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Wicked (ウィキッド)



Wicked - playbill

詳細

公演期間

初演
2003年 10月 30日〜 ロングラン中
ガーシュウィンシアター

スタッフ

作曲:スティーヴン・シュワルツ
作詞:スティーヴン・シュワルツ
脚本:ウィニー・ホルツマン
演出:ジョー・マンテロ
振付:ウェイン・シレント

原作

グレゴリー・マグワイア 作
小説「Wicked: The Life and Times of the Wicked Witch of the West」
※邦題は「オズの魔女記」、「ウィキッド――誰も知らない、もう一つのオズの物語」

あらすじ

人も動物も同じ言葉を話し、ともに暮らす自由の国・オズ。しかし動物たちは少しずつ言葉を話せなくなっていた。緑色の肌と魔法の力を持つエルファバはシズ大学に入学し、美しく人気者のグリンダとルームメイトに。見た目も性格もまるで違う二人は激しく反発するが、お互いの心に触れるうち、次第にかけがえのない存在になっていく。

ある日、オズの支配者である魔法使いから招待状が届いたエルファバは、グリンダとともに大都会エメラルドシティへ。そこで重大な秘密を知ったエルファバは、一人で戦うことを決意。一方のグリンダは、オズの国を救うシンボルに祭り上げられる。心の内では相手を想い合うエルファバとグリンダ。
しかし、運命は二人を対立の道へと駆り立てていく――。

劇団四季 ウィキッドより

受賞歴

〈2004年トニー賞〉
ノミネート】
・最優秀ミュージカル賞
・ミュージカル主演女優賞:クリスティン・チェノウェス
・ミュージカル脚本賞:ウィニー・ホルツマン
・振付賞:ウェイン・シレント
・照明デザイン賞:ケネス・ポスナー
・編曲賞:ウィリアム・デイビット・ブローン
・オリジナル楽曲賞:スティーヴン・シュワルツ

【受賞】
・装置デザイン賞:Eugene Lee
・ミュージカル主演女優賞:イディナ・メンゼル
・衣装デザイン賞:Susan Hilferty

解説

ファンタジーな童話の中に込められたメッセージ
「オズの魔法使い」の前日譚になっている作品のため、一見子供向けのように思うかもしれないが、ポップな楽曲や世界観とは裏腹なアメリカの社会問題への風刺が効いた作品。原作小説が書かれた時代が湾岸戦争後であったことから、湾岸戦争後の世界で見られたプロパガンダ、善悪の相対性、差別と言ったテーマが小説およびミュージカルにも影響を与えたとも言われている。

具体的に説明をすると、エルファバは、オズの魔法使いがいわば腐敗政治をしており、その権力構造に挑戦し自分の信念をつらうくキャラクターとして描かれるが、彼女のその行動の結果、社会から「悪」としてレッテルを貼らる。一方、オズの魔法使いは権力者として偽りの平和を維持し、プロパガンダを通じて自らを「善」として描く。この構図は、戦争や権力がどのように情報を操作し、敵を悪として描くかというテーマを思い起こさせる。

また、エルファバが「緑の肌」を持つために差別され、社会から疎外されるという内容があるが、これは湾岸戦争後によって引き起こされた中東アラブ世界に対する偏見や、異文化に対する恐怖が増加した背景が「ウィキッド」の中にも反映されていると言われている。戦争後の差別意識だけでなく、アメリカ文化の中で問題となっている人種差別も意識されていることは明確であろう。
"正義とは一体なにか" をはじめ、さまざまな社会的・道徳的な問題を扱っている。

エルファバの名前の由来
エルファバ (Elphaba) の名前は『オズの魔法使い』の作者ライマン・フランク・ボーム (Lyman Frank Baum) の頭文字LFBaから作られた。

工夫されまくっている楽曲たち
「ウィキッド」の音楽たちはモチーフやライトモチーフが組み込まれているのが特徴である。

* モチーフ:単に繰り返される音楽フレーズで、特定の意味やキャラクターに必ずしも関連しないことがある。音楽全体の統一感を作り出すための基本的な要素です。
* ライトモチーフ:特定のキャラクターや感情、出来事を象徴するテーマで、物語やシーンに結びつけられ、その象徴的意味を伝えるために使われる。

