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それでも、世界がつながることを諦めない。「炎越しの地球」の撮影に向けた若者達の挑戦-前編[都築則彦]
はじめまして。Earth Light Project実行委員会代表の都築則彦です。10月号と11月号の全2回で、僕たちが先日成功させた、人類史上初の映像撮影の挑戦とその映像に込められた想いについてお届けします。今号ではプロジェクトの企画構想から2回に及ぶ打ち上げの様子をお話します。
Earth Light Projectとは
点火装置を搭載したスペースバルーンを成層圏に打ち上げ、宇宙と地球を背景に炎を点灯・映像を撮影するプロジェクト。
国境のない宇宙・地球を背景に炎を点ける。この炎は、地球上のどんな分断に飲み込まれてもなお絶やさない、全ての人々に向けた「対話」の灯火だ。
2008年以降、国境を越えて走ることができなくなったオリンピック聖火に着想を得て、僕らの願いを込めた。
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企画構想からクラファンまでの道のり
企画構想の初期は、オリンピックスポンサーからの協賛金によって、本物のオリンピック聖火を宇宙に届けることを計画していた。
しかし、その目論見は外れることになる。
逆境に立たされる中、それでも夢を諦めることはできなかった。それどころか、このプロジェクトに込めてきたメッセージの重要性は、パンデミックを背景に、ますます高まっていくように感じた。当時テレビをつければ、アジア人差別やBlack Lives Matter、女性の自殺者数の増加といった暗いニュースばかりが流れていた。身の回りには、学園祭やスポーツの全国大会、留学といった「夢」を失った若者たちで溢れていた。
いろんな人に相談に行った。厳しい反応も多くいただいた。
「夢なんてとんでもない。不要不急の取り組みは、自粛するべきだ。」
このような言葉をかけられるたびに、むしろ使命感が増してきた。
目の裏に浮かぶのは、大学生活を共にしてきた仲間たちの笑顔。
僕たちの活動は、僕たちの青春は、不要不急なんかじゃない。
今こそ、希望の炎が必要だ。
周囲の学生団体を中心に声をかけ、クラウドファンディングを実施した。
クラファン時には、約150名の学生が集まり、人海戦術で支援者を集めた。
僕たちの手元にお金はなかったが、コロナによって当てどころを失った熱意があった。
その熱意によって徐々に共感を集め、最終的には当時の学生史上最高金額の1059万円の調達に成功した。
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見えてきた課題
資金調達後も困難は続いた。
技術開発は、資金調達後からが本番であった。中気球という大型の気球を安全に打ち上げ、回収する技術。その試みを認めてもらうための法申請。ガラス瓶の中を1気圧に保つ技術。地上から電気信号で炎を作るメカニズム。6kgの重量制限との戦い。どれもが、大変な困難であった。
また、「共生社会」のメッセージを込めていくための企画やブランディング、そして入れ替わりの激しい大学生を、長期間にわたってマネジメントすることなども重大な課題であった。
このような困難を乗り越えて、2021年6月26日(土)に、いよいよ打ち上げ本番を迎えた。
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第1回目の打ち上げと続く挑戦
第1回目の打ち上げの結果は、失敗に終わった。
炎の点灯を行う際に、電装基盤が損傷し、通信が途絶えてしまったのだ。
炎の着いていない燃焼器と、その背景にどこまでも広がる青い地球の映像が回収された。
炎はつかなかったが、撮影された映像のあまりの美しさに、多くのメンバーは喜んだ。
一方で、暗い表情を浮かべるメンバーがいた。燃焼器開発を担当したチームメンバーだ。
一見喜んでいるメンバーも、炎の点灯に失敗したことが心残りであることは共通していた。悔しさのあまり涙を流すメンバーもいた。
代表である自分が泣いてしまってはいけないと、僕は涙を堪えた。
このままでは、終われない。
Earth Light Projectは、2回目の打ち上げに向け、歩み始めた。
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2回目の打ち上げまでの道のりは長かった。
