あの劉邦にしてこの『謙虚』あり
秦を破って漢王朝を打ち立てるに至った劉邦(高祖:前247~前195)が天下統一の大業に成功して大得意の時、陸買は進んで書を講じようとした。ところが、楚の項羽等と激戦の上に政権を手にした劉邦は、てんで相手にしなかった。『俺は馬上天下を得た男だ、いまさら本や学問など何になるか。帰れ、帰れ』劉邦は野人タイプの英雄で鼻息が荒かった。しかし陸買は引き下がらなかった。『陛下、そうではありません。馬上天下を取ることは出来ても、馬上天下を治めることはできません。政権を永らえさせようと思ったら文武を併用しなければなりません』
『もし、秦が仁政を行っていたら、陛下には政権をとるという目はなかったはずです。仁政を行うためには
先人の知恵に学ぶ必要があります』
低い身分から武力でのし上がった現実主義者の劉邦であったが、陸買の言わんとするところを汲んで、その治世に聖賢の知恵を織り込んでいった。
安岡正篤先生は『陸買新語』に出てくるこの故事を引きながら、経験主義、現実主義だてでは立つことが出来ないことを説いている。天地神明に恥じない王道を行く以外に、歴史の批判に耐えることは出来ないのである。
著者:神渡良平さん 佐藤一斉「言志四録」から何を学ぶか 器量と才覚 224ページより。
たたき上げの『ga-su』さんの耳元でささやいてみたい。
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