絵本探究講座第3期(ミッキー絵本ゼミ)第2回目振り返り(5/28)
コールデコット賞について(復習)
参考文献をいくつか用意していたものの、じっくり読むことができなかったので、おさらいをすることにしました。
コールデコット賞とは
児童図書館協会(ALSC)が、アメリカでその年に出版された最もすぐれた子ども向け絵本に毎年与えている賞。
19世紀イギリスの挿絵画家、ランドルフ・コールデコットの名に因んで名付けられた。
アメリカでは、ニューベリー賞と並んで、児童図書に与えられる最も権威ある賞。
『絵本BOOK END 2019』編集:絵本学会機関紙編集委員会 朔北社 2019
コールデコット賞受賞作品とそれぞれの特徴
1942年『かもさんおとおり』ロバート・マックロスキー 作 わたなべしげお やく 福音館書店 1965
薄茶色一色
生態を知りたいとかもをかってきた
本当にあったエピソードが元になっている
1958年『すばらしいとき』ロバート・マックロスキー 作 わたなべしげお やく 福音館書店 1978
原題は『Time of Wonder』邦題を付けるのに苦労された
1943年『ちいさいおうち』バージニア・リー・バートン 文・絵 石井桃子訳 岩波書店 1981/1991/2010
単色→カラーへ
印刷技術により、初めのものは月が逆に欠けている
ランドセルに入る大きさを意識して作られた(岩波の子どもの本)
誰のために描かれたのか追っていくとおもしろい
時間の流れがアートになっている。
『せいめいのれきし』では時間の流れがらせん状に描かれている
分析すればするほどいくらでも出てくるので、じっくり見るとよい。
1947年『ちいさな島』レナード・ワイスガード え ゴールデン・マクドナルド さく 谷川俊太郎 やく 童話館出版 1996
戦後の価値観の変化が見られる
ベトナム戦争で揺り戻しが起こった
文明批判
1962年『あるひねずみが・・・ーインドのむかしがたり』マーシャ・ブラウン 作 やぎたよしこ やく 冨山房 1975
『むかし、ねずみが・・・-インドに古くから伝わるおはなしより』マーシャ・ブラウン さく 晴海耕平 やく 童話館出版 1994
『もとはねずみ・・・-インドに古くから伝わるおはなしより』マーシャ・ブラウン さく 晴海耕平 やく 童話館出版 2011※改訂
マーシャ・ブラウンはいろんな国の昔話を伝えたかったが、いい訳者に恵まれず、3種の翻訳がある。売れないと絶版になってしまう
1969年『空とぶ船と世界一のばかーロシアのむかしばなし』ユリー・シュルヴイッツ 絵 アーサー・ランサム 文 神宮輝夫 訳 岩波書店 1970年※1986に改版
ユリー・シュルヴィッツは『よあけ』を描いた
1970年『ロバのシルベスターとまほうのこいし』ウィリアム・スタイグ さく せたていじ やく 評論社 1975 2006※新版
いくつかの訳があるもので・・・
1982年『ジュマンジ』クリス・バン・オールズバーグ さく へんみまさなお やく ほるぷ出版 1984
『ジュマンジ』クリス・バン・オールズバーグ さく 村上春樹 訳 あすなろ書房 2019
へんみまさなおさん訳のものが読み聞かせしやすい。
訳者が誰に向けて翻訳しているかで変わってくる
映画のカメラワークを意識している
1963年『ゆきのひ』エズラ・ジャック・キーツ ぶん・え きじまはじめ やく 偕成社 1969
「ピーター」という黒人の子が主人公
雪の白さに黒人という描写が鮮やかさが表れている
ダイバーシティ
日本では『14ひきのあさごはん』のように同じ顔の登場人物の作品が多いが、アメリカでは『バーバパパ』のようにいろいろな色の登場人物が出てくるところが違う
1964年『かいじゅうたちのいるところ』モーリス・センダック さく じんぐうてるお やく 冨山房 1975
