子どもたちもお母さんも幸せにしたいリトミック教室~大阪府みのお市の音楽療法士の取り組み~
子どもの習い事でリトミックが注目を集めている。音楽を通して行われるリトミックの効果には集中力、反応力、表現力、想像力など子どもたちに必要な能力が育つといわれている。親子で活動できるので赤ちゃんから参加できるのも人気の要因だ。
大阪府箕面(みのお)市に月1のリトミック教室がある。そこは音楽療法士の高平のどか(たかひらのどか)さんの人柄と音楽的アプローチに魅力を感じて参加者のリピート率が高い。高平さんの思いに共感したバイオリンの先生、竹内麻理子(たけうちまりこ)さんと共に地域に根ざした教室を作り上げている。
現在は、キッズクラスとベビークラスに分かれてリトミックを行っている。キッズは1〜2歳、ベビーは0歳と年齢で分かれており、その年齢に合わせた音楽を楽しめる空間を提供している。このリトミック教室は1回ずつの申込制だが、中には1年以上通っている親子もいるという。
1年かけてたどりついたリトミック教室
リトミック教室をつくるきっかけとなったのはママ友のひと言だった。
音楽療法士としてなにかしたいと病院への就職も考えていたが、就労条件の不一致や出産などが重なり断念した。そんな状況を知ったママ友から「自分でやったらいいんですよ」と言われたという。
「自分でするという選択肢に初めて気がつきました。そのママ友さんと一緒に音楽とヨガを組み合わせたベビーヨガをすることになったんです。音楽とヨガの相性はとてもよかったのですが、1年間一緒に活動する中で、もっと音楽を全面に出したプログラムをつくりたいと感じ、音楽療法士の視点で親子の絆を育む音楽プログラムをやろうと決心しました。」
音楽プログラムを作る上でさまざまな文献を読み、その中で特にお母さんの声の高さに注目した。
「マザリーズという概念があって、赤ちゃんは高い声で話しかけられることに安心感を覚えるというものです。産後うつに近いお母さんは声が低いままのことも多いので、音楽を使って話しかけたり、歌いかけたりする活動を取り入れて親子の関係をつなぐプログラムにしようと考えました。リトミックは子どもの成長に必要な要素をたくさん含んでいますが、お母さんもリラックスできる、そんな教室にしていこうと思いました。」
ありのままを表現できる場をつくる
高平さんが子どもたちとの関わりで最も大切にしたものは教育的な取り組みよりも、「子どもたちの自然な表現や心から音楽を楽しむ」ことだった。
日本の早期教育は加熱してきている。幼児期の体験が今後の成長に大きく左右されると言われ、インターネットやSNSの発信から子育てに不安になるお母さんが多いのだろう。0歳から活動できるリトミックも早期教育のひとつだが、高平さんの教室は教育的側面を大きく取り上げるのではなく、「音楽って楽しい!だから行きたい」そんな気軽に来られる場所にしたいと考えている。
キッズクラスにくる子どもたちは来年3歳児保育が始まるため、お母さんから離れてお友達との活動が中心だ。最初はお母さんから離れられなかった子どもたちも音楽に合わせて動物のまねをしたり、色探しをしたりと徐々に自分から動き出していく。夢中になって体を動かし、いつの間にかお母さんから離れて活動していた。
「教育が主目的ではありませんが、知育の要素も入れています。形や色、数字などさまざまなものに興味を持ってもらいたいという願いも込めています。他には、体を大きく動かす運動や指先の運動なども取り入れて、成長に合わせて少しずつ出来るきっかけにしてほしいです。」
ベビークラスでは赤ちゃんとお母さんとの関わりがプログラムの中心になる。音楽に合わせて体を触る、目と目を合わせるなどゆっくり関わる時間を提供している。また0歳の赤ちゃんにとってさまざまな出会いの場にしたいと考えている。教室では楽器の音が鳴ると泣き出してしまう赤ちゃんやヴァイオリンに興味津々でヴァイオリンの先生を追いかける赤ちゃんも見られた。
「赤ちゃんの耳って敏感なんです。お母さんたちにも伝えるのですが、ピアノやヴァイオリンの音を聞くと泣き出してしまう赤ちゃんが一定数います。2歳のお子さんで音を聞いて泣いてしまう姿は見ないので、赤ちゃんがはじめて聞く音にビックリするのかもしれません。そうした音との出会いも赤ちゃんには大切だと感じます。」
子どもたちの成長を共有できる場をつくる
高平さんの教室では子どもたちだけでなくお母さんにとってもリラックスできる場所にしたいという。教室は年齢別で分かれているため同じ境遇のお母さんたちが集まっている。高平さん自身の子育ての経験からお母さんたちには情報や子どもの成長を共有できる場所の必要性を感じていた。
「子どもの成長って家族にしかわからないことも多いです。できなかったことができるようになったときに母として誰かと共有したい!と強く思うし、子どもと一緒にいても大人ひとりだとやっぱり孤独感にさいなまれるんですよね。参加しているお母さん達と些細な変化も一緒に喜べる場にしたいですし、私自身もできるだけ成長した部分を伝えるようにしています。」
今後も月1回のリトミック教室は続けていくという。子どもたちが音楽を楽しみ、想いのままに表現することを大切にしながら取り組んでいく。そして、お母さんと一緒に子どもたちの成長を見守り続けていきたいと考えている。
「月1回は変わらず続けていきたいと思います。地域に根ざしたリトミック教室を続けていくことが目標で、生まれてきた子どもたちが幸せになれるお手伝いがしたいと思っています。音楽を気軽に楽しめる場所として定着していけたら嬉しいですね。」
◯高平のどかさんのリトミック教室申込フォーム
次回:2022年10月27日(木)
場所:みのお市民活動センター
時間:キッズクラス9:45〜10:45
(2019・2020年度生まれ)
ベビークラス10:50〜11:50
(2021・2022年度生まれ)
参加費:1,500円
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