韓国の海外養子縁組について
先日、韓国ドラマ「ムーブトゥヘブン」を見ていたら、海外養子縁組のエピソードがあり、私は当事者に会ったことがある話だと思い、書いてみたいと思います。
ドラマの感想についてはまた別途書きたくなったら書くつもりです。良い話でした。
今の家に引っ越して来て最初のNagomi Visitのゲストがアジア系アメリカ人のAさん(当時30歳くらい)男性でした。5年くらい前の出来事です。
日本へは初めての旅行で一人旅。
一人旅のゲストがよくあるパターンですが、
我が家にやってくる前から割と頻繁にメッセージが来ます。
おすすめの観光スポットはどこ?
大阪で食べ物は何が美味しい?
京都までは遠いの?
そんな些細な質問に答えているうちになんとなくかなり前から知っている友人のようになってくるから不思議です。
私個人的にNagomi Visitの醍醐味はここにあるのではないかと思うくらい。
何度もメッセージや写真、動画をお互いマメにやり取りしていく中で、お互いの性格を知り、フィナーレとして、ゲストを迎える。
Aさんは私の理想的なゲストの一人でした。
お昼ご飯を我が家で食べながら、いろいろな話をしました。今、韓国で暮らしているとの事で韓国で暮らすのってどんな感じ?
英語を教えているので、韓国の生徒ってどんな風?
日本へはどうして来たいと思ったのですか?
などなど。
Aさんは非常に落ち着いた物腰の優しい感じの青年でした。誰かの悪口や汚い言葉遣いは一切なく、私達が提供した食事も美味しい、美味しいと食べてくれました。
そろそろお開きの時間かなー?と、思った頃にAさんが徐に「実は僕は養子なんだ」と。
アメリカでは養子はとてもポピュラーですし、養子である事を隠したりしないので、あーそうなのね。と思っただけでした。
でもどうもアメリカ国内で一般的に行われている養子縁組とは違うらしい。
彼自身が赤ちゃんの時に韓国で生まれ、アメリカに養子に出されたらしいのです。
彼曰くはそういう韓国系の養子縁組はとても多いのだとか。
彼の養父母は白人だから一目で彼は養子と分かるが、その事を特に卑下することも自慢することもなくとても大切に育ててくれたと。
ええ。
そうでしょうよ。
貴方のその落ち着いた優しい佇まいは一朝一夕には出来上がらないでしょう。
ご両親がたっぷりと愛情を降り注いで大切に大切に育ててこられたことがわかります。
彼の他にも何人か有色人種の養子の兄弟がいて、大家族で育ったこと。兄弟達も独立して皆別々に暮らしているが、クリスマスや感謝祭には皆実家に帰ってきて、家族仲がとても良いこと。
彼自身は自分の出自を知りたいと思っていたが、そこまで大切に自分を育ててくれた両親に対して生みの母を探すとはなかなか言い出せなかった事。罪悪感や申し訳なさがいっぱいだった事などを打ち明けてくれました。
こういうデリケートな話は案外いつも側にいる身内や親友より行きずりの(例えば私達のような)人の方が素直に話しやすいのかもと感じました。
彼は釜山で暮らしていて、韓国に彼と同じように自分の出自を知りたいと考えて欧米から沢山の人が来ているらしいと。
そういう人達をサポートする組織もあり、彼自身もそこを通じて探してもらう手伝いをしてもらっているとのことでした。
しかし、30年前の記録がどこまであるか、もし記録があって上手く辿り着けたとしても面会を断る人も多いらしいです。
Aさんの母はAさんを産んだ時結婚をしていなかったことはわかっていますが、そこから先はまだです。
早く見つかって会えるといいね。
私たちが言える言葉はそれだけでした。
自分がお腹を痛めて産んだ息子や娘が成長して、海の向こうから会いに来ているのに何で会おうとしないんだ?と言う気持ちはわかりますが、そもそも養子に出すしか選択肢がなかった状態ですから、生みの母親はとてもしんどい決断をしているはずです。
ひょっとしたらその後誰かと知り合い、幸せな生活を送っているかもしれません。もちろん養子の事は誰にも言わずに。
そんな所にどれだけ連絡しても会ってはくれない可能性も高いですよね。
人間、誰しも過去があり、今の生活がありますから会わない人を一方的に責めるのはちょっと違うと思います。
それでも一度でいいからAさんの生みの母親に会いたいと言う気持ちが叶うといいなぁと私は望むばかりです。
Aさんが韓国のお母さんに会ってみたいと勇気を出して養父母に告げた時、快く送り出してくれた彼等の気持ちもわかってほしいなと。
Aさんからの新しい便りはまだありません。
時折お互いの近況をSNSなどでやり取りしています。彼の韓国語も随分上達しています。釜山での生活にもすっかり馴染んでいる様子。
彼の思いが叶いますように。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。