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私の映画鑑賞録2021(ネタバレ感想文)

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2021年新作映画のマイベストは『トムボーイ』。いや、日本公開が今年だっただけで本当は2011年の映画だけど。
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2021年9月の記事一覧

映画『君は永遠にそいつらより若い』 (ネタバレ感想文 )倒れた自転車を起こすまでの物語

時子が主演だというので三男ばりにはりきって映画館に足を運びましたよ。ああ、朝ドラ「ひよっこ」の話をしています。すいません。そんな有村架純とコンビニの駐車場でビール飲みながら人生相談してたのが奈緒ですよ。ああ、ドラマ「姉ちゃんの恋人」の話をしています。すいません。 そんなこんなで佐久間由衣と奈緒というだけで、何の事前情報も持たずに映画館へ足を運びました。 正直な感想を言うと、これ、女性監督(あるいは女性脚本家)だったら全然違ったと思うんです。 男だ女だ言うと叱られる時代です

映画『丹下左膳餘話 百萬両の壺』 (ネタバレ感想文 )戦前制作の最高峰コメディ

日本最高峰のコメディ。喜劇ではなくて「コメディ」。すごくユルい映画。 何度も観ている大好きな奇跡の一作。今回は「4Kデジタル復元・最長版(2Kダウンコンバート版)」をCSで鑑賞。 (以下、以前の感想をベースにnote用にリライトしました) まず、noteじゃなきゃ書かないような基礎情報を書きます。 この映画の制作は1935年(昭和10年)。戦前の映画です。 監督の山中貞雄は、監督作『人情紙風船』(37年)の封切日に召集令状が届き、出征先の中国で病死します。享年28歳。 現

映画『座頭市物語』 (ネタバレ感想文 )命が重い時代劇。市は超人ではない。

今回の「午前十時の映画祭」で最も楽しみにしていた『座頭市物語(4Kデジタル修復版)』。 しかし緊急事態宣言による映画館の時短営業のためなのか、「午前十時までの映画祭」じゃねーか!ってくらい開始時間が早くて心折れかけてたんですが、気合い入れて休日に早起きしましたよ。 結果、15年ぶり再鑑賞&初のスクリーン鑑賞で評価爆上げ。なんて素晴らしい映画なんだろう。早起きは三文の得。 私、シリーズ物ってほとんど観ないんです。 なんか、常連客ばかりのスナックみたいで敷居が高くて嫌。 な

映画『Summer of 85』 (ネタバレ感想文 )オゾンの「太陽がいっぱい」

宣伝的には、「夏の恋は肌見せ勝負」でお馴染み『君の名前で僕を呼んで』(17年)的な印象ですが、私は『太陽がいっぱい』(1960年)だと思うんです。 そう思ったきっかけはヨットですが、スーパー16mmフィルムで撮影したという映像もアンリ・ドカエが撮ったザラついた画面を想起させます。 『太陽がいっぱい』って、同性愛的な描写や要素は一切ないんですが、淀川長治先生はその匂いを嗅ぎ取り「これは同性愛的願望を描いた映画だ」と喝破していました。まあ、ヨドチョーさん自身がそうだったから敏感

映画『ヒルコ/妖怪ハンター』 (ネタバレ感想文 )夏の終わり、恋の終わり

私は長年「光石研を探せ!」をやってるんですが、この映画にも出ていたか。今やすっかり有名バイプレイヤーですが、長年チョイ役マスターでしたからね。ひゃー、余貴美子も出てるよ。 自主映画『鉄男』(89年)で単館映画館の興行記録を塗り替え、己の腕一本で世界に踏み出した塚本晋也の初商業映画。30年の時を経てレストア&リマスター。 あくまで30年記念だそうで、『妖怪大戦争 ガーディアンズ』便乗でも『キネマの神様』沢田研二便乗でもなかったらしい。何にせよ、VHSでしか観たことなかったので