#66 女子校の真実
特に男女どちらの性自認も持ち合わせていない私だが、実は女子校出身である。
中学・高校一貫の私立校で、学校の名前に「聖○○」と聖人の名前がつく、キリスト教カトリック系統のミッションスクールだった。
しかし、私自身は別にカトリック教徒でもないし、家族がそうであるわけでもない。宗教的にはユルめの学校で、同級生にはプロテスタント、各種仏教徒、神道系、新興宗教系などさまざまな背景をもつ子達がいた。
他の学校と大きく違うところと言えば「道徳」の授業が無い代わりに「宗教」という授業があったことだ。(多分「倫理」の授業の代わりにもなっていたと思うが、この辺の記憶はあやふやだ。すまん)
「宗教」という名前なので、基本的には新約聖書を中心にそこで説かれている教えを解説されるというのが主な内容なのだが、高校生の後半ごろにはキリスト教以外の宗教に関する授業も行われたことが印象に残っている。
各宗教がどのような教えを説いているのか、何を重要視しているのかなど、それぞれの宗教の強みや良さなども丁寧に教えてくれたので、あの時の先生はいい先生だったなぁと思う。
で、たいていの場合このようなミッションスクール系の女子校出身だと言うとこう言われることが多い。
「お嬢様な学校なんだね」
「やっぱり、登下校で「ごきげんよう」って挨拶するの?」
「いい匂いしそう」……などなど
女子校に抱く幻想のなんとおぼこいことか。
もちろん、実態はイメージから遠くかけ離れており、その距離たるや北海道から南極くらいは離れている。
まず「聖○○」という名前がつくからお嬢様なわけではない。
学校の区分的には進学校だったし、制服もその地域では比較的可愛いと評判ではあったものの、通ってる生徒の内面はゴリラと近似値だ。
先生からはよく「お淑やかにしなさい!」と叱られる光景が多かった。つまり、こう叱られることが多いということは、そうでない子ばかりということである。
夏の暑い日に登校して、教室の一番クーラーの当たる位置でスカートをバサバサさせたり、友達から借りた冷感スプレーを股間に噴射してぶん殴られたりとかは日常茶飯事。
男性の先生もいたが、皆んな異性と認識していなかったので、次の授業が体育のときにその前の授業を担当していた男性教師が残っていてもお構いなく着替えを始めて
「まだ俺が残ってるでしょうが!」
と『北の国から』みたいな怒られ方をされることもあった。当たり前だが、女子校に勤める男性教師で、生徒の着替えに喜ぶ奴は一人もいないのだ。
登下校で交わされる「ごきげんよう」も皆無。
ただ、一部の部活では帰宅前に部活内で「ごきげんよう」と言うこともあったが、それも「ごきげんよう」というより「ごきげにょー」というやる気のなさだった。
体育の授業後の教室なんてのは最悪で、皆んなが皆んなそれぞれ違った制汗剤を使いまくるので、ありとあらゆるシーブリーズと8×4の香料が混ざったカオスの様相だ。
誰かが生理になって困ればナプキンが空中を飛び交い、スカート捲りと乳揉みが横行し、悪ふざけの一環で廊下を引き摺り回されるとか、誰かが持ち込んだエロ同人誌が出回ったりとか……とにかく、フィクションのようなキラキラ感は皆無の蛮族アマゾネス大国なのだ。
よく、女子校のカースト制度についてドラマなんかで描かれることが多いが、当事者からするとあれほど「妄想乙」と言いたくなることはない。「私はカースト上位なんだから、最下位のオタクなんかとはつるまない!」という台詞を聞いた時には卒倒してしまうほどだ。
私が通っていた学校の場合に限定した話にはなるが、女子校における生徒同士の関係というのは、カースト制度というよりも「サークル」が近いと思う。
それぞれ同じような趣向を持ったもの同士でいくつかグループが出来て、そのグループ間を好きな時に好きなように移動するのがほとんどだ。
グループは主に以下に分けられる。
①ゴリゴリのギャル系
②ユルめのギャル系
③ジャニオタ
④ニュートラル
⑤部活系
⑥オタク系
⑦変人
⑧妖怪
基本的に①と②はそこそこ綿密な連携協定が結ばれているものの、若干不良的な要素も持つ①ほど深追いしないのが②。
①②と親交が深いのが③。
ただ、①や②が④〜⑥とも交流を持つのに対して、③はほぼ⑤や⑥と交流は持たない。
④は基本的に②〜⑥稀に⑦と満遍なく交流を持つことが多いが、そこまでの深追いはしない。
⑤はスポーツ系の部活であるほど結束が強くなるが、②〜⑥辺りとは仲良くすることが多い。
⑥はオタクの程度やジャンルによるが、漫画の貸し借りにおいて強力な求心力を発揮するため、なんだかんだ①〜⑧まで交流の幅が広い。
⑦と⑧はほぼ同じ括りにはなるのだが、他のグループとの交流が盛んなのが⑦、極端に少なく誰も接し方が分からないのが⑧。
大まかには上記の通りで、普段はそれぞれほぼ決まったメンツと過ごすことが多く、それ以外のときは付かず離れず、互いに居心地の良い距離感を保つことが多かった。
しかし、そんな中でもこのグループが一致団結する瞬間がある。
それは……誰かが「初体験」をした時だ!!
すべては、①か②あるいは⑦の誰かが、昼休みの時間に友達へ、学外にこっそり作った彼氏と「初体験をした」と報告したことから始まる。
その言葉が漏れ聞こえた瞬間から、まず体験者を中心にクラスメイト全員が車座になってその体験談へ耳を傾ける。
10代というのは、女子でも脳内における性欲の強さが他の何においても強いことが多い。
しかし「初体験」がどのようなものか、その詳細な知識はクラス内で出回るBL漫画や保健体育から得たものだけだ。
だから、なんぼ話を聞いたところで
「ち○こがデカくなったり小さくなったりする???????」
「穴に入れる????どこの????」
となって終わりだ。
初体験当事者にしてみれば話甲斐もない。
というわけで、女子校の真実をお話ししたところで今日はおしまい。
巷における女子校の幻想にはお気をつけを。