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【スターバックの本棚】What is Life? Erwin Schrödinger(和訳:生命とは何か: 物理的にみた生細胞)

What is Life? Erwin Schrödinger
和訳:生命とは何か: 物理的にみた生細胞 /岩波文庫
シュレーディンガー(著)岡 小天・鎮目恭夫(訳)

命とは何か。心とは何か。
間違いなくこれらはこの宇宙で究極の謎だ。科学、哲学、宗教、分野を問わず人が最終的に行き着く問いでもある。

本書では、量子力学の大家で物理学者シュレーディンガーが物理学の知見から出発し、彼の類稀な知性を駆使して、「命とは何か」「心とは何か」という人類究極の問いに挑む。ワトソンとクリックによるDNA二重らせん構造の発見の10年も前にDNAの本質(非反復的な結晶)を予見したのはさすがとしか言いようがない。実際、ワトソンとクリックは本書に大きな影響を受けたそうだ。生命は「負のエントロピー」を摂取するという発想もその後の研究者に大きな影響を与えている。もちろん1940年代に書かれた本であるゆえ、現代では否定されている点や首をかしげるような議論もあるが、急速な生命科学の進歩の中で80年近く経っても読むに耐える先見性の高さは驚く他ない。

この本はまた、物理学者が生物学や心理学といった「お門違い」の分野に踏み込んだものだ。その「お門違い」の本がワトソンとクリックによる世紀の大発見に寄与したことを考えると、分野に囚われず議論をすること、そして「お門違い」の声にもちゃんと耳を傾けることがいかに大切かを思い知らされる。

小野雅裕
技術者・作家。NASAジェット推進研究所で火星ローバーの自律化などの研究開発を行う。作家としても活動。宇宙探査の過去・現在・未来を壮大なスケールで描いた『宇宙に命はあるのか』は5万部のベストセラーに。2014年には自身の留学体験を綴った『宇宙を目指して海を渡る』を出版。
ロサンゼルス在住。阪神ファン。ミーちゃんのパパ。好物はたくあんだったが、塩分を控えるために現在節制中。

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