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スターバックの本棚・「手のひらの音符」

藤岡陽子さんの作品は、普段は光のあたらない言わば縁の下の力持ちに光を当てて描かれている作品が多い。

その背景には、スポ-ツ新聞の記者をやめるきっかけとなったある日の出来事がある。

当時優勝したチ-ム立命館大学のアメリカンフットボールのクウオーターバックの東野君。

「天才クウオーターバックの東野を取材に行け」と言われ、行ったところ東野君から、「今の自分があるのは、いつも練習相手をしてくれていた先輩のおかげなんです。自分が入ったためにレギュラーからは、外れてしまったのですが、その先輩がいなければ今の自分はありえない。自分にとって恩師であり一番なので先輩を取材して下さい。」と言われ、その先輩を取材したという。

取材に行くと、すごくいい子で、その子がいなかったら東野君はここまでなれなかったであろう、書きたいという気持ちになられたそうだ。

ところが、デスクに記事を渡すと激怒されて「何を書いてるんや!ここは、東野やろ!東野を書かなあかんやないか!何で名前も知られていない人間をメインで書くんや!」と叱られたという。

その時、スポーツ新聞の記者ではヒーローしか書けない。

ヒーローやメダルをとった選手も夢や勇気を与えるけれども自分はその先輩を書きたかった、ライトは浴びていなくても一生懸命に、ひたすら努力を積み重ねている人間も書きたい!スポーツ新聞ではそれは書けないと思いやめることを決意されたそうです。

手のひらの音符書影

藤岡陽子著「てのひらの音符」新潮社

「不器用でもいい、間違いでもいい。ひたむきな全力が、私を強くした。バブルから現在へ、時を経ても消えない本物の愛情とは何かを問いかける、瑞々しい長編小説。」自分の中の情熱のありかに気がつけたとき、人はこんなにも強くなれる――。そんな真っ向勝負のテーマに挑んだ作品。

「 大切な人たちからもらった本物の愛情は、一生消えずに生きる力になる。あきらめそう、へこたれそうになった時、もう一度立ち上がる力になる。私はそういう小説を書いていきたい。」・・・・・ 藤岡陽子

宇宙メルマガ「THE VOYAGE」2018.10月号掲載

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二村知子 (ふたむら ともこ)
隆祥館書店店主 井村雅代コーチ(当時)に師事し、シンクロナイズドスイミングを始め、現役時代はチーム競技で2年連続日本1位、日本代表として2年連続世界第3位に。現役引退後、隆祥館書店に入社。2011年から「作家と読者の集い」と称したト-クイベントを開催、2016年からは「ママと赤ちゃんのための集い場」を毎月開き、2019年4月からは、宝上真弓先生と子育てに悩む親御さんのために絵本選書の無料サ-ビス、2020年6月より、お客様からのリクエストを受け一万円選書を始めている。

隆祥館書店:http://atta2.weblogs.jp/ryushokan/

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