモンスペシャルMV「GOTCHA!」が公開された。直後、Twitterが一時騒然としたのである。たった1週間で、1000万回以上も再生されている事実がその興奮を物語っている。
1996年から歩みだした、僕(ら)が愛するポケモンというコンテンツが今でも確かに世界中からも愛されていることを確信することができた。
そして、まさしくこのMVはポケモンを遊んだことのある全ての世代のファンに対して「こうかはばつぐん」だったのだ。(※「こうかはばつぐんだ!」とはポケモンの対戦をする上での重要な戦術的要素である。攻撃する技のタイプが相手のポケモンの弱点をつく場合に表示されるゲーム内メッセージである。例えば炎タイプのポケモンが水タイプの攻撃を受けた時「こうかはばつぐんだ」となる。)
僕にとっても。
マサラタウンから一番道路の草むらに初めて踏み出した瞬間の胸の高鳴りに似た高揚感が込み上げてきて、僕はこのMVが公開されてから、毎日10回以上はヘビロテしているほどである。要するに、このMVはファンの琴線に触れるに足る作品だったのである。それどころか、感情のキャパシティオーバーである。
僕がこのnoteを執筆している時点で、MV公開後10日は経過しているので、優に100回を超える回数の「Acacia(アカシア)」を聞いていることになる。
初見から、日を跨いでも継続するこの興奮の源泉が一体なんなのか。その理由を「GOTCHA!」の魅力から手繰り寄せ、ジャケットのふたりのように僕も、涙でボヤけてしまった視界を拭い、感動の解像度を上げるため一歩を踏み出したい。
まずは、何よりも先にこのMVを見て欲しい。
ポケモン図鑑が151匹で止まっている君にも。図鑑完成を諦めて大人になってしまった君にも。
今こそ、君の図鑑とポケモンにまつわる物語をアップデートする時である。
「好き」の相乗効果(ポケモン×BUMP)
このMVがなぜこれほどまでにファンの心を掴んで離さないのか。繰り返し見るたびに、そこに描かれているものの奥深さに感動するのか。そのカラクリである「エモ(い)ポイント」は2つあると感じた。
まず、このMVの製作陣だ。とてつもなく豪華である。特にアニメを中心としたエンタメが好きな人であれば絶対に反応するであろうクリエイターたちが手がけているのである。
「GOTCHA!」の製作陣は以下の通り。
ミュージックビデオ「GOTCHA!」
音楽:BUMP OF CHICKEN「アカシア」(TOY’S FACTORY)
監督:松本理恵 キャラクターデザイン:林祐己 アニメーション制作:株式会社ボンズ
企画・プロデュース:川村元気、畑中雅美
中でも特筆すべきはやはり「BUMP OF CHICKEN」の存在だろう。この楽曲こそが、涙腺を決壊させた決定打の一つである。
🎵エモポイント🎵
・1996年と言う共通点
・楽曲とポケモンの世界観のリンク
言わずと知れた国民的バンドとなったBUMP。例え彼らの名を知らなくとも、「天体観測」のイントロを聞けば誰もが口を揃えて「知っている」と言うはずだ。
実は、彼らとポケモンにはとても大事な共通点が存在する。それが「1996年」である。
・ポケットモンスター赤&緑(初代)の発売した年
・BUMP OF CHICKENの結成した年
この楽曲制作はどこまで仕組まれたものだったのだろうか。何れにせよ、特別な縁を感じざるを得ない。
そして、何を隠そう僕は彼らのファンでもあるのだ。
初期の頃の「尖りきった」主張は時が経つにつれ柔らかみを帯びてきていて、ここ数年、TV出演や映画、アニメの主題歌まで幅広く露出するようにまでなってきた。
初音ミクと楽曲でコラボするなど、常に新しいことに挑戦し、吸収して彼らの音楽も進化し続けているように感じている。(ちなみに僕がオススメしたいアルバムは「ユグドラシル」である。)
特に特徴的で僕が彼らを好きである理由がボーカル藤原基央の手がける詞。
今回の「アカシア」であれば、まずそのタイトルに注目したい。(以下は個人的見解とファンの間で考察された見解です。)
アカシアとはマメ科ネムノキ亜科アカシア属に分類される植物のことで1000以上の種類があるようだ。黄色い花を咲かせる可愛らしい植物で、花言葉は「秘密の恋」、そして「友情」。
