#212 天津飯と真摯に付き合え
中華料理店に行ったとき、高確率で注文してしまうものに天津飯がある。天津飯、日本生まれの中華料理。そのパラドクスを含んだ輝く黄色い丘。
店舗によって、赤色の甘酢餡がかかっていたり、はたまた透明または白色がかった中華出汁餡がかかっていたりするが、そのどちらにも代え難い魅力がある。どんなスタイルであっても、天津飯は私にとって欠かせない存在だ。
先日。
スーパーに行ったら、ズワイガニの蟹缶がなんと半額セールで売られていた。蟹缶なんて、誰かを招いてパーティーする時にリクエストでもされない限りなかなか買わない。私は誘惑に負けてそれをカゴに入れた。
久しぶりに手に取った蟹缶は思ったより大きい。2食には使えるかもしれないと胸を躍らせながら、じゃあこれで何を作ろうか考えた。
そこで脳裏に過ったのが天津飯だ。
普段、自分で作るとなったらカニカマで作ることが多いけど、今回は蟹缶だ。贅沢さが違う。
そう思いついてから、私は天津飯に蟹缶と卵のほか、何を入れようかと考えた。
そこではたと気付いた。
蟹肉と卵以外の具材が思い出せない。
過去に色んな店で天津飯は食べてきたし、中には複数回行って食べたものもある。でも、天津飯のあの「天津」の部分に含まれていた、サイドキッカー達が思い出せないのだ。
なんか緑色のがあった気がする。あれはきっと刻んだネギだろう。でも何か他にも入っていた気がするのに、それは何だっただろうか。
タケノコの水煮を細かく刻んだの?あったような気がするし、無かったような気もする。ピーマン?いや、蟹の味を邪魔するから無い。気になって、私はクラシル師匠に伺いに行った。
見ると、最後にかける餡に椎茸やシーフードミックスを使うものはあるが、天津部分はやはり蟹(カニカマ)と卵、あってもネギくらいなものだ。天津の王冠は意外とシンプルだった。
そう考えると、私はあんなに天津飯を想っていたのに、あの人のことを何も分かっていなかった……こんなの、天津飯が好きだなんて言えないじゃないか。
ごめんない、天津飯!
私、あなたのことまるで分かってなかった!あなたを愛してたはずなのに、調べるまであなたが内側に何を秘めていたのか知らなかったなんて……ダメね、私ってホントダメなヤツ。
(ここで土砂降りの中、道端に崩れ落ちる)
ところで、クラシル師匠。
「鶏肉の天津飯」はもはや親子丼では?
違う?いやいや……餡がかかってれば全部天津飯なんですか?それは……違うでしょ……
てなわけで。
明日の昼は天津飯の予定です。