マガジンのカバー画像

私の映画鑑賞録2021(ネタバレ感想文)

80
2021年新作映画のマイベストは『トムボーイ』。いや、日本公開が今年だっただけで本当は2011年の映画だけど。
運営しているクリエイター

2021年2月の記事一覧

映画『マーメイド・イン・パリ』 綺麗だけど平板な絵本(ネタバレ感想文 )

最初に宣言しておきます。今回は褒められません。この映画が好きな方は読まない方がいいと思います。 若気の至りで辛口批評がカッコイイなんて思ってた過去もありましたけど、基本は楽しみに映画を観に行ってるわけですから、なるべく良い所を見つけようとしているんです。粗探しに映画館に足を運んでいるわけじゃない。 ただ、映画は料理みたいなもので、人によって好みがある。そしてこの映画は私の口には合わなかった。 誤解の無いように言っときますが、本来この手のフィクションは大好物です。『アメリ』

映画『わたしの叔父さん』広い世界と自分の役割(ネタバレ感想文 )

2019年のデンマーク映画。いい映画でした。 デンマーク映画って馴染みが薄いかもしれませんが、私は世界最高峰のイカレ監督ラース・フォン・トリアーをよく観るんで、意外と観てるんです。デンマーク映画だから観てるわけじゃなくて、結果としてデンマーク映画だっただけですけどね。 ラースは別として、デンマーク映画で有名なのは『バベットの晩餐会』(87年)ですかね。あと私はクリストファー・ボーという監督の『恋に落ちる確率』(03年)が好きだった。また観たいな。『獣は月夜に夢を見る』(1

映画『地獄の警備員』 森のくまさんトビー・フーパー風。(ネタバレ感想文 )

ある日 オフィスの中 警備員さんに出会った バブル花咲く商社で 警備員さんに出会った その後、警備員さんがドゴドゴ追いかけてきて、お嬢さんがスタコラサッサと逃げるお話です。落とし物が白い貝殻の小さなイヤリングだったかどうかは別として。 バブル末期の1992年(平成4年)、黒沢清37歳頃の作品。 ディレカン倒産で抵当に入ってたんだか著作権がおかしなことになっていたんだかで(パッケージ化はされているけど)塩漬けになっていたそうです。 『スパイの妻』ヴェネツィア銀獅子賞のご褒美

映画『トキワ荘の青春』時の流れを痛感(ネタバレ感想文)

デジタルリマスター版で再鑑賞。1996年の公開当時に観て以来だから25年ぶり。約20本の映画を遺し2008年に59歳で他界した市川準監督、48歳頃の作品。市川準はもっともっと評価されていい名匠だと思うんですけどね。 主演は本木雅弘ことモッくん(<逆だ)。 他の出演は、今でこそ生瀬だ古田新太だ阿部サダヲだと思うけど、当時は無名。桃井かおりや時任三郎は別として、漫画家仲間で一番有名な出演者は柳ユーレイだったんじゃなかろうか?それもトキワ荘の住人じゃないし。きたろうは当時どうだっ

映画『子猫をお願い』ネタバレ感想文 ー 何処かいい居場所はないか子猫チャン

「映画は時代も国境も超えない」と言ったのは、たしか犬好きの押井守だったと思いますが、私も同意見です。20年も昔の韓国の、しかも女子の状況なんか分かるわけがない。 この映画、「ペ・ドゥナをお願い」と銘打った早稲田松竹2本立てで観たのですが、併映は『ほえる犬は噛まない』(00年)でした。 この同時期の映画を続けて観て、ペ・ドゥナの魅力を再認識した以外に分かったことと言えば、この時期の韓国社会は閉塞感に包まれていたんだなあということです。 『ほえる犬は噛まない』の台詞で「戦後」

映画『ほえる犬は噛まない』ネタバレ感想文 ー ペ・ドゥナは噛みつかない

2000年の韓国映画。監督はポン・ジュノ。お目当てはペ・ドゥナ。 ウチの夫婦はペ・ドゥナ好きなんですが、山下敦弘『リンダ リンダ リンダ』(05年)、是枝裕和『空気人形』(09年)以降なもので、初期作品を観てませんでした。パク・チャヌク好きだから『復讐者に憐れみを』(02年)は観てましたけど。ちなみに「ウチの夫婦」と書きましたが、主に「ウチの妻が」です。君とこサイ飼うてんのか。 そしたら早稲田松竹で「ペ・ドゥナをお願い」と銘打った『子猫をお願い』との2本立て上映があったので

