ローマ~プラハ 電車で3週間の無計画女子一人旅 17日目
2019年3月21日
今日はオーストリア・ウィーンを脱出し、チェコへ入国。
チェコ第二の都市・ブルノを目指します。
宿泊した宿をチェックアウト。
ふと床を見ると大変繊細なタイルが。
めちゃくちゃ細かい。
そして美しい。どこの職人が作ったのだろう。
さて、駅に到着。
朝食は駅ナカのパン屋さん。
この品揃え!
シンプルな主食系パンから、惣菜パン、ドーナッツなどの菓子パンやケーキなど、小麦を使ったあらゆる美味しいものが勢揃い!
そこでチョイスしたのは飽きもせずウィンナーシュニッツェルのサンド。
飲み物はハイビスカス系のハーブティー。
このサンドイッチがこの旅で食べた中で一番美味しかった!
パンにはパプリカソースが塗られていて、サクサクシュニッツェルの上にはドライトマトが添えられている。
こんなの絶対美味しいやん……美味しいのよ、実際。
朝ごはんにしては、かなりのガッツリ系を選んだのでパンは1個だけにしたけど、甘いパンも食べれば良かったなぁと今になって思う。
駅ナカにこんな美味しいパン屋さんがあるなんて知らなかったな。
さて、電車に乗り込みチェコ・ブルノへ向かいます。
ブルノに到着!
そのまま真っ直ぐ宿に向かいます。
前日に予約した宿にチェックインし、荷解きをすると引き出しの中に誰のものか分からない靴下が入っていたのでそっ閉じした。
部屋はきれいだし、シンプル。
本来は数名で宿泊するのだろうが、今日は私で貸し切り。
ベッドも居心地良かったのですが、翌日真ん中の支柱がぶっ壊れました。
私の体重が原因ではないはず……はず……
体制も整えたので、早速街歩きへ。
キャベツ市場と呼ばれる地元の農家さんたちが育てた野菜や果物、加工食品などが売られている活気のある広場だ。
市場とはいえ、昼を過ぎても元気に営業中。
とはいえ、朝に比べれば商品も少なくなり、早めに店じまいするところもあるそうなので、早めに行くのが本当は良いらしい。
到着したのが昼頃で時間はもう15時になろうというくらい。
朝食がカツサンドでもさすがにお腹が空いてくるので、ランチにします。
先程のキャベツ広場と目と鼻の先にある老舗っぽいチェコ料理屋さん。
なんだかアットホームな落ち着く雰囲気。
まずは一杯。チェコの首都プラハで醸造されている地ビール・スタロプラメンのレモンフレーバー。さっぱりとした味わいが気持ちいい。
こうして昼間から酒を飲む生活も残りわずかだな……
チェコのこういう定食屋さんやバルでは、コースターにも注目してほしい。可愛らしいデザインのものが多いので、コレクターもいるくらい。
ちょっとしたお土産にも最適だぞ。
さて、注文した定食が到着。
頼んだのはポークの煮込みに2種類のザワークラウト、4種類のクネドリーキが添えられてもの。
クネドリーキというのはチェコ料理の主食として食べられる茹でパン。
小麦か、すりつぶしたジャガイモをこねた団子状のものを沸騰したお湯で茹でて作られる。ここの4種は左から小麦のプレーン、パンの切れ端を捏ねたもの、ジャガイモと細かいベーコンのもの、ハーブを加えた小麦のもの。
どれも個性があって飽きない!
副菜のザワークラウトは通常のと紫キャベツのものの2種類。
味はそこまで差はないが、油の強いメインの添え物として心強い。
そのメインのポーク煮込み。
数種類の野菜でじっくりコトコト煮込まれたのがよく分かる柔らかさ!
ガツンとくる豚の脂と繊維質な身の部分がホロホロになっている。
野菜のソースも甘みが強くて美味しい。
チェコ料理ってこういう素朴な感じがあって好き。
なんか、中世の酒場や食堂とか行ったら、こういう料理が出てきそうだなって感じがしませんかね?
