ぺんたぶ

エッセイや小説を書いたり、会社で働いたり、妻に恋に落ちたり、小学2年生のむすこのパパだったり。 ここでは、140字では書き切れないことを。 既刊:いまどうしてる? 恋してます。/ 作家彼女。/ ハキダメ。他(いずれもKADOKAWA)

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エッセイや小説を書いたり、会社で働いたり、妻に恋に落ちたり、小学2年生のむすこのパパだったり。 ここでは、140字では書き切れないことを。 既刊:いまどうしてる? 恋してます。/ 作家彼女。/ ハキダメ。他(いずれもKADOKAWA)

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  • むすこの話

    5才になる息子のコトのおはなし

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    銀行員の話、作家の話 などなど

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息子が「ママに”可愛いよ”って言ってるのに、ぜんぜん信じてくれない」と悩み、こっそり先生に相談していた話

 うちの妻が抗がん剤での治療を始めて、二か月ほど経った頃――副作用の「脱毛」が、始まってしまった。  もちろん、抗がん剤の副作用のひとつに、「脱毛」があるのはよく知られているし、僕も主治医の先生からも話は聞いていた。特に女性は、この脱毛が始まると、大きなショックを受けてしまうことが多いことも。  そしてそれは、うちの妻も、決して例外ではなかった。  髪や眉毛、まつ毛が抜けていく姿を鏡で見るたびに、妻は「わたし、可愛くない」と言うようになってしまった。  いくら僕が「君

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    • 「この子は、少し人間が出来すぎているのでは?」そんな風に思った秋の日の話

       妻が退院してきた、数日後のことである。  在宅勤務をしているところに、息子が通う小学校から、 「コトくんが、お昼休みにクラスのお友だちとぶつかってしまった」 「少し大きめのケガをしたので、いますぐ迎えに来てほしい」  と、そんな連絡が入った。    僕が慌てて小学校の保健室に向かうと、そこには自分がケガした部分を押さえながら、ニコニコとぶつかってしまった相手に「大丈夫だよ。痛くないよ。また遊ぼうね」と笑いかけている息子がいて、思わず、 ――この子は、少し人間が出来すぎて

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      • わが家のトーク量の95%を独占していた妻が、入院で不在になったときのこと

         妻の乳がんの手術は、無事に成功した。  とはいえ、その後も10日間ほど入院を余儀なくされていたため、僕と息子は、そのあいだは二人きりでの生活が続いていた。  ところで、うちの妻は、とにかく存在感が大きい(もちろんいい意味で)。おそらく僕のXやnoteを読んでくれている方なら簡単に想像がつくと思うが、その理由の一つは、とにかく”よく喋る”からだ。  わが家のトーク量のほとんどを担う妻。  そんな妻がいない日々を、僕と息子が二人きりでいかにして乗り切ったのか、――今日は、そ

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        • 妻の手術日に、むすこが「学校に行きたくない」と言い張ったときのこと

           9月上旬のことだ。  妻が、乳がんの手術のために入院することとなり、僕と息子のコトは、およそ二週間のあいだ、二人きりで過ごすことになった。  朝、病院に向かった妻を見送ったときには、「ぜんぜん大丈夫だよ。病気をなおして、かえってきてね」と言っていた息子。  だが、その日の夜には少し元気がなくなり、「ねぇ、ママはいつ帰ってくるんだっけ?」と、不安そうに僕に聞いたりしていた。  そして、翌日の朝。  息子はなかなか布団から起き上がらず、妻が愛用している毛布を抱きしめたまま、

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          妻が入院の前日に「前開きのブラがない」と言い出し、僕と息子で買い出しに出かけたときのこと

           妻の胸にがんが見つかって、半年が経った。  長かった術前の抗がん剤治療もようやく終わりが見え、手術を受ける日程も決まった。  手術は、9月の上旬に行われる。  術前と術後を合わせ、だいたい二週間の入院が必要とのことだ。  この間、僕と息子のコトくんは、二人きりで過ごすことになる。  不安だらけの新学期にならないように、僕らは夏休み中から、念入りに新学期への準備をはじめていた。宿題は早めに終わらせたし、ボロボロになっていた上履きは買い換えた。短くなった鉛筆は新しいものに換