※みんなの花図鑑から引用
「ポケモン」はポケモンとトレーナーとの絆(友情とも置き換えられるかもしれません。)が必ずと言っていいほどストーリーのテーマの一部を為している。
そして、ポケットモンスターの最新作である「ソード・シールド」ではザマゼンタとザシアンと言うポケモンが物語の重要な鍵を握っている。(可愛いわんちゃんのようなポケモン)
ザマゼンタをマゼンタ(アカ色)と取り、ザシアンと合わせると曲名の「アカシア」になるのだ。
そして、歌詞はと言うと。やはりサビがエモい。
ゴールはきっとまだだけど もう死ぬまでいたい場所にいる
隣で (隣で) 君の側で 魂がここだよって叫ぶ
泣いたり笑ったりする時 君の命が揺れる時
誰より (近くで) 特等席で 僕も同じように 息をしていたい
転んだら手を貸してもらうよりも 優しい言葉選んでもらうよりも
隣で (隣で) 信じて欲しいんだ どこまでも一緒にいけると
ついに辿り着くその時 夢の正体に触れる時
必ず (近くで) 一番側で 君の目に映る 景色にいたい
※BUMP OF CHICKEN公式サイトから引用
藤原氏の詞には、「君」「僕」が頻出する。その関係性は楽曲によって様々な解釈があると思うが、僕は先ほどの引用での後半のサビに「一番側で 君の目に映る 景色にいたい」とあるように、誰かと同じ時を生きていることを同じ景色を見ることや互いに互いの存在を確認し合うことに尊さに重きを置いているように捉えながらいつも聞いている。
「君と僕」を「ポケモントレーナーとポケモン(相棒)」と置き換えると、彼らの「絆、信頼関係」のようなものが見えてくるだろう。PVの中のピカチュウやイーブイの居場所も常に主人公の肩の上や隣なのだ。
キラキラした中に、胸の鼓動の高鳴りを表現するかのような疾走感。トレーナー(であると同時にファンである僕ら)の隣には常にポケモンがいる。そのことがどんなに幸せかということをストレートに歌い上げてくれている。
「ポケモン×BUMP」=「好き×好き」。僕やファンが興奮しないほうがおかしいのである。(もちろんBUMPのファンでなくともこの楽曲と歌詞には共感しあえると信じたい。)
ファンを満足させるシーンの畳み掛け効果
アニメーション制作を担当した「株式会社ボンズ」は一体どれくらいの時間をかけてこのアニメーションの脚本を考えたのだろう。なんどもなんども、BUMPの楽曲と対話しながら制作に死力を尽くしたに違いない。ファンは感謝しかない。それほどまでに、完璧な融合であった。
第二のエモポイントが、そう感じた理由である。
🎵エモポイント🎵
・どの世代からポケモンを始めていても楽しめる(オールスター演出=王道)
・初代から楽しんできたファンほどその感動の深さは増す
・期待していた「以上」を魅せてくれた
MVを見てまず感じたこと、それは「まばたきする暇がない」だった。見所しかない上に、1秒単位での怒涛の重要カットの連続。このスピード感(供給過多)こそ初見で感情のキャパシティが決壊した理由である。
動画を追いながら振り返ろう。
まず何よりもMVの登場人物は男の子と女の子なのだが、楽曲が終わる旅立ちまでのシーンに過去作の主要人物がほぼ全て登場しているのだ。このオールスター演出が憎い。
赤緑をプレイした思い出しかないお姉さんも、この挑発的な表情を向けるイケメンのライバル「グリーン」にときめくだろうし、
主人公に立ちはだかる第二のライバルであるリーグチャンピオンたちの中でも絶大な人気を誇る「シロナ」や「ダイゴ」もこのドヤ顔である。
サン&ムーンが大好きなトレーナー諸君であればこの「リーリエ」の笑顔が刺さるはずだし、
ブラック&ホワイトをプレイ時間がカンスト(要は約1000時間以上)するまで遊び倒した僕はこの場面の切り替わりで涙が溢れたのである。
そして君は、オーキド博士から始まったポケモン研究者である博士たちも、
最初のパートナーも、今ではこんなにもたくさんいるのを知っているだろうか。ポケモンという作品の歴史の長さを受け止めきれないくらい愛おしい。
そして、この演出は人物に絞った話に留まらない。それこそがこのMVの真の凄さなのだが、では一体どういうことなのか。
