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おとうふやさん

 物心つきはじめたころ、豆腐屋という存在が不思議でならなかった。おとうふってばもめんときぬくらいなのに、それだけでだいじょうぶなのかなあ――。小さな不安がポツリと浮かび、チクリと胸が痛くなる。

 豆腐と油揚げの味噌汁で口をしめらせ、納豆に醤油をピッとさす。箸先でぐるぐるかき混ぜながら、不意にそんな遠い記憶がよみがえってきた。

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