普茶料理
京都市営地下鉄 烏丸線の「鞍馬口」駅のほど近くに「閑臥庵」という神秘的な空間があります。ひま(閑)ふせる(臥)いおり(庵)と書いて、「かんがあん」。風雅でしょ。門をくぐると、異世界に導かれます。
こちらは御所の祈願所として、後水尾法皇が、開山、命名された黄檗宗の禅寺なのですが、法皇さまが春に、秋に、和歌を詠んで庭を愛でられたということが伝えられています。
春のこの佳き日、黄檗売茶流 中澤弘幸 先代お家元による「第4回平安サロン」公開収録の講演会、並びに交流会に参加して参りました。
カメラには映らないけれど、趣のある部屋の窓は開け放たれて爽やか、桜の花びらが舞い込んで、背景は源氏物語の世界のようです。
先代お家元は、文化の世界に長く関わって来られた、広く、深いご見識の中から、聴衆の興味に合わせてお話しくださり、また、お育ちやお立場ゆえの独自の発想など、他では聞けないようなかけがえのないお話もあります。
今回は、黄檗宗に伝わる京懐石普茶料理が提供されるということで、楽しみにしていました。
「普茶」とは、普(ひろ)く多数の人にお茶を差し上げるという意味で、元々はお寺での行事の打ち合わせ時に、茶礼という儀式を行い、その後の謝茶(慰労会)で出された精進料理なのだそうです。
季節の新鮮な素材を使い、高タンパクで低カロリー。黄檗宗の開祖隠元和尚から300年以上の伝統を持つ普茶料理は、油を上手に使うため、高僧たちは元気で長生きだったとか。
宇宙を象徴するという五色(青、黄、赤、白、黒)の食材と、はしり、旬、なごりを取り入れた普茶料理は、細やかで美しく、粋そのもの。
家庭の食卓で、見習うのは難しいですね。ここは、特別に用意された、小さな三段重のお弁当を、感謝していただきましょう。
先代お家元を囲んでの和やかな歓談、外は静かに暮れて、庭がほんのりとライトアップされました。幻想的で美しい。最後まで見送ってくださる温かいおもてなしに心満たされて、門を出た時には、「千と千尋の神隠し」の最後のシーンを思い出しました。
一期一会の素晴らしいひととき。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?