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【スタ-バックの本棚】漫画『はだしのゲン』中沢啓治 著/汐文社

中沢啓治 著 漫画「はだしのゲン」汐文社 発刊

広島市教育委員会は、現在、小学3年生の平和教育の教材に採用している「はだしのゲン」について「漫画の一部では被爆の実相が子どもたちに伝わりにくい」などとして、2023年度から使用せず、別の内容に差し替えることを決めました。

差し替えられた「いわたくんちのおばあちゃん」も素晴らしい絵本ですが、漫画「はだしのゲン」も残すべき作品です。

漫画には、作者の中沢啓治さんが実際に体験したこと、見たことを「ゲン」の目を通して描かれています。言論統制などで民衆を侵略戦争に動員し、なぜ原爆投下されたのかという歴史的な社会背景までも理解できるものです。

検証した有識者の議論で、「児童の生活実態に合わない」などと指摘されていましたが、戦時下の暮らしと現在の生活とは異なっていて当たり前なのです。「ゲンが、コイを盗む描写は誤解を与える」ともありましたが、身重の母親に食べさせなければと思うまでに追い込まれた当時の子どもの思い、苦しい家庭の実態に思いを馳せることができるのです。

また、ゲンの父親が家屋の下敷きになり、火の手が迫る中で、ゲンに逃げるように迫る場面も、教材では使われなくなるそうです。そのシーンを中沢啓治さんは、涙を流して描かれていたそうです。
「はだしのゲン」はこれまでに、世界で24の言語で翻訳され、戦争や原爆の悲惨さを伝えてきました。にもかかわらず、平和教育の教材から削除したことに、強く抗議する意味でもこの本をお薦めしたいです。

隆祥館書店:二村 知子 | Tomoko Futamura
隆祥館書店店主 井村雅代コーチ(当時)に師事し、シンクロナイズドスイミングを始め、現役時代はチーム競技で2年連続日本1位、日本代表として2年連続世界第3位に。現役引退後、隆祥館書店に入社。2011年から「作家と読者の集い」と称したト-クイベントを開催、2016年からは「ママと赤ちゃんのための集い場」を毎月開き、2019年4月からは、宝上真弓先生と子育てに悩む親御さんのために絵本選書の無料サ-ビス、2020年6月より、お客様からのリクエストを受け一万円選書を始めている。

隆祥館書店:https://ryushokanbook.com

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