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【ぺぺいけ備忘録】加藤さんバイトする

 ある日、公衆電話から私の携帯に一本の着信が入った。既にお分かりの方もいるかと思う。そうだ、加藤さんの着信である。しかしタイミングが合わず残念ながら電話を取る事が出来なかった。かけ直す事が出来ない。何故なら発信先が公衆電話だからだ。加藤さんがもう一度かけ直すのを待つしかないのである。すると再度公衆電話から電話が来た。今度はテレクラばりに逃す事なく素早く着信ボタンを押した。そして携帯電話を耳に当てると、しゃがれ声で加藤さんがこう話しかけてきた。「ぺぺいけ!一緒にプールバイトをしないか??」私は即答出来なかった。時期は七月、大学もテストが終了し暇な時間を持て余す。なのに何故二つ返事で答える事が出来なかったのか?

それは一緒に面接を受けるのはリスクがあるからだ。見た目はちっさい色黒ロナウジーニョ、中身はキャバクラ風俗好きの「ナイス害」である。そもそも読み書きも日本語も危うい加藤さんが履歴書を書けるのか。そこも疑問だ。そんな太宰治も裸足で逃げ回るような人間失格男と面接に行った日にはどうなるか?確実に落ちる。加えて出禁になりかねないのである。しかし私は暇もありお金も欲しい。そして出会いも欲しい。プールのお客さん(ギャル達)や可愛いスタッフと最高のアバンチュールがあるかもしれない。

最中必死に加藤さんは何やら説明している。しかし私の頭の中はその欲望が駆け巡り彼の話など耳から全て出ていくのである。まさに情報のオーバーフロウである。そして私は悩んだ結果、一度持ち帰らせて下さいと加藤さんに伝えた。何故ならこのケース初めてではないのだ。

彼には以前もバイトに誘われた事がある。
地元でも有名な大きなゲームセンター・パイナップルベリーと言うお店だった。パイナップルなのかベリーなのかはっきりして欲しい物である。話は逸れたが、その際にバイトを探していると加藤さんに伝えると「俺が今働いているゲームセンター募集してるから来いよ!店長に伝えとく」と大船に乗れと言わんばかりの大見栄をきられたが結果は加藤の知り合いと言うだけで面接にも通らず、リーマンショック就職氷河期も真っ青な結末だったのだ。

そんな辛い記憶が蘇るが加藤さんの三国志・劉備玄徳の三顧の礼を彷彿とする熱烈な勧誘を受け私は一緒に面接へ馳せ参じる事となった。

続く

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