入り口にて
ある真夏の夜。司さんは友人を誘い、自宅近くの公園のベンチで酒を飲んでいた。
日頃の鬱憤もあり酒は進み、話は盛り上がる。途中、酒が無くなる。
目の前にコンビニがある。
「酒を買い足してくる」司さんは飲み干した缶ビールを地面に置き、
煌々と光るコンビニへ千鳥足で向かった。
ガラス製の自動扉の方へゆっくりと歩いていくと、天井に何かが吊るされていた。
それが扉の上部を覆ってていることに気づく。
一目でコンビニのユニフォームだと分かった。それは不思議にも激しく揺れ動いている。
そして司さんはそれに近づく程、妙な胸騒ぎを感じた。この短時間で酔いも冷めてきた。(おかしいことはない)そう言い聞かせ、ガラス扉直前まで辿り着いた。
扉を握りしめ開けようとすると、ガラス越しにユニフォームとスラックスを履いた足元が見えた。先程以上に激しく揺れ、司さんの入店を拒むようだ。
ガラスの隙間からレジが見える。店員はそれに気づかないのか、
平然とレジに立ち続けている。彼はすぐ踵を返し、酒も買わずに友人の元へ戻った。
それからすぐに、そのコンビニは理由もわからず潰れてしまったそうだ。
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