noteで何度か書いたが自分はほんの少しだけ依存性が高い女子に好まれる傾向がある。理由は何故かは分からない。ただ過去の記憶を思い返すと中々パンチの効いた女子達が私の周りを取り巻いていた。梅雨の季節になると思い出す話が一つある。私が20歳の成人式を終えた年の6月だ。ほんの少し前、成人式を迎えた1月に小学校の同窓会でマホちゃんと言う女子と再会した。飲み会もそこそこ盛り上がり、帰り際にマホちゃんに連絡先を聞かれた。私は二つ返事で了承し赤外線通信(死語)をしたのを覚えている。私からしたら他の同級生の中の一人として連絡先を交換したつもりだったがマホちゃんは違う解釈をしていたようだ。
その日から頻繁にメールが送られてくる。
「寂しい」「仕事が辛いから話を聞いて欲しい」「今日怪雨くんを見たよ。途中で見失なったけど」など何だか最初から全力投球、完全試合で勝利をもぎ取る事を目標としたエースの様なメールの内容だった。さすがの自分もこの愛の重さにすぐ気づき華麗にスルーを決め込む事を心に誓う。メールが来るたび悲しいかな存在しない彼女を口実にして逃げる日々。
そしてある大雨の晩。日が変わる時間にマホちゃんから電話が来た。私は自宅の自室で携帯をいじっていたため、つい通話ボタンを押してしまった。「はい...怪雨です」。すると電話越しにトタンを叩く大きな雨音が聞こえた。そしてマホちゃんのか細い声が私の耳に入る「怪雨くん?家にいるかな。ちょっと悩み事があるから、あなたの家行って良い?」
こんな夜中に女子が男の家に来るなど本来なら絶好の下心を達成するチャンスだ。しかし煩悩を恐怖が駆逐する。ここで家に入れてしまった日にはあちらの思うつぼになる。私は返す刀でこう返事をした「ごめん^^,今彼女の家にいて...もうすぐ寝るし」するとマホちゃんは無言になる「.......」その間も雨音がトタンをリズム良くたたくのが聞こえる。
マホちゃんは「そう..なら分かった」と答えると電話を切った。私は何とか乗り切れたと背筋に汗をかきながらも今後の乗り切り方に限界を感じてきた。そうして私は長い夜を深夜バラエティ番組を見ながら心ここにあらずで2時間ほどを過ごしたのだ。視聴する番組もおわり寝る準備をしようとすると一通のメールが来た。名前欄を見るとマホちゃんである。げんなりしながらメールを開く。一言「うそつき」とだけだ。
私の頭中は???が巡り巡る。何だかよく分からない不安を抱え電気を消しベッドに入る。目を開け天井を見つめる。トントントンとリズム良く、家に併設されている倉庫のトタンが雨音によりたたかれている。私はふっと「あれ..さっきの電話で聞こえた雨音がトタンを叩く音と似てる」と気づいた。恐怖と緊張を抑えつつ、自室2階窓のカーテンを少し開き窓を見る。すると自宅敷地内の倉庫に何やら人影が見える。女の影だ。マホちゃんだと私は理解した。
電話を切った後、大雨の中、2時間近く倉庫のトタン屋根の下で私の部屋を眺めていたのだ。不法侵入だろう!そう文句を言う気力もなく私は薄い羽毛布団に包まり緊張感ある夜を明かした。翌日何もなかった様にマホちゃんからメールが来た。そして一枚だけ画像が添付されていた。画像を開くと暗闇の中、インカメで撮られたマホちゃんらしき画像が映っていた。背景にはうっすら自宅の倉庫のドアが映っている。私は考えるのをやめた。
サポートして頂けたら、今後の創作活動の励みになります!