〈エルファバのテーマ〉
スティーヴン・シュワルツは、通常、自身の過去の未使用曲を取り出すことは少ないが、『ウィキッド』のために1971年に書いた未発表曲を復活させた。1971年、彼は短命に終わったショー『The Survival of St. Joan』で音楽監督を務め、その中で複雑な関係に悩むカップルの曲をポップなメロディに暗い和音を加えて作曲したが、この曲は最終的に使われなかった。「ウィキッド」の曲制作の際、この曲を思い出しエルファバのテーマとして再利用することにした。『No One Mourns the Wicked』と「As Long As You're Mine」でテーマとして使われている同じメロディーを下の動画から確認できる。

また、「As Long as You're Mine」は短調で始まりますが、最後には長調に変わる。この意図的な転調は、エルファバとフィエロがドラマチックで危険な状況に置かれている中でも、少なくともその瞬間はポジティブな恋愛体験をしていることを表現している。

〈Unlimitedのテーマ〉
「ウィキッド」といえばこの曲と言っても過言ではない、「Defying Gravity」にも出てくるこのメロディー。作品を通して何回も繰り返されますが、このメロディーは映画「オズの魔法使い」の音楽をオマージュしたものになっている。どの部分かというと下の歌詞の部分である。

・Unlimted my future… (3:39~)「The Wizard and I」
・Somewhere over the rainbow…(0:00~)「Over the rainbow」

リズムや和声が異なるためわかりにくくはあるが、「Over the rainbow」の最初の7音をオマージュしている。スティーヴン・シュワルツはオマージュが8音目に到達するとパクリと言われる可能性があるからと7音までのオマージュに関して冗談まじりに語っている。

また、このテーマは通常短調で演奏されるがエルファバがネッサローズに歩けるように魔法を使う場面でのみ長調で演奏される。これはエルファバが自分の力を使って良いことをしようとする瞬間を象徴している。セリフの後ろの音楽をよく聴いてほしい(2:58~)

しかしこの曲の中で「good」と歌う2回目の瞬間には、音楽が突然変化します。(3:10~ something good と2回歌うので違いに注目)この転調は、物語における今後の急展開を暗示している。

〈「Dancing Through Life」〉
この曲の中でグリンダがエルファバに黒い帽子を渡すシーンがあるが、そこでの2人はまだ友達ではなく、「What is This Feeling?」のメロディーを使うことで、表面的な友情の裏での緊張感を匂わせている。(4:57~)

これらはあくまで一部であり、「ウィキッド」にはこのような楽曲の工夫がたくさん詰まっている。

映画化
エルファバをシンシア・エリヴォ、グリンダをアリアナ・グランデで映画化。映画は2編にわたり、パート1は2024年11月より各国順次公開予定でパート2は2025年11月より公開を予定している 。

Wicked ポスター

楽曲

Act 1
1. No One Mourns the Wicked (グッド・ニュース)
2. Dear Old Shiz (シズ大学(校歌))
3. The Wizard and I (魔法使いと私)
4. What is this Feeling? (大嫌い!)
5. Something Bad (言葉奪われる)
6. Dancing Through Life (人生を踊り明かせ)
7. Popular (ポピュラー)
8. I'm Not That Girl (私じゃない)
9. One Short Day (エメラルドシティー)
10. A Sentimental Man (センチメンタルマン)
11. Defying Gravity (自由を求めて)

Act 2
1. No One Mourns the Wicked (Reprise) (グッドニュース(リプライズ))
2. Thank Goodness (魔法が迫る~この幸せ~)
3. The Wicked Witch of the East (総督の椅子)
4. Wonderful (ワンダフル)
5. I'm Not That Girl (Reprise) (私じゃない〜リプライズ)
6. As Long as You're Mine (二人は永遠に)
7. No Good Deed (闇に生きる)
8. March of the Witch Hunters (魔女を殺せ)
9. For Good (あなたを忘れない)
10. Finale: For Good (Reprise) (フィナーレ)

日本公演

2006年 7月 12日より、ストーリーを短縮した35分の特別版が大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンの“ランド・オブ・オズ”内のエメラルド・シアターで上演された。

2007年 6月 17日 劇団四季による完全日本語翻訳版
四季劇場[海]にて開幕
その後も、再演が繰り返されている。


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