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          妻が入院の前日に「前開きのブラがない」と言い出し、僕と息子で買い出しに出かけたときのこと

          味覚障害で料理の味付けが出来ない妻を、息子が「味見やさんですよー!」と助けてくれた話

           妻が抗がん剤による治療をはじめて、三か月が経った。  この抗がん剤だが、いろんな副作用がある。  有名なものとしては、脱毛や体の痛み、倦怠感といったものよく知られているが、実は「味覚障害」も、かなりやっかいなものである。  妻は、この味覚障害が強く出た。  何を食べてもおいしく感じられず、苦みを感じたり、味がしなかったりするせいだろう。  結果的に、妻はみるみるうちに痩せてしまった。  そして、妻自身の食事の問題だけでなく、――日々の料理においても、大きな問題が生じるこ

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          味覚障害で料理の味付けが出来ない妻を、息子が「味見やさんですよー!」と助けてくれた話

          がん治療のための飲み薬が手に入らなかったとき、プロの仕事に助けられた話

           妻に見つかったがんの治療を、多くの人たちが支えてくれている。  主治医や看護師さんをはじめとした病院の方々はもちろん、――ほかにも、本当にたくさんの人たちが支えてくれている。  まずは、小学生になったばかりの息子のコトくん。  先日、こちらのnoteでも書いたが、副作用の脱毛に悩む妻に”ぎゅーっ”と抱きついて「ママ、かわいい」と、二カッと笑いかけてくれる。  これが、妻にとってどれだけ救いになっていることか。  そして、僕のXやnoteを読んでくれている読者の方。  

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          息子が「パパのお父さんは、どんな人だった?」と、会えなかった”おじいちゃん”のことを知りたがった話

           僕の父は、いまから10年ほど前に、病でこの世を去った。    享年、60歳。  何年間も続いた闘病生活の間に、遠くないうちに”その日”がくるとわかっていたので、心の準備は出来ていたように思う。  僕も、――そしておそらくは、父自身も。  ただやはり、失う側からすれば、天寿を全うしたと言うには早すぎた。  だって、いま小学2年生の息子のコトは、僕の父に会ったことがないのだ。  ある日。  息子がふいに、「パパのお父さんは、どんな人だったの?」と聞いてきた。 ――今日は、

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          息子が「パパのお父さんは、どんな人だった?」と、会えなかった”おじいちゃん”のことを知りたがった話

          妻の「がん」と、解決すべき”お金の問題”について

           今日は、妻が「がん」になったときに我が家が直面した”お金の問題”について、話をしたいと思う。  妻が「乳がん」の告知を受けたそのとき、いわゆるステージなどの進行度や余命の次に気にしたのが、この「お金」の問題だった。  がんの治療には、お金がかかる。そりゃもう、かかる。  たとえばこんな感じ。 「ちなみに、毎週抗がん剤を使って治療する――って言いましたけど、お金って、どのくらいかかるんですか?」  がんの告知で衝撃を受けたばかりの妻が、先生に聞く。  すると、   「そ

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          妻が“がん”と告知されたとき、夫があれこれ考えること

          「病めるときも、健やかなるときも」――  そう誓った日から10年が経った、とある冬の日。妻が突然、「胸にしこりがある気がする」と言い出した。  2人で力を合わせて闘う日々が始まった、そのとき。  夫である僕が考えたあれこれについて、今日は話そうと思う。 ■ はじめに~前回の記事のお礼など  前回の記事 ”あの日誓った「病めるときも」が来てしまった話” は、全文を無料で読めるようにしていたにも関わらず、購入やサポートをいただき、本当にありがとうございました。   今回の

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          妻が“がん”と告知されたとき、夫があれこれ考えること

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          あの日誓った「病めるときも」が来てしまった話