さて、お腹いっぱいになったら再び観光。
食事をしたレストランのほぼ向かいにあるカプチン修道院へ。
ローマでも同名の修道院に行ったけど、このカプチン派の教会には亡くなった修道士の遺体がミイラや白骨としてそのまま残されている。ここの修道院も同様に、1780年代までに埋葬された修道士のミイラが大量に埋葬されているとのこと。
ミイラ大好き人間としては見逃せない。
薄暗い室内には結構状態の良いミイラがたくさん。
いわゆる「カタコンベ」とも呼ばれるこうした合同墓地はヨーロッパにはかなり多く、ここブルノにもヨーロッパで2番めに大きなカタコンベがある。
それはまた後ほど見に行くが、こういう場所ってなんだか昔の時代が少し色濃く残っている気がして好きなんですよね。
さて、広場からすぐにあるブルノのランドマーク・聖ペトロと聖パウロ大聖堂に向かう。ゴシック様式のかなり大きな教会で、遠くからでもよく見える尖塔は高さ84mとか。
一直線に横切っていく飛行機雲がいい感じ。
教会の裏手にあった聖母子像がなんだか少し怖くていい雰囲気。
聖堂の中はどこまでも続くかのようなステンドグラスが目を引く。
シンプルだけど、荘厳でとても良い。
さて、移動して聖ヤコブ教会へ。
地下には先程話したヨーロッパで2番めに大きいコストニツェ(カタコンベ)があるので有名な教会です。
入り口はこんな感じ。
入場料を支払って中に入ると……
管弦楽器のクラシカルな前衛音楽をBGMに、現代アーティストの手掛けたアート作品が整然と並んだ白骨の合間に佇んでいる。
実は、ブルノはこうした現代アートの活動支援にも注力しており、町中にも現代アートの彫刻があちこちに飾られているうえ、小さな町なのに現代アートの美術館が2つほどある。
とにかく現代アート推しな街なのだ。
音楽と彫刻、並べられた無数の白骨と合わさって、コストニツェの雰囲気はなんとも不気味で荘厳で神聖。まるで死後の世界の入り口に立ったかのよう。本当は長居したかったけど、ピリピリと不思議な空気に気圧されて早めに出てしまった。
出たところのすぐ横にも現代アートの彫刻作品が。
脚長な騎兵隊。周りの人との比較で分かると思うけど、結構な高さ。
地元では「ブルノのキリン」と言われているんだとか。
……首じゃなくて足が長いのに?
さて、先程のコストニツェの上にある大聖堂へ。
先程の聖堂よりもずっとシンプル。
たくさん並んだ柱が印象的。イタリアで見た聖堂のような派手さがない、地元の教会って感じだ。
おや、あんなところにも。
ダウンタウンの方に行くと、夕方5時頃なのに既にそこら辺で酒盛りしている若者たちが。元気だなぁ。
さて、これも現代アート。
実はこれ時計になっており、1日のうち15時になるとランダムで穴からガラス玉が1つだけ出てくるらしく、当たった人は持ち帰ってOKなのだとか。
ちょっとした記念品としていいかも。
さて、もう一つの変わった観光スポット・旧市庁舎へ。
この入口のところにあるファサードの先端がなぜかグニャグニャに曲がっている。一説によると、このファサードを手掛けた職人が、役所の人間から十分な報酬をもらえないことに腹を立てて、曲げてしまったという伝説が残っている。
中に入るとワニの剥製がなぜか天井に。
これ、実はワニではなく「ブルノのドラゴン」と呼ばれているもの。
……いや、ワニだけど。
ブルノってこういうツッコミどころ満載な動物(?)がいっぱいね。
空はすっかり赤い夕焼け。
そこにプッカリと気球が浮いている。どんな眺めだろうか。
ふと横を見ると変わった窓の個人宅。
モダンで素敵だなぁ。どんな人が住んでいるんだろう。
ランチの定食がかなりパンチが効いていたため、お腹はまだ減らない。
バルでビール一杯だけ飲んで帰るかな。
チェコと言えばのピルスナー・ウルケル。
あらゆるビールのうちピルスナータイプと呼ばれるものの元祖。
日本でよく飲まれるキンキンに冷やして飲むタイプのビール(スーパードライ、プレミアムモルツ……etc)もすべてピルスナーなため、日本ビールの元祖とも言える。
その軽い口当たりと香り高いアロマ。
ビール嫌いだった私がビール大好きになるきっかけになったビールなのでビール嫌いほどチェコに行ってほしいと思う一番の理由である。
気持ちよく飲んでいると、頼んでいないドリンクがバーテンにより運ばれてくる。やってきたのはベヘロフカ。
これもチェコを代表する薬草リキュールで、アルコール度数は38度。
テキーラに飽きたパリピが罰ゲームとして飲むことでお馴染みのイエガーマイスターとほぼ同じ。
ちなみに、1807年に作られ200年の歴史もある。
「え、これ頼んでないよ」と私が言うとバーテンが言う。
「あちらのお客様からです」
え!!!!!!