それはゲーム内の「思い出のシーン」を再現していること。そして、そのシーンがファンにとって特に思い入れの強いシーンに厳選しているということだ。
例えば、冒頭のこのシーン。
この4人はBUMPではない。このMVは徹頭徹尾ポケモン愛で構成されている。だから、そこに関係のない人物は描かないし、意味のあるものとして描いているのだ。それは、何か。
赤&緑の物語の始まりを覚えているだろうか。ポケモンとは常に主人公が自分の部屋から外の世界に出発するシーンから始まるのである。その部屋にあるテレビに映っていたもの、それはスタンドバイミーだった。
(Twitter参照)
BUMP×ポケモンの映像、元ネタは赤緑のテレビ映像だけど、さらにその元ネタはSTAND BY MEって映画でポケモンの冒険イメージのコンセンプトに影響を与えまくってるやつだから、そこを最初に持ってくるのスゲーインパクトあったね pic.twitter.com/px1xppQNUM
— ワナ(実況者) (@game7400) September 29, 2020
ポケモンは名作RPG「MOTHER」に影響を受けている。さらに、そのMOTHERが影響を受けた作品が「STAND BY ME」なのだ。この冒頭から泣くことができたファンとは熱い抱擁を交わしたい。
他にも、こんなシーンがある。
赤&緑の続編である金&銀のライバルである。彼は、博士の研究所から最初のパートナーを盗むという形で奪ってしまうことから旅が始まる。ポケモンに対する愛情や信頼を持ち合わせておらず、ただただ強さを求めて主人公に戦いを挑んでは負けることに苦悩するトレーナーだった。
そんな彼が、自分には欠けているものに気づき博士にポケモンを返しに来るのだ。博士は、彼のポケモンが、そんな彼に懐いていることを知り「好きな人の隣にいることがポケモンにとっての幸せなのだ」と、彼のことを許しそれに応じなかった。
そんな彼が、大切なことに気づかせてくれた主人公に初めて笑顔を見せるのだ。ほんの一瞬だけ見せるこの1カットに製作者の情熱が宿っている。ファンは、しかと受け取った。
また、忘れられないシーンとして、金&銀での最終決戦(前作のレッドとの対戦=裏ボス的な存在)を挙げるファンも多いだろう。もちろん、そのシーンも大迫力で再現されている。ここには僕も胸が熱くなった。
そして、新時代の主人公たちへとバトンは受け継がれる。その背には、「227」の背番号。
そう、ポケットモンスターシリーズの原点である赤&緑の発売日(2月27日)である。(コマ送りしないと気づけないほど一瞬のカット。)
ここで筆を置きたいほど、感無量である。
それにしても、なぜこれほどまでに畳み掛けたのか。それは楽曲の終わりから推測できる。
このMVは楽曲の後エンドロールが流れる構成になっている。楽曲が終わる合図として「GOTCHA!」という子供達の掛け声で締めくくられる。
その声が上がった瞬間が2分31秒なのだ。151秒である。
151という数字には特別な意味がある。ポケットモンスターは151種類のポケモン図鑑を完成させることから始まった。(今では800種類を超える。)
その原点である数字と同じ151秒の1秒1秒に作品の歴史を詰め込みたかったのかもしれない。
ちなみに、エンドロールも含めるとこのMVは3分14秒で終わる。314はアニメ版主人公の「サトシ」と読めなくもないし、3分14秒は194秒なのだが、194番はガラル地方(最新作のソード&シールドの舞台)の図鑑でピカチュウに当たる。
公言されていない以上、これは意図したものではなかったかもしれない。ファンの単なる深読みかもしれない。それでも、偶然の産物なのだとしたら、それこそなんてドラマチックなのだろう。
そんなことにも意味を見いだせるほどの余地を与えてくれた。これ以上ないファンに対するファンが期待した以上の贈り物だったのだ。
もうこれ以上語ることはない。
これからも僕はもう少し、ポケモンと彼らの行く末を見守りたい。
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