          ■妻に”がん”がみつかりまして  もう10年も前の、とある夏の日。大きな教会で、僕と妻は、あの「健やかなるときも、病めるときも」という有名なフレーズで、どんなときも互いに助け合い、愛し合うことを誓った。  あれから10年が経った、ある冬の日のことである。    ――妻の胸の中に、「がん」が見つかった。    そりゃあ長い人生ですから、いつかは来るよねこんな日も。  ということで、この日このとき、この瞬間から、僕らがあの日誓った"病めるときも"のお話が、幕を開けたわけである

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          子供の手づくりカードゲームほど恐ろしいものはない、という話

           とある夏の夜の出来事である。  5才のむすこのコトが不意に、「パパ! ママ! きいて! コトはね、すっごいおもしろいゲームしってるんだけど、やる!?」と、目をキラキラと輝かせながら聞いてきた。  断られることなど1ミリも想定していないその勢いに負け、僕と妻は「う、うん」と首をたてに振った。  すると、コトはすっくと立ち上がり、自分のおどうぐ箱から白い紙を何枚か、そして色鉛筆に筆ペン、ハサミなんかを取り出してきた。 「じゃあ、コトがじゅんびするから、パパとママはまってて

          子供の手づくりカードゲームほど恐ろしいものはない、という話

          いつか息子が大きくなって、僕の手を離れてしまう日が来ることを、少しだけ考えた日の話

           僕は知っている。いつか息子は大きくなり、やがて僕たち親の手を離れて、独り立ちしていくのだと。それこそ、かつての僕がそうだったように。  けれどもしばらくは、まだ僕のこの手を支えにして欲しい――と、そう思ってしまうのも、また親心だと思うのだ。  今日は、そんな話をしようと思う。 *** 「パパ! ぜったい、ぜーったい、手をはなしちゃダメだからね!」 「わかってるよ。大丈夫、パパに任せて」  休日、自転車用の道路での話である。  僕は、5才の息子のコトが、補助輪なしの

          いつか息子が大きくなって、僕の手を離れてしまう日が来ることを、少しだけ考えた日の話

          息子には好きなだけ絵を描いて欲しいと思う、そんな親心の話

           5才になった息子のコトは、絵を描くのが大好きだ。  特に最近、鉛筆をうまく握れるようになったからか、 「パパー! しろいかみ、くーださいっ!」  と、僕の書斎にやって来ては、コピー用紙を何枚か持って行くことが増えたように思う。  リビングの床にぺたりと座り、パウ・パトロールやトーマス、カーズといった、大好きなキャラクターたちのイラストを描くのが、最近のお気に入りである。  そして自分が納得のいくイラストが出来上がる度に、トテトテっといつもの足音を立てながら書斎に駆け込

          息子には好きなだけ絵を描いて欲しいと思う、そんな親心の話

          「お友達とは、また会えるよ」という話

           春は別れの季節だと、そう僕は思う。  幼い頃から、親の仕事の都合で、引っ越しや転校による別れを繰り返してきたせいだろう。雪国や都会、海の向こうの離島、暑い土地など、本当に様々な場所を転々としてきた。  別れのタイミングは、いつも春だった。  幼稚園の頃に、もう名前さえ思い出せない幼なじみと離ればなれになったのもこの季節だった。小学校や中学校の頃に、放課後に一緒に遊んだ友達と別れたのも、高校を卒業して親元を離れたのも、社会人になって初めての転勤も、いつも春の出来事だった。

          「お友達とは、また会えるよ」という話

          大企業とベンチャーのどちらを選ぶべきか? とインターンの学生に問われた話

           ある日、僕が働く銀行のオフィスで、スーツを着た学生たちとすれ違った。彼らは少し緊張した様子で、先導する人事部の行員のあとを歩いていた。  少し前まで、僕もインターンの学生たちに銀行の仕事を教えるのを手伝っていたことを思い出す。しかし、少しずつ年次があがり名刺の肩書きが増えるにつれて、学生の前に立つ機会はだんだんと減っていった。やはりインターンの対応は、学生と年が近い若手の役回りということなのだろう。  学生たちの後ろにも、何人か、人事部の行員がついて歩いている。  その

          大企業とベンチャーのどちらを選ぶべきか? とインターンの学生に問われた話