ピープルフライドストーリー (11)三毛乱短編小説
[作者コメント: ある犬のショートなお話です。]
第11話
犬とおばあさん
by 三毛乱
これは、ある男から聞いた犬の話です。
ある男が歩いていました。
その道を小さいおばあさんが、大きな乳母車を押して遠くからやって来ました。
その乳母車の中に犬を乗っけてました。
一言でいうと犬はとても恥ずかしそうな顔をしているように男には見えた。
庇護されてる事が、とても大事にされている事が、かえって少々重荷になっているような、ふがいなさそうな、すまなそうな、恥ずかしそうな、そんな顔の犬だと男には見えた。
男は犬とおばあさんとすれ違った。
2時間後、男がその道を帰って来ると、またおばあさんと犬と出会った。
おばあさんは疲れてしまったのか乳母車に乗っていた。
そして今度は、後ろ脚で立ち上がった犬が乳母車を押してやって来た。
犬はとてもうれしそうだった。
最初に見た顔と全く違っていた。
恥ずかしそうな顔などではない。満面の笑みであり、誇らしい顔であり勇ましい表情であるといってもよかった。
力がギンギンにガンガンに漲っている感じであった。
『これくらい、へっちゃらだいっ』と犬が言っているように男には感じられた。
男と、おばあさんと犬は知り合いになった。
その後、その犬はもっと筋肉をつけようと、ホウレン草やらヤクルトやらプロテインやらを食べたり飲んだりして、鉄アレイも使いだし、遂にバーベルを持ち上げた。
最終的には、犬界のNo.1のボディビルダーになるために犬専門のジムに通ったそうである。
そしてDBBF(ドッグボディビル連盟)の大会で、とうとう犬ボディビルダーのチャンピオンになったと、おばあさんから数年後に聞いた。
ジムの中では、犬たちの肉体改造の切磋琢磨や、いじめなどのドラマがあったという事もおばあさんから聞くことが出来た。
そして、おばあさんも最近は肉体づくりに目ざめて、腕立て伏せや、腹筋運動、バーベル上げなどを始めたそうである。
ゆくゆくはボディビルダーとして活動したいそうである。
でも、その事は、また、別の話である。
(終)
2023 1 12
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