気象条件が合わず1年を超える延期となり、卒業していくメンバーもいた。
日数では435日、10回以上にわたる延期を経て、ついにリベンジの日を迎えた。
2022年9月4日(日)茨城県鹿島市。
青空の向こう側に消えていくバルーンを見送り、周囲に目を向けるとそれぞれが異なる表情をしていた。
打ち上げができたことに涙する人。
安堵感に包まれている人。
今度こそ炎が点灯するよう祈り続ける人。
バルーンは高度30,000mまで上昇した後、破裂し、茨城県の海岸から30kmの沖合に着水する予定だ。
着水地点はシミュレーションによってある程度わかっており、着水地点の近辺にあらかじめ船を出している。
船から地上への連絡は、GPSを通して短文のやりとりで行われる。
もし機体の回収に失敗すれば、撮影した映像を見ることは不可能となる。
また、十分に対策は練ってきたものの、着水時の衝撃で、何らかの危機が破損する可能性もある。
緊張の時間が続く。打ち上げを行い、2時間が経過した頃。
船からメッセージが届く。
かいしゅう せいこう
きたい はそんなし
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機体回収後。炎天下の公園。
成層圏から海に着水した機体を船で回収し、いよいよ映像を確認する時。
モニターをみんなで囲み、固唾を飲んで見つめていた。
炎が点火した瞬間。
ざわめきと共に、ガラス瓶の向こう側にうっすら灯る、結露でほとんど見えない炎。一瞬の落胆。
すると、この小さな炎の力で、少しずつ結露が消えていく。
10分間の点灯を経て、最後には結露は完全に消滅し、綺麗な、小さくも力強い炎がひとつ。
そしてその炎の向こう側に、雄大で美しい「国境のない地球」の姿が見えた。
圧倒的な地球の前に、小さな意志ある炎。
この炎はまさに、僕たちの姿ではないか。
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ふと我に返って周囲を見渡すと、涙を流しながら、喜びを分かち合う仲間たちがいた。そこには、自信と安堵に満ち溢れた、晴れやかな笑顔があった。
そんな仲間たちを見た時、僕も涙が止まらなくなってしまい、今までの苦労が、一気に報われた気持ちになった。
今度は悔し涙ではない。
隠す必要のある涙でもない。
みんなで分かち合える、喜びの涙だった。
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今後の展開
Earth Light Projectには、これまで、37の大学・高校から若者が集まり活動を続けてきた。2022年10月現在のslackのメンバー数は、279名。
数多くの若者が、先輩から後輩へとバトンを渡し、代を超えて走り続けてきた。
そしてここからは、「炎越しの地球」の映像を「共生社会のシンボル」にするための取り組みが始まる。
映像を活用したドキュメンタリーの作成。
次世代の子供達への、夢を届ける展示活動。
バーチャル空間を活用した、「共生社会」を目指す世界の若者の会議。
Earth Light Projectの第2章が、ここから、始まる。
11月号では、プロジェクトの転機となるようなエピソードをピックアップしてお届けします。次号にもご注目ください!
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都築則彦(Earth Light Project実行委員会代表)
【ボランティアを、魅力的な社会参加の手段へ】牛乳配達を営む家庭に生まれ、大きな世界を夢見てオリンピック・パラリンピックの最前線へ。2014年にオリンピック・パラリンピックへの参画の幅を広げることを目的に「学生団体おりがみ」を設立。以降、ボランティア文化の革新を目指して「NPO法人おりがみ」を設立し、理事長を務める。有限会社トウチク代表取締役。全国学生ボランティアフォーラム発起人。
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Earth Light Project https://twitter.com/ELPJ2021
NPO法人おりがみ https://origami-vol.or.jp/
note 都築則彦( NPO法人おりがみ理事長 / Earth Light Project代表) https://note.com/norihiko_2020/