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札幌の時計台ばりのガッカリ映画。高知だからはりまや橋か。『鬼龍院花子の生涯』ネタバレ感想文

夏目雅子が「なめたらいかんぜよ!」と啖呵を切るので有名な1981年の映画。
5年前くらいに(初めて)観て、そんなに好きでもないのに2度目の鑑賞。
なんだってこんな映画をまた観ちまったんだ?

実を言うと、ケーブルテレビをつけてたら放映が始まって、なんとなく観始めたら面白くてつい最後まで観てしまったパターン。なんだ面白かったんじゃねーか。正確には夫婦で観ていて、ヨメさんの方が面白がって観ていたんだけど。
たしかに以前最初に観た時も「全体としては飽きずに面白く観られた」と書いてましたけどね。なんだやっぱり面白いんじゃないか。

なぜこの映画を思わず再鑑賞してしまったのか?

一つの要因は、この日の夕方「山口百恵ラストコンサート」をNHKで観てしまったことです。ぶっちゃけ、小学生の頃にリアルタイムでTV放送を見てるんですが、小学生に山口百恵の魅力は分からんかったな。実は夏目雅子も同様。大人になってというかオジサンになってというか様々な女性を見てきたからというか、今やっと山口百恵や夏目雅子の魅力に気付いたんです。

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もう一つの要因。夏目雅子の子供時代を演じている子役が仙道敦子なのですが、めっちゃ可愛いの。劇中「利発そうな子じゃ」と言ってますが、本当に利発そう。緒形直人はいいヨメもらったな。

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それと、嫌いな五社英雄の演出がこの日の体調には合ったんですね、きっと。
キャッチーでケレン味たっぷりの演出が面白かったんです。仲代達矢と岩下志麻登場シーンなんか「ヨッ!待ってました!」って言いたくなるくらい、もったいぶった演出で楽しかったんです。

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(なぜ五社英雄が嫌いかって?女に啖呵切らせればいいと思ってる節があるくせに『緋牡丹博徒』ほどの美学がないんですよ。どっちかって言うとゲスに感じるんです)

夭逝した夏目雅子の代表作として余りにも有名な作品なのですが、正直言って、これが夏目雅子の代表作だと言われるのは気の毒な気がします。
何故かって?
札幌の時計台、長崎のオランダ坂、いや、土佐の高知のはりまや橋に負けず劣らずガッカリ物だと思うんですよ。てゆーか、はりまや橋って4つもあるんだって!?

そもそも、この映画の主役は鬼龍院花子じゃないんです。最初にクレジットされるのは仲代達矢ですしね。
この映画は鬼政こと仲代達矢と夏目雅子の父娘の物語なのです。
そしてそもそも、夏目雅子は鬼龍院花子じゃないんですよ。最初観た時はビックリでした。
ちなみにこれが鬼龍院花子。誰?

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さらにあの有名な「なめたらいかんぜよ!」。任侠映画の法則で言えば、敵陣に乗り込んで切る啖呵ですよ。
ところがこれ、カタギの素人さん(しかも義父)を威嚇してるだけなんですよ。ショボッ!

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実はこの台詞、夏目雅子のアドリブだったらしく、今ではそれも美談のように言われるけど、私は失敗だと思うんです。
「鬼政の娘じゃき」という台詞だけで、その凄みでゾクゾクっとしてカタギの素人さんが黙ってしまうのが本来あるべき姿じゃないかな?「なめたらあかんぜよ!」ってただの説明台詞になっちゃう。そもそもカタギ相手に怒鳴っちゃいかんぜよ。

もしかすると面白かった理由は宮尾登美子の原作のおかげかとも思ったのですが、たぶん原作は全然違うと思うのです(未読なので分かりませんが)。
だってこれ、何でもヤクザ映画にしちゃう豪腕脚本家・高田宏治フォーマットだもん。

そういうわけで夏目雅子の代表作としてはどうかと思うのです。じゃあ彼女の代表作って何なんだろう?
『時代屋の女房』?

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えー、森崎東好きじゃないんだよなあ。

『魚影の群れ』?

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えー、相米慎二嫌いなんだよな。

『瀬戸内少年野球団』?

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えー、篠田正浩大嫌いなんだよ。

そう考えると夏目雅子は作品に恵まれてないな。
一番いいのはTV「野々村病院物語」じゃないの?

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(2021.01.30 日本映画専門チャンネルにて鑑賞 ★★★☆☆)

監督:五社英雄/1981年 東映