サイコロの目の確率とその極限
さいころを$${n}$$回振り、第$${1}$$回目から第$${n}$$回目までに出たさいころの目の数$${n}$$個の積を$${X_n}$$とする。
(1)$${X_n}$$が$${5}$$で割り切れる確率を求めよ。
(2)$${X_n}$$が$${4}$$で割り切れる確率を求めよ。
(3)$${X_n}$$が$${20}$$で割り切れる確率を$${p_n}$$とおく。$${\lim_{n\to\infty}\frac{1}{n}\log(1-p_n)}$$を求めよ。
注意:さいころは$${1}$$から$${6}$$までの目が等確率で出るものとする。
(東京大)
【解答】
(1)
$${5}$$の目が$${1}$$回でも出れば、$${X_n}$$が$${5}$$の倍数であることは確定する。そして、それは$${n}$$回のうちのどこで出るかは問わないので、いささか計算しにくい。
そこで、視点を変えて、余事象を考える。$${X_n}$$が$${5}$$の倍数でないのは、$${\{1,2,3,4,6\}}$$の目が$${n}$$回続けて出るときである。よって、求める確率は、
$$
\underline{1-(\frac{5}{6})^n}
$$
となる。
(2)
$${X_n}$$が4の倍数となるのは
(i)$${\{4\}}$$が$${1}$$回以上、それ以外は$${\{1,2,3,5,6\}}$$が出るとき
(ii)$${\{2,6\}}$$が$${2}$$回以上、それ以外は$${\{1,3,5\}}$$が出るとき
である。しかし、それぞれの計算の困難さに加え、互いに背反であるとも言い難い。
そこで、やはり、$${4}$$の倍数でない場合を考えることになる。それは、
(i)$${\{1,3,5\}}$$が$${n}$$回出る。
(ii)$${\{2,6\}}$$が$${1}$$回出て、$${\{1,3,5\}}$$が$${(n-1)}$$回出る。
のいずれかであり、しかも、これらは背反事象である。よって、求める確率は、
$$
1-(\frac{3}{6})^n-{}_nC_1(\frac{2}{6})^1(\frac{3}{6})^{n-1}\\=1-(\frac{1}{2})^n-\frac{n}{3}(\frac{1}{2})^{n-1}\\=\underline{1-(1+\frac{2}{3}n)(\frac{1}{2})^n}
$$
となる。
(3)「$${X_n}$$が20で割り切れる確率を$${p_n}$$とおく」なら、$${1-p_n}$$は、$${X_n}$$が20で割り切れない確率そのものである。それは、
(i)$${X_n}$$が$${5}$$で割り切れない確率、すなわち $${(\frac{5}{6})^n}$$
(ii)$${X_n}$$が$${4}$$で割り切れない確率、すなわち $${(\frac{3}{6})^n+{}_nC_1(\frac{2}{6})^1(\frac{3}{6})^{n-1}}$$
という$${2}$$つの事象の和事象を考えるのであるが、これらは背反事象ではないので、
(iii)$${X_n}$$が$${5}$$でも$${4}$$でも割り切れないとき
を除いて考える必要がある。これは「$${\{1,3\}}$$が$${n}$$回出る」または「$${\{2,6\}}$$が$${1}$$回出て、$${\{1,3\}}$$が$${(n-1)}$$回出る」確率 すなわち$${(\frac{2}{6})^n+{}_nC_1(\frac{2}{6})^1(\frac{2}{6})^{n-1}}$$である。
よって、求める確率は、
$$
1-p_n=(\frac{5}{6})^n+(\frac{3}{6})^n+{}_nC_1(\frac{2}{6})^1(\frac{3}{6})^{n-1}-(\frac{2}{6})^n-{}_nC_1(\frac{2}{6})^1(\frac{2}{6})^{n-1}\\=(\frac{5}{6})^n\{1+(\frac{3}{5})^n+\frac{2n}{3}(\frac{3}{5})^n-(\frac{2}{5})^n-n(\frac{2}{5})^n\}
$$
よって
$$
\frac{1}{n}\log(1-p_n)\\=\log\frac{5}{6}+\frac{1}{n}\log\{(1+\frac{2}{3}n)(\frac{3}{5})^n-(n+1)(\frac{2}{5})^n+1\}・・・①
$$
ここで、
$$
\lim_{n\to\infty}\{(1+\frac{2}{3}n)(\frac{3}{5})^n\}\\=\lim_{n\to\infty}\{(\frac{3}{5})^n+\frac{2}{3}n(\frac{3}{5})^n\}\\=\lim_{n\to\infty}\{(\frac{3}{5})^n+\frac{2}{3}\frac{n}{(\frac{5}{3})^n}\}\\=0・・・②
$$
同様に、
$$
\lim_{n\to\infty}\{(n+1)(\frac{2}{5})^n\}\\=\lim_{n\to\infty}\{\frac{n}{(\frac{5}{2})^n}+(\frac{2}{5})^n\}\\=0・・・③
$$
より、①の極限をとって、②③を代入すると、
$$
\underline{\lim_{n\to\infty}\frac{1}{n}\log(1-p_n)=\log\frac{5}{6}}
$$
【コメント】
最後の極限の評価のところ、解法の糸口を見出すのは、初見ではかなり難しいでしょう。$${\{(\frac{2}{6})^n,(\frac{3}{6})^n,(\frac{5}{6})^n\}}$$のうち、最も大きくかつ収束が見込める$${(\frac{5}{6})^n}$$をくくりだすのがポイントでした。
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