三輪車の少女
「わぁ〜〜〜〜〜!」
心地よい風の吹く青空の下、散歩をしていた公園で聞こえた声であった。
声は元気な可愛らしい少女のものだった。
少女は三輪車を一生懸命こいでいた。
思わず私は立ち止まって、微笑ましい光景を見ていた。
「わぁ〜〜〜〜〜!」
ゆっくりだが私に近づいてきている。
少女の行く道を邪魔してはいけない。
そう思い、避けようとした。
だが、おかしい。
私の方に舵を切って確実に近づいてきている。
「どぉ〜〜〜〜〜ん!」
ぶつかる前に上手にブレーキをして、少女は目の前に止まった。
眩しい笑顔で私を見ている。
「とても上手だね」
そうやって私は無難な声をかけてしまった。
少女は不満そうな顔で私を見ている。
「倒れてくれないのぉ?」
はっとした。
そっか。少女は「うわぁー!やられたー」と倒れる事を期待していたのだ。
褒めれば喜んでくれると思い込んでいた私。
なんて浅はかな考えを持っていたのだろう。
冷静になって考えてみたら、どーんって言っているのだから倒れるのが正解だ。
少女1人笑顔にできない自分。
まだまだ未熟です。