【スターバックの本棚】「コソボ 苦闘する新米国家 ユーゴサッカー最後の代表チームと臓器密売の現場を追う」
著者の木村元彦さんは、『オシムの言葉』を書かれた方でもあります。元日本代表監督のオシムさんが昨年、お亡くなりになりました。サッカー監督でありながら、平和と民族の融和を願っておられたオシムさんの追悼を込めてこの本をお薦めしたいと思います。
オシムさんは、ユーゴスラビアという多民族国家の代表監督もされていたのですが、その国が崩壊を始めたときにサッカーを通じて統一を考えておられた方です。私はそれが、中国の代表監督をされたいた恩師の井村雅代先生に繋がってしまうのです。
井村先生もシンクロ(現アースティスティック・スイミング)を通じて多民族のチームをまとめていかれました。
この本にはオシムさんが代表監督をされていたユーゴスラビアの最後の独立国、のコソボの情勢が描かれています。
今年の2月1日でコソボ独立15周年でした。
覚えている方もおられるかおられる方もいるかと思いますが、コソボは15年前にNATO軍、主にアメリカ軍がユーゴスラビアを空爆してできた国です。
国連を無視して行われたイラクやアフガニスタンへのアメリア軍の攻撃については大きく問題視されましたし、検証しようという動きがあります。でもこのコソボについてはまったく、そう言った動きはありませんでした。
その15年の空白を埋める本です。NATO軍の空爆で平和になったかのように一切、報道はされていないのですが、実は、いろんな人道破綻が起こっていたのです。
代表的なのが、コソボ政府の関与によって少数民族のひとたちが、約3000人、拉致されて臓器密売の被害者になっていたということ。
木村さんはこの臓器を摘出した山の中の現場まで行って取材されているのです。
プーチンのロシアがウクライナを攻めて酷い侵略戦争が起こっているわけですが、実はこのNATO軍のコソボ空爆が最初に世界の秩序を乱したという専門家の方もおられます。
世界で起きていることはすべて繋がっているとあらためて思いました。
遠い国の話ですが、日本の読者に向けて、やはりサッカーが切り口になって登場しています。
コソボのサッカー代表選手たちの苦悩から、あの国が何に悩んでいるのか、伝わって来ました。ウクライナやミャンマーのことを知るためにもぜひ読んで頂きたい本です。
隆祥館書店:二村 知子 | Tomoko Futamura
隆祥館書店店主 井村雅代コーチ(当時)に師事し、シンクロナイズドスイミングを始め、現役時代はチーム競技で2年連続日本1位、日本代表として2年連続世界第3位に。現役引退後、隆祥館書店に入社。2011年から「作家と読者の集い」と称したト-クイベントを開催、2016年からは「ママと赤ちゃんのための集い場」を毎月開き、2019年4月からは、宝上真弓先生と子育てに悩む親御さんのために絵本選書の無料サ-ビス、2020年6月より、お客様からのリクエストを受け一万円選書を始めている。
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