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“性格”に対する考え方を整理してみた

割引あり

性格診断って世の中に溢れている。

占いと同じ感覚で、性格診断をやってみると案外、面白いなと思う。
でも、自分は心理学を勉強し始めた時から、人の「性格」なんてそんなに簡単にわかるのかってことをずっと考えている。

この記事では、「性格」に対する考え方について、心理学の研究成果をもとに持論を述べる。


「性格」って何なの?

性格は「パーソナリティ」と呼ばれる。パーソナリティは、心理学において「特性論」で説明される(Cloninger, 1994)。特性論は、パーソナリティのタイプによって、人間の行動に時間と状況を超えた一貫性があると考える立場である。

パーソナリティを特性論から定義して説明する考え方は古くから一般的であり、Aliport(1937)以降、Cattell(1950)、Eysenck(1952)、Guilford(1959)は、因子分析モデルによってパーソナリティを説明している。

特性論の特徴は、次のようなことが挙げられる(Levy, 1983)。

  1. パーソナリティ特性は、人間が同一あるいは類似した状況でなぜ異なった反応を示すのかを説明するために使用される。

  2. 個人の行動は、何らかの潜在的かつ内的な属性の操作によるものであり、比較的一貫性を示すものと仮定される。

  3. 特性概念に基づく心理学的研究は、特性形式のパーソナリティ・テストを使用して、データ解析に相関分析を用いる。

世間で、「性格」と考えられているものは、おそらく「特性論的なパーソナリティ」を意味しているのだろう。

性格のタイプ

パーソナリティを特性論で考える有名な理論が「ビッグファイブ」である(Goldberg, 1992; John, John, Naumann, & Soto, 2008)。

ビッグファイブとは、心理学で支持されている理論であり、人間の性格を5つのタイプで考える性格特性論である。
性格特性論の立場では、人間には共通の性格特性を持つと仮定し、それらの性格特性を量的に測定する。
ビッグファイブにおける5つのタイプは、各タイプの頭文字を並び替えて、「O・C・E・A・N」(オーシャン・海)とも言われている。

ビッグファイブでは、「開放性」「誠実性」「外向性」「調和性」「情緒不安定性」という5つの次元を仮定している(村上,2003)。

開放性(Oタイプ:Openness)

開放性は、「新たな経験に対して開放的な傾向」を意味する。
開放性が高い人の特徴を挙げるのであれば、「紳士的な」「頼もしい」「判断力のある」などの特徴がある。
開放性が低い人の特徴を挙げるのであれば、「甘えのある」「子供っぽい」「頼りない」などの特徴がある。

誠実性(Cタイプ:Conscienciousness)

誠実性(勤勉性)は、「計画性・責任感・勤勉さの傾向」を意味する。
誠実性が高い人の特徴を挙げるのであれば、「きちんとした」「常識的な」「用心深い」などの特徴がある。
誠実性が低い人の特徴を挙げるのであれば、「ちゃらんぽらんな」「のうてんきな」「ルーズな」などの特徴がある。

外向性(Eタイプ:Extraversion)

外向性は、「自分の関心が外に向けられる傾向」を意味する。
外向性が高い人の特徴を挙げるのであれば、「明るい」「活動的な」「陽気な」などの特徴がある。
外向性が低い人の特徴を挙げるのであれば、「内気な」「物静かな」「受動的な」などの特徴がある。

調和性(Aタイプ:Agreeableness)

調和性(協調性)は、「人との和を大事にする傾向」を意味する。
調和性が高い人の特徴を挙げるのであれば、「暖かい」「素直な」「人情味がある」などの特徴がある。
調和性が低い人の特徴を挙げるのであれば、「冷たい」「不親切な」「人の目を気にしない」などの特徴がある。

情緒安定性(Nタイプ:Neuroticism)

情緒安定性(神経症傾向)は、「感情面で不安定な傾向」を意味する。とも言う。
情緒不安定性が高い人の特徴を挙げるのであれば、「感情的な」「短気な」「不安定な」など特徴がある。
情緒不安定性が低い人の特徴を挙げるのであれば、「穏やかな」「寛大な」「おっとりとした」などの特徴がある。

「ビッグファイブ」を測定できる心理尺度

ビッグファイブを測定する心理尺度は,これまでに数多く開発されている(e.g., 藤島・山田・辻平,2005; 柏木・辻平・藤島・山田,2005; 村上・村上,1997; 並川・谷・脇田・熊谷・中根・野口,2012; 和田,1996)。

ビッグファイブ尺度(柏木・辻平・藤島・山田, 2005)の一例をを以下に示す。

図1
ビッグファイブ尺度(柏木・辻平・藤島・山田, 2005)

上記の尺度の特徴としては、「外向性」「調和性」「誠実性」「情緒不安定性」,「開放性」それぞれの性格特性を表す形容詞語を使用することである。調査回答者は、ビッグファイブに関する各形容詞語に対して、どの程度当てはまるのかを回答した結果、調査回答者の性格特性が測定される。

パーソナリティ特性への批判

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