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MMAが上手くなるにはどうやって学んでいけば良いの?

どうもアスレティックパフォーマンスコーチのタケダイグウジです。

MMAに限らずスポーツにおいて、皆試合の為に練習するわけなんですが、レベルが上がれば上がるほど練習がプラスの要素だけでなく、マイナスの要因にもなってきてしまうんです。

例えばレスラーがミドルキックの練習めちゃくちゃしたら今まで脚を取りにいく意識だけ相手に与えていたのを上の注意もしてくれる様になったから結果的にタックル入りやすくなったりすることもあれば、逆に重心高くなりすぎてタックル入るの遅くなることもあるということです。

こういうことを真面目に定義づけして説明していきます。

選手の方には分かりにくいことですが、僕らは上手くいくとき、いかなかったときの判断をどうするのかを常に模索してこういうことを考えていると知っていただけると幸いです。

1. 転移と干渉の定義

転移(Transfer)とは、以前に習得したスキル、知識、または戦略を新しい状況に適用することを指します。転移にはこんな種類があります。

  • 正の転移(Positive Transfer): あるスキルの習得が別の状況でのパフォーマンス向上につながる場合。異なる文脈でも一貫したパターン認識と意思決定が促進されます。

  • 負の転移(Negative Transfer・干渉): 過去の学習が新しいスキルの習得を妨げたり、誤った影響を与える場合。これは、既存の知識が新しいタスクと矛盾することで発生します。

干渉(Interference)は、以前に学習した運動パターンや認知戦略が、新しい運動プログラムの習得を阻害する現象です。

なんてこむずかしいこと書いてますので、これからは簡単な例をあげてみましょう。

2. MMAにおける転移の3つの例

  1. レスリングからグラウンドコントロールへの正の転移

    • 強力なレスリングのバックグラウンドを持つファイターが、MMAでのグラウンドコントロールを効果的に実行する。体位制御やプレッシャーコントロールのスキルが新しい環境でも適用可能となる。

  2. ムエタイからクリンチワークへの正の転移

    • ムエタイバックグラウンドのファイターが、MMAでのクリンチテクニック(膝蹴りや肘のコントロール)を効果的に応用し、近距離での戦闘力を向上させる。

  3. ボクシングからMMAディフェンスへの負の転移

    • ボクシングバックグラウンドのファイターが、高いガードポジションに依存するディフェンス習慣のために、MMAでのローキックやテイクダウンに対して脆弱になる。過去の防御習慣が新しいタスクでの適応を妨げる例です。

3. MMAにおける干渉の3つの例

  1. 打撃スタンスがテイクダウンディフェンスを妨げる干渉

    • 伝統的なボクシングスタンスで訓練されたファイターが、直立した姿勢や体重分布のために、スプロール防御がうまくできず、テイクダウンディフェンスで苦労する。これは、学習したスタンスが新しい状況で不適応となる干渉の典型例です。

  2. グラップリングの習慣がMMAでの移行を妨げる干渉

    • ブラジリアン柔術(BJJ)のファイターが、ガードワークに依存する習慣のために、MMAではグラウンド&パウンドのリスクに晒されやすくなる。環境の違いが新しい戦術的適応を阻害します。

  3. キック技術の干渉

    • キックボクシングやムエタイバックグラウンドのファイターが、重心が高い高いキックをMMAに適用しようとして、適切なディフェンス意識が欠如し、テイクダウンのリスクが高まる。

4. MMAにおける干渉を克服し、学習適応を促進するための戦略

  1. モニタリングの強化と自己評価

    • 自己モニタリング(自分のパフォーマンスの評価)を強化することが重要です。単なる自己観察にとどまらず、パフォーマンスを継続的にレビューし、改善点を明確に特定するための体系的なアプローチを含みます。今だと簡単にスマホ等で撮影出来ますので、ビデオ分析を活用して、技術的欠陥(例:打撃時の姿勢の不安定さ、テイクダウン防御の遅れ)や戦術的判断のギャップを客観的に評価します。さらに、フィードバックループを取り入れることで、分析した内容に基づいて具体的な改善策を即座にトレーニングに反映できます。加えて、自己評価シートやパフォーマンスログを活用することで、進捗状況を記録・追跡し、成長の可視化を図ります。こうしたデータ駆動型のアプローチにより、選手は自分自身の成長プロセスをより深く理解し、効果的なスキル向上を促進できます。