映画『すばらしき世界』ネタバレ感想文 ー 文字から生身への物語

日本映画界きっての才媛=西川美和。頭が良すぎて蛇に足を描くようなこともするけど、とにかく巧い。惚れ惚れするほど巧い。巧すぎて鼻につく(笑)。 前作『永い言い訳』の冒頭シーンなんか完璧すぎて、私は映画史上に残すべき完成度の高さだと思ってるくらいです。 この映画のファーストショットも「これしかない!」って画面(えづら)。しかも今回は笠松カメラ! 建物内から見える窓外。これは、主人公から見た「世界」なのです。 映画のラストは真逆のショットで終わります。主人公が住んでいたアパートの

俺のニコルソンはハードボイルド。映画『チャイナタウン』ネタバレ感想文。

1974年のアメリカ映画。監督はロマン・ポランスキー。タランティーノ『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のディカプリオの隣人ね。 主演は若きジャック・ニコルソン。共演は『俺たちに明日はない』で蜂の巣になったはずのフェイ・ダナウェイとハードボイルドの古典『マルタの鷹』の監督ジョン・ヒューストン。 私がこの映画を観るのは2004年以来2度目。 ジャック・ニコルソンは『シャイニング』や『バットマン』のジョーカーといった個性的な役柄が印象的ですが、私はこの孤高の探偵ジェ

活動写真にちがいない。映画『天国にちがいない』ネタバレ感想文

イスラエル国籍パレスチナ人のエリア・スレイマン監督、脚本、主演。 私はオムニバス映画『それぞれのシネマ』で短編を1つ観たことがある程度。全然覚えていないけど自分のメモでは面白かったらしい。 その喜劇性はチャップリンやバスター・キートンに例えられることが多いようですが、私はジャック・タチだと思うんです。 チャップリンやキートンは自身が騒動のタネですが、この映画のエリア・スレイマンは、ジャック・タチ同様「傍観者」にすぎません。自身が事件の発端でもなければ解決するわけでもない。彼

札幌の時計台ばりのガッカリ映画。高知だからはりまや橋か。『鬼龍院花子の生涯』ネタバレ感想文

夏目雅子が「なめたらいかんぜよ!」と啖呵を切るので有名な1981年の映画。 5年前くらいに(初めて)観て、そんなに好きでもないのに2度目の鑑賞。 なんだってこんな映画をまた観ちまったんだ? 実を言うと、ケーブルテレビをつけてたら放映が始まって、なんとなく観始めたら面白くてつい最後まで観てしまったパターン。なんだ面白かったんじゃねーか。正確には夫婦で観ていて、ヨメさんの方が面白がって観ていたんだけど。 たしかに以前最初に観た時も「全体としては飽きずに面白く観られた」と書いてま

ジャパニーズ・ニューシネマ(※胸糞注意※)。『ディストラクション・ベイビーズ』ネタバレ感想文

2016年の邦画。主演は柳楽優弥。他のメインキャストは菅田将暉、小松菜奈。自主映画時代からその作品の熱量が高く評価されていた真利子哲也監督の長編商業映画デビュー作。 公開時に映画館で鑑賞して以来5年ぶり2度目の鑑賞。大好き。 2016年俺のナンバー1映画・・・だと思っていたら2位だった。ちなみに1位は岩井俊二『リップヴァンウィンクルの花嫁』。 これから書くことにも関わってくるんですが、『リップヴァンウィンクルの花嫁』は語ることがたくさんあるんですけど、この映画は実は語ることが

恋人と一緒に観ちゃダメ!絶対!映画『花束みたいな恋をした』ネタバレ感想文

脚本は坂元裕二、監督は土井裕泰、。 坂元裕二と有村架純の組合せは、月9「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」を毎週泣きながら観ていました。 土井裕泰と有村架純は『ビリギャル』なのかな。観てないけど。 TBSドラマのエース土井裕泰は岡田惠和脚本を手掛けることが多いのでかなり昔から見ていて、岡田惠和脚本の直近だと松本穂香主演の「この世界の片隅に」。古くは田中美佐子・桃井かおり主演「ランデヴー」。坂元裕二脚本だと「カルテット」が土井裕泰ですかね。いいドラマ演出家です。 た