響く笑い声
栞里さんが高校へ通っていた時の出来事。クラスに由香里という同級生がいた。
由香里はとても意地の悪い人間だった。クラスメイトを虐めては、目標を変えていく。
由香里の虐めが原因で、不登校になったクラスメイトもいた。
同じクラスの女の子だった。栞里さんもいつ自分が虐めの餌食になるか。
そんな心配をしていたそうだ。けれど由香里は急病で他界してしまう。
内心皆、ほっとしただろう。
クラスメイトのよしみで、彼女の葬儀に参加したある日のこと。
参列者は由香里の親戚と家族。そして数人のクラスメイトのみだった。
近親者の流す涙を見ても、何処か共感出来ない。それは他のクラスメイトも同じだ。
焼香のため、静かに列に並ぶ。すると静まり返る斎場に声が響いた。
それは若い女の笑い声だ。「きゃはははははははっ!あはははははははっ!」
甲高く、そして弾けるように楽しげな笑い声。
(何て不謹慎なんだ)栞里さんは場にそぐわぬ無神経な笑い声に驚いた。
クラスメイトや由香里の近親者達も怪訝な顔で首見渡すが、誰一人笑っていない。
だが笑い声は変わらず鳴り響く。
栞里さんはふと何処か聞き覚えのある笑い声だと感じる。
しかし誰かはわからない。
声は次第に萎み、「ざまぁみろ...」と呟き収まった。
そこにいた者全員、それを聞いて表情が凍ったそうだ。
それからしばらくして、由香里に虐められていたクラスメイトが、
学校に登校するようになった。
彼女は笑顔を取り戻し、教室で笑い声をあげる。
「きゃはははははははっ!あはははははははっ!」
その笑い声は栞里さんがあの日、斎場で聞いたものと瓜二つだったそうだ。
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