「大事なことと分かっていても面倒くさい」の解決法とは
いい人であることに疲れる、嫌な思い出がフラッシュバックする……。人間は、多かれ少なかれ悩みやトラウマを抱えて生きています。胸のしこりになっている苦しみに、実はすでに哲学者が答えを出しているとしたら?
Schooのロングラン人気授業「その悩み、哲学者がすでに答えを出しています。」は、毎回ひとつの悩みを取り上げ、哲学・社会学・経済学など様々な知識や思想を元に、その解決の糸口を探ります。
講師は、電通トランスフォーメーション・プロデュース局にて活躍する傍ら、事業構想大学院大学の客員フェローを務める小林昌平先生。悩みにしっかり寄り添いながら的確な答えを導く小林先生のトークに、毎回、多くの反響が寄せられます。
第21回となる今回は、「忙しい。時間がない。」の悩みにフォーカス。いつもタスクや締め切りに追われる、大切なことを後回しにする、といった行動を繰り返している方々の、解決の糸口になるはずです。
大事なことと分かっていても面倒くさいと感じてしまい、手をつけられない
今回の悩みは、「大事なこととわかっていても面倒くさいと感じてしまい、手をつけられない」。小林先生は、サルトル、大江健三郎などの哲学者や文学者の思想と生き方を例に、解決方法を提案していきます。
本記事では、小林先生による「面倒くさい事業をやるときのデカルトの方法」を深堀りします。
デカルトといえば、「我思う、ゆえに我あり」で知られるフランス生まれの哲学者。この命題を提唱した自著『方法序説』は、平たくいえば“知的マニュアル本の元祖”で、正式名称は『理性を正しく導き、学問において真理を探究するための方法の話』。デカルトが真理を探究すると心に決めたときの4つの方法を、小林先生が解説します。
方法1:枚挙
数限りなく、もれなく抜けなく列挙していくこと。日ごろの業務や活動から副次的に生まれる雑多なネタや断片を、自由な発想で散らかしておくことです。
方法2:総合
あちこちに散らばった雑多な連想の断片を、ちゃんと寄せ集めて、なおかつ一本の意味のある線にしていくこと。
方法3:明証
「枚挙」の前に行う大切なことで、まとめていることが本当に確実か、強いインサイトを得ること。「デカルトは、絶対にこれは確実に正しいと思うことから出発する。そこからレンガを積み上げるように枚挙して総合していく」と小林先生。
方法4:分析
いわゆる「困難を分割せよ」のデカルトによる有名な命題につながる発想です。次の段落で、さらに深堀りしていきましょう。
進まないことは、具体的な動作までブレイクダウンする
小林先生は『方法序説』の一説を朗読。
「私が取り組む難しい問題のそれぞれを、できる限り多くの、しかもそれを最もうまく解くために、要求されるだけの数の小さなパーツに分割すること」これについて、小林先生は分かりやすい例を用いながら、説明してくださいました。
消えていない、進んでいないという案件は、粒度が大きすぎる可能性があります。そのため、どこから手をつけたらいいか分からