「早く買ってあげたい」その親心がアダになる!?0-3歳児のおもちゃ選びbyピープル代表(2児の父)②/3『ピートラ』Vol.91
こんにちは。機ちょーまさとです。
子育て悩む世の親御さんに向けて、おもちゃ選びを解説するシリーズ第2弾として、購入者である親御さんの気持ちと、おもちゃをつくる側の事情がマッチして、あまり良くない結果になってるかも?というお話をお送りします。
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Part① なぜおもちゃ選びに悩むのか?(ピートラVol.85)
Part② 業界の慣習とその弊害(←今回)
Part③ 「赤ウケ!」良く遊ぶおもちゃ選びの具体的方法(次回)
つくる側の事情:飽和状態のおもちゃ市場で勝つ方法論
多くの方のイメージ通り、おもちゃの市場は少子化の影響もあり飽和状態と言って良い状況。必然的に経営者は「売れる玩具をつくれ」つまり他社からシェアを奪って来い、が業務命令となります。
すると企画開発担当者は一番確実な方法として、売れている他社商品をお手本に差別化が真っ先に考えるべき戦略の軸になります。
普通に考えると安くするか、付加価値(多くはキャラクター)を付けるかですが、この業界(特に乳幼児向けの商品)には「下をくぐる」という差別化戦術が存在します。他社のヒット商品の対象年齢より、少し下の年齢を対象に設定して、先に買わせてしまおうという作戦です。
日本の多くの玩具には、玩具安全基準を合格してSTマークというのがついているわけですが、この基準に合格するためには商品の箱に対象年齢(月齢)を表記しなければなりません。
例えばやりたい放題の「下をくぐる」をやろうと思ったら、ここに7か月って書ける商品をつくれば良いわけです。
ぼくも長いこと商品企画をしてきたので、この作戦を100%の善意をもってやってきました。というのもヒット商品が生まれると、必ず対象年齢より低い年齢で買う方が増えていくので、それに応えたい気持ちがあるからです。しかしこれは後に大反省することになりました。
早く買いすぎると、遊ばないで終わる場合がある
Part1で言及しましたが、この業界には「通過玩具」という信仰があります。例えば「1歳になったらつみき」「2歳になったら女の子にはお人形」という風に「〇歳を通過する時には〇〇を与えるべき」という教えで、大方先輩ママ、玩具売り場、育児雑誌などからインプットされます。
こんな習慣が生まれることに代表されるように、日本では玩具の購入年齢は徐々に下がっていく現象が見られます。
これは
「なるべく長く遊んで欲しいから早めに買いたい」親心
と
「他社より先に買って欲しい」メーカーの心理
の両者の利害が一致した結果だろうと考えられます。
しかし、必ずしもこの「〇歳になったら」は、一番あそぶ時期と一致していないことが問題です。おもちゃを当人が遊びたい時期より早く与えすぎると、遊びこなすことができずにおもちゃ箱の奥にしまい込むことになり、一番あそぶはずの年齢になる頃には忘れられている、のパターンに陥りがち だからです。
おもちゃを早く買おうとすると、誰にとっても幸せでない未来がやってくる
0-3歳のおもちゃを早く買うということは、まだ子どもの欲求が芽生える前に、つまり子どもが後で喜ぶかどうかはわからないまま、たくさんある商品群から一つを、(主に)親主導で選ぶことになります。
こうなると選択の条件は
・デザインがインテリアに合う
・(親が好きな)キャラクターがついているかどうか
・片付けやすい
・1円でも安く買いたい
などに集約されていき、子どもが喜ぶかどうかはわからないので後回しになります。つまり、大人の都合で商品選択がされるようになります。
メーカー側もこのニーズに適う商品を争うように新規開発していきます。売れない商品をつくるわけにいかないからです。その結果、あまり遊ばないおもちゃがどんどん世の中に生み出され、そういうカテゴリーごと「遊ばないおもちゃ」という認識が広まり、市場が廃れていく、というライフサイクルがあることがわかってきた、というわけです。
誰が悪いわけでもないのに、いずれ誰も望まない結果になってしまうサイクルです。これはよろしくない。
子どもが一番よろこぶおもちゃを選ぶとみんな幸せになる
0-3歳のおもちゃの本質的な役割は、子どもの好奇心、つまり成長したい欲求に従った試行錯誤に応えることだと、ピープルでは考えています。
シンプルに、子ども達が一番喜んで遊ぶおもちゃが一番良いおもちゃということです。また「知育玩具」という言葉がありますが、平たく言うと一番喜ぶおもちゃで思う存分遊ぶと成長に良いよ、ということです。
ただ、子どもの成長速度や欲求の出方にはものすごく個人差があるので、実は「〇歳になったら〇〇を買うべし」という教えはあまりアテにならないことが多いです。じゃあどうやって「子どもが一番喜ぶおもちゃ」選べばいいのか?
ピープルとしてオススメしたいのは、子どもウォッチングです。その際、「子ども達のする行動は全て好奇心由来」と信じることがポイントです。子ども達は必ずその時一番あそびたい遊びに近い行動を、ある日突然始めます。好奇心のスイッチが入ったかのように。
例えば、1歳前後になると箱ティッシュをぜんぶ抜くという遊びを、9割がたの子が始めます。ティッシュを抜かれるのは大変困りますが、それって好奇心ですよね?と仮定して、それに近い遊びができるおもちゃで遊ばせてみてみたら、ものすごく喜ぶはずですね。
おもちゃを選ぶとき、子どもが一番熱中して遊ぶやつを選ぼう!という皆さんの選択行動が習慣化すると、つくる側は必ずそれに合わせてモノづくりすることになります。つまり、子ども達を喜ばせる競争を生み出すことになります!
つくる側としても、どうやったら子どもが喜ぶのか?考えながら、トライ&エラーをする仕事が一番楽しいです。ポジティブな市場が成長していくと経済循環も良くなり、みんな幸せという考え方ができます。
「赤ウケ」を習慣化したい!
ピープルでは子どもの行動をすべて「好奇心由来」と信じ、ウォッチングすることで、一番喜ぶポイントを「赤ウケ」と呼んで面白がることを、赤ちゃん研究所などを通して推しています。
次回、Part3では、具体的な子どもウォッチングのやり方と「赤ウケ」発見のポイントを説明しつつ、おもちゃ選び実践編を書いてみようと思います。
今回は以上です。長文に最後までお付き合いいただきありがとうございました!