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2024 PARIS~クライミング/男子準決勝・リード

熱戦が続くオリンピック、ついに始まったクライミング競技。
男子準決勝リードを見て思ったこと、パフォーマンスビルダー三浦の視点で書きます。

やはり私は体を見ます、今回特に感じたのは「体形は選手の確率を表す」ということ。


1.体形から見る男子のリードパフォーマンス

男子のリードを見て思うのは、肩が目立たない選手が強い確率が高いということ。
肩が目立つということは肩や腕の力が優位であること、その時点で全身の連動性が低下してしまうので前輪駆動のパフォーマンスになる。
すなわち上半身の持久力で勝負することになるということ。
体の力が半分の状態で勝負している。リードのあの疲労感を腕で耐えるか、上半身で耐えるか、全身で耐えるのか。
どんなルートが来ても平均的に高いパフォーマンスを発揮できることが、選手の勝率を高めることに繋がると考えられます。
私から見るとその点で安楽選手のハイパフォーマンスにかなり納得がいきます。
彼は体のどこか一か所が目につかず全身のバランスが良いからです。

2.連動性≒総合力(ハイパフォーマンスを出せる確率)

全身のどこか一つが強いということではなく、全身の連動性が高いということは課題の得手不得手が少ない、総合力が高いということ。
逆を言えば体に個性が強い(どこか一か所が発達していたり、そもそも根本的な姿勢が悪いなど)ということは当たれば強いけれど当たらないと弱いということが考えられます。
連動性が高い選手は怪我が少ないのも特徴の一つです。
連動性に関してはこの辺りの記事も参照ください。


3.個人的に気になった選手

ちなみに、私個人的な視点で気になったのは韓国のDohyun LEE選手で、体のバランスが良い、ちょっと色々とアプローチしてみたらもっと強い選手になりそうだなあと。

さらに今回ちょっと感動していたのはオーストリアのJakob SCHUBERT選手。以前はもっと上半身(腕や肩)主導のパフォーマンスだったような印象ですが、登りの中で腕や肩が目立たず全身感が高まっていてなんだか感動でした。
(この話は次の「4」にも繋がります)
そしてイギリスのToby ROBERTS選手。保持がいい、保持の手の形がいい。
もしかしたら人より手が大きいのかもしれませんが、保持の際の手の形が一番際立って良く見える≒これまた体の連動性や安定感が高まるということでもあります。


4.時代の流れ:クライミングの特性

そこで加えて思うことは「時代」。
(時間軸が正確ではないかもしれませんが)おそらく10~20年前はもっと小さいホールドを握る、強い傾斜に耐えるなど、クライミングの課題の性質自体が今とは異なっていたように感じています。
当然ですが、その課題をクリアするために登る≒選手の体はそれに対応する仕様になる。
簡単に言うと以前は壁の中で「耐える」、今は壁の中で「動く」。
だから選手の体も動く、動けることが必須になってきています。
先ほど伝えた連動性の話はその「動く」ためには必須、mustです。
昔と今どちらがいい悪いの話ではなく、その変化が「スポーツクライミング」なのかなと。
今の「スポーツクライミング」には、全身漫勉なく使うこと、使えることが求められるため、選手の体はバランスが良くなるように思います。パフォーマンスビルダーとして個人的にはこの傾向をポジティブに思っています。
(※注/年々課題がハードになり、選手の体が危険だという意見もあると思うのでその点は確かに)
だから今絶大な強さを誇っている安楽選手はこの時代にあった選手なのかなと。
これが10年前であったら??
ドイツのAlexander MEGOS選手も実は体のバランスが良いと感じていますが、彼がもし今10代だったら??

と考えた時に、前述のJakob選手が長きに渡り、かつ多方面で第一線で活躍し続けていることはやっぱり特別な魅力に感じてしまう部分でもあります。

5.つれづれ

と色々思いますが、フランスの選手は「うまい」印象だなあとか、一重に体が良いということだけが選手の能力に繋がるわけではないところがまたクライミングの、スポーツの面白さだなあとか。その選手が何をどう考えるのか、どうスタイルをつくるのか、どう自分を広げていくのか、体とマインド(脳、思考、嗜好、キャラクター、性格など)の掛け算でパフォーマンスはできているなあと。

6.おわりに

そもそもリードとボルダーを合わせて競技力を競う。
そんな場面20年前に誰か想像していました??笑
リードもボルダーも。そんな総合力を求められるこの時代もまた安楽選手の強さを後ろ盾てているのかなと感じます。
2024PARISのチャンピオンは、時代の申し子なのか?! 
決勝が楽しみです。


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