「あちらのお客様からです」って実現するんだ!!!本当にやるやつがいるんだ!!!!!初めて見た、マジで!!!!
人生初の「あちらのお客様からです」を喰らい、どんなヤツが私に寄越してきたのかと思って見てみると、まぁ既に出来上がった気の良さそうなおっさんとその仲間たちが。
そのおっさんが仲間と肩を組みながら私に向かって叫んでる。
「イッキ!イッキ!イッキ!」
とロクでもない掛け声を発し続けるおっさんたち。
ちなみにコレ、英語やチェコ語で言っているのではなく、日本語で言っている。これにはもちろん理由がある。
チェコの主要産業は自動車などの機械産業がメイン。
国産車であるシュコダなども有名だが、近年ではナノテク系の産業にも国を上げて注力している。
特にブルノは19世紀の産業革命の時代に繊維業で栄えたあと、炭鉱の発掘も盛んになった歴史もあり、現在に至るまで工業の町になっている。
地元にあるブルノ工科大学なども、エンジニアを目指す全世界の学生たちが留学に来るほど有名だったりする。
そのため、日本の機械産業系企業からやってきた営業マンやエンジニアもここに出張に来ることが多いらしく、このイッキおっさん達はそんな悪い日本人ビジネスマンにより「イッキ」を覚えたのだろう。
まったくロクでもない。
このおっさん仲間のうち1人の若いフィンランド人の男が親しげに私に話しかけてきた。アレコレ話していると「せっかくだから紹介したいチェコ料理がある」と言う。
彼が注文したのはウトペネツ。
ソーセージのピクルスであり、ウトペネツというのはチェコ語で「水死体」という意味で、ピクルス液に浮かぶソーセージがそれっぽく見えるのが名付けの由来らしい。チェコではバー(チェコで言うところのホスポダ)の定番おつまみメニューだ。
キョーレツな酸味が脂たっぷりのソーセージとマッチ!
ビールに合うんだなコレが。
日本でもピクルス液作って、市販のソーセージ(シャウエッセン、香燻などがオススメ)を漬け込めば近い味になるし、ピクルス液作るの面倒くさかったら岩下の新生姜のつけ汁に漬ければかなり美味しくなるぞ。
そんな中で会話は映画『ボヘミアン・ラプソティ』を見たか?という話題になる。とういうのも、今年公開されて全世界に渡りヒットとなったこの作品は、特にヨーロッパでの視聴者が多いらしく話題はもちきりらしい。
私も見たばかりだし、もともとQUEENは好きでよく聞いていたので親しみがある。好きな曲は何か?と聞かれ「地獄へ道連れ(原題:Another one bites a dust)」と答える。それの何が刺さったのか、彼らは「それチョイスする!?最高!!」みたいな感じで歓喜し、導入のリフを一緒に口ずさむ。
ダダダッダッダッ、アナザーワンバイツァダスト!
その後、同席していた仲間のうち1人の年配男性が「何か、チェコの映画で知っているものはあるか?」と聞かれたので「ヤン・シュヴァンクマイエルが好きで全部見ています。あと、『ひなぎく(原題:Sedmikrásky)』も見たことがあるし、好きですよ」と言うと、彼は私が映画のタイトルをチェコ語の原題で言ったことに驚いた様子だった。
「日本とチェコ、しかもこのブルノで、本当に遠く離れた国からやってきたキミはチェコの映画と聞かれてシュヴァンクマイエル、さらには『Sedmikrásky』と答えるなんて、感動的だ」
音楽も映画も、エンターテインメントは言語と文化を超えて交流を深めるきっかけになれる。その事実を再確認できたのは、今回の旅で一番大きな収穫だったかもしれない。
一杯だけビールを飲むつもりがすっかり夜も更けたため、充足感を胸に大人しく宿に帰る。
翌日もブルノをゆったり満喫します。