
【読後感想】 ヤスパース「哲学入門」の足跡
人間であることは真に人間となること、もっといえば美しい人になることである.
時間のありようの中ですべては常に変化し続けていく…。
その中にあって、限界状況と超越者を射程に入れ、真に生きる「実存」を思索したヤスパース.
人間に関わり続けていく、そこは可能的実存として、
世界に関わることがそのまま自己に関わることである.
実存とは、時間性の中で展開する自分自身のすがたそのものである.
とどまろうものならば、かえって過去に絡めとられてしまう.
時の流れからして見れば、
一層、突き落とす現実がそこにあるだけである.
それがそのままの実存になるのだ.
未来に向け、その生を強く促すこと
これらの未来への方向性を考えるに問題となるものが今の自分の心のあり方、その内面性である.
自らを高めること.自分にその責務を課すこと.
これこそがまさにその自己実現のための人格の核であり、未来の人生の源となる.
実存主義とは、こうした自己の内面性の思索から生まれたと言っていい.
ハイデガーは、現代の哲学を再構築するために
・ニーチェ
・キルケゴール
・ヤスパース
これらの人々の思索を通じて新たな境地を開拓した.
「存在と時間」
ここでは「存在一般」についてまで論を尽くすことへの挑戦は断念したようだが
自らの哲学的使命については手放すどころか
最後まで挑戦した.
ハイデガーが示したもの
「良心の声と気遣い」
この意味するところは深い.
現代人にとって今やこのキーワードは欠かせないものとなった.
『心をつくし、精神をつくし、思いをつくして、主なるあなたの神を愛せよ』。これが1番大切な第1のいましめである.第2もこれと同様である.『自分を愛するようにあなたの隣り人を愛せよ』。これら2つのいましめに、律法全体と預言者とが、かかっている。
マタイによる福音書 第22章37〜39節(日本聖書教会 1955年改訳版)
「世界内の実在は、神と実存との間でひとつのはかない現存在をもつ」ヤスパース
「汝が固執するもの、汝が拠ってもって立つところのもの、そは本来的に汝の神である。」ルター
(写真は新潮文庫より引用)