  2. 多様な学習経験の導入

    • 同一の学習経験を繰り返すことが負の転移を生む可能性があるため、異なるトレーニングシナリオ、パターンやスパーリング環境を導入します。これにより、新しい状況への適応力を向上させます。

  3. 心理的介入と自己効力感の向上

    • 高い自己効力感がスキル転移を促進することが示唆されており、メンタルトレーニングを取り入れて、自己信頼を強化することが効果的です。

  4. 深層学習アプローチと環境適応トレーニング

    • 現在のトレーニング現場では、データとバイオメトリック情報を適切に取り込んだり、AI活用した個別化学習が進化しています。ファイターの過去のパフォーマンスデータを分析することで、技術的な弱点や成長の可能性を特定できます。たとえば、打撃時の速度、パワー、角度といったデータをリアルタイムで取得し、動作の効率性や正確性を解析したりと。また、スパーリング中の姿勢、反応速度、距離感の維持などのパフォーマンス指標も評価し、具体的なフォーム改善のフィードバックを提供します。さらに、心拍数、酸素摂取量、筋肉の疲労度といった生理学的データを統合的に分析することで、トレーニング負荷の最適化や回復状況のモニタリングが可能となり、これらのアプローチによりオーバートレーニングによる怪我のリスクを抑えつつ、各ファイターに最適化されたトレーニングプログラムを設計することができます。また、過去の試合データやトレーニング記録を組み合わせて戦術的な傾向やパフォーマンスの変化を視覚化することで、対戦相手ごとの戦略立案や改善が必要な領域の特定にも役立ちます。このような統合的なデータ分析は、選手個々の特性に応じたカスタマイズされたトレーニングを実現し、持続的なパフォーマンス向上を支援します。

    • ラテラルシンキングを取り入れて、伝統的なトレーニング方法を超えた創造的な問題解決が可能になります。たとえば、予測不能なシナリオを導入したスパーリング、異なる格闘技スタイルの組み合わせ、メンタルストレス下でのパフォーマンステストなどが挙げられます。

    • また、呼吸法、瞑想、神経認知トレーニングを取り入れ、反射的な判断力と認知の柔軟性を高めることも重要です。

5. 結論

転移と干渉の理解は、MMAトレーニングの最適化において極めて重要です。ファイターのスキル向上とパフォーマンス最大化を目指す上で、単なる技術練習にとどまらず、学習プロセス全体を体系的に捉える必要があります。

モニタリングは、自己認識とパフォーマンスの定期的な評価を通じて、改善点の特定と成長の追跡を可能にします。また、学習経験の多様化は、異なる環境やシナリオでの適応力を高め、正の転移を促進します。心理的介入は、メンタルの強化や自己効力感の向上を通じて、競技中のパフォーマンスを安定化させる役割を果たします。

で、テクノロジーの活用はトレーニングデータの統合分析を可能にし、個別化されたフィードバックとトレーニング計画の最適化を実現します。

これらの要素を統合することで、ファイターは技術的、戦術的、精神的な側面で総合的に成長し、試合における適応力と競技パフォーマンスの向上が期待できます。

要は多角的に見つつ、様々なデータを多角的に検証して合ってないなら変えていきましょう、ということです。

バスケやサッカーのことを英語で書いてたので日本語に直したら上手い訳が思いつかず分かりにくい箇所あったと思いますが最後まで読んでくれて感謝です。


参考文献

Osman, M. (2008). Positive transfer and negative transfer/antilearning of problem-solving skills. Acta Psychologica, 128(2), 353–362. https://doi.org/10.1016/j.actpsy.2008.03.002

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