ディズニーが大好き
描き込みがすごい
子どもが勝ち取った本
マックスの心の旅が描かれている
枠が大きくなる
子どもの内面を描いた最初の作品
1959年『チャンティクリアときつね』バーバラ・クーニー ぶん・え ジェフリー・チョーサー げんさく さいおんじさちこ やく 偕成社 1976
1980年『にぐるまひいて』バーバラ・クーニー え ドナルド・ホール ぶん もきかずこ やく ほるぷ出版 1980
人生を描いた絵本作家。アメリカ人のノスタルジアが表現されている
優しい色彩で芯の強い女の子が描かれているのが特徴
人生を語る三部作『ルピナスさん』かけがわやすこ やく ほるぷ出版、『ぼくの島』かけがわやすこ やく ほるぷ出版、『おおきななみ』かけがわ やすこ やく ほるぷ出版
子どもたちの心に強く美しいものを咲かせるためのメッセージを絵とことばに託している。(『絵本BOOK END 2019』)
1992年『かようびのよる』デヴィッド・ウィーズナー 作 当麻ゆか訳 福武書店 1992 2000※再刊
2007年『漂流物』デイヴィッド・ウィズナー 作 BL出版 2007
映画の手法。袖に物語がある
コラージュ
1994年『おじいさんの旅』アレン・セイ 文・絵 大島英美 あとがき訳 ほるぷ出版 2002
2004年『綱渡りの男』モーディカイ・ガースティン 作 川本三郎 訳 小峰書店 2005
2010年『ライオンとねずみ』(イソップものがたり)ジェリー・ピンクニー 作 イソップ原作 さくまゆみこ 訳 光村教育図書 2010
カバーに迫力がある
外国はカバーがない?買う人はペーパーブックを買う。ハードカバーは図書館用
2013年『ちがうねん』ジョン・クラッセン 作 長谷川義史 訳 クレヨンハウス 2012
長谷川義史さんの関西弁の訳で注目
2019年『おーい、こちら灯台』ソフィー・ブラッコール さく 山口文生 やく 評論社 2019
チームブレイクで出た話
時間の流れがらせん状になっているのが驚いた(『せいめいのれきし』)
読んでいない本を読むことから始めたい
コールデコット賞は絵の賞なので、絵で伝えたいこと、語りたいことなど、そこまで考えて絵で表現している
歴史の流れを見ているように感じた
トレンド、最新のテーマを知るのに便利な賞
なんでこれが選ばれたのか?という作品もある
感じたこと、考えたこと
時代順に紹介してくださったのと、情報量がとても多かったので、壮大な歴史物語に触れたような気がしました。
時代の流れと受賞作品の関係性を見るという視点は持っていなかったので、絵本だけを見るのではなく、広い視点で世の中の出来事や社会の流れなどを知るのに年代別の受賞作品を見るのは効果的だと感じました。
絵本についてだけではなく、さまざまな側面から見つめ、視野を広く持つということは心がけていたいです。
また、今回のゼミで特に感じたのは、翻訳の大切さと大変さです。
原書で読めるようになるのもいいことだと思うけれど、私が今接しているのは母語が日本語の子どもたちであり、外国の絵本も基本的には日本語で読み聞かせをします。
どれだけ優れた絵本であっても、日本語訳も魅力的でないと、注目されないし、生き残れないことがわかりました。
私はたまたまスペイン語を学ぶ機会に恵まれ、そして絵本と出会ったことから、スペイン語の絵本を翻訳し、外国と日本の架け橋になりたいという夢ができました。
今回の講座で翻訳をしたいという気持ちが高まり、そのためにスペイン語学習も諦めずに続けようと思います。
受賞作品全部は読めていませんが、日本語に翻訳されていなくても原書で味わうというのもぜひやってみたいと思います。
またいくつかの翻訳がある絵本は読み比べてみたいです。
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