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『アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング』 (2018) 感想(ネタバレあり)

 本日は2018年公開のコメディ映画『アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング』 (2018)の感想です。
 普段自分からは見ないジャンルの映画なんですが、声優の関口理咲さんが自身のラジオ番組でおすすめだと紹介されていたため興味を持ちました。実際に観て僕も楽しめたので、紹介しようと思います。

アンジャッシュ的なすれ違いコメディ

 自分の容姿に対するコンプレックスからネガティブ思考が強い主人公。そんな彼女が、ジムで運動中に転倒して頭を打ったことをきっかけに、『突然理想の美女になってしまった!なんてラッキー!』……と思い込んでしまう。

 客観的には元の姿のままなのに、理想の体型を手に入れたと思い込んでいる主人公は何事にも自信満々、超強気に行動していく。

 基本的に「私、超美人!」と思い込んでいる主人公と、「だってお前ブスじゃん!?」と見ている周囲との認識の違いからくる笑いが続きます。

例えば
モデル志望者ばかりが応募する大手ブランドの受付係に応募!面接官から遠回しに「ブスには向かない」と言われているのに、意に返さずに自己アピール連打。なんだかよくわからないが熱意が凄い、と採用に。

・クリーニング店にて同じ列で受付待ちしている冴えない男を「照れなくてもいいのよ」と逆ナン!→半ば無理やり聞き出したケータイの番号に「デートに誘うの躊躇する気持ちわかるから、私から誘ってあげるわ!」と即デートの約束取り付け。主人公のあまりの押しの強さにビビった相手はビクビクしながらもやってくる。

など大ハッスル!これ本当に容姿の変化だけの問題なのか?

 まるでアンジャッシュの傑作コントを見ているようなキレ。主人公役の女優エイミー・シューマーはハリウッドの人気コメディエンヌでもあるということで、納得のキャスティングです。

夜道で車がパンクした時、隣で一緒にいて欲しいのは……

 この映画が素敵なのは超ポジティブで生き生きとしている主人公の様子を見るうちに、「ブスじゃん」と内心でバカにしていた人たちが、彼女のその明るい魅力に気づかされていくところ。

 初デートの日、ノリと勢いでミスコンに参加し、持ち歌を熱唱して観客を盛り上げた主人公。優勝は逃すものの、ミスコン主催者は彼氏に対して「夜道でパンクした時一緒にいたいの間違いなく君の彼女だ」と絶賛します。

 ブランド会社での仕事も順調で、迷走している庶民向け新ブランドの企画に対して、自身の経験からくる庶民の抱える複雑なコンプレックスと経済事情を解説して、社内幹部からも一目置かれるように!

と順風満帆。見ている側も気分爽快でした。

一方で

・冴えない女同盟を組んでいた友人たちに「私はこんな姿になったけど、ずっとお友達のままよ」と謎の余裕(上から目線)

と以前からの友人とのズレも徐々に広がっていき、終盤前にしっぺ返しを食らうことも。

 終盤、再度頭を打って魔法が解けてしまった時、主人公は試練に直面しますが、その試練を乗り越えて、今度こそ『真のしあわせ』を見つけるのです。

まとめ

 本映画はジムに通ったり、ブランド品で着飾ったりといった『自分磨き』自体を否定している訳ではありません。
 ジムやブランドが自身を変えてくれるのではなく、自分が自分自身を変えるんだ!というポジティブなメッセージが強く伝わってきて、見て元気になれる作品でした。


余談:個人的に見ていて思い出した作品

 容姿に自信がなくネガティブだった主人公を見ていて、ふと連想したのが、山下卓『BLOODLINK』シリーズでした。
 登場人物の一人の言う「女の子は子供の頃から『自分の点数』を周囲に突きつけられて生きている」というセリフは、10年近くたっても未だに強く印象に残っています。

 最近読んだ作品では久保帯人『BURN THE WITCH』も連想しました。「おとぎ話なんかクソでしょ。(中略)魔法が途中で解けるのはそれが自分の力じゃないからよ」というニニーのセリフ。他者への依存を捨てて「魔法をかける側」になると宣言する姿が印象的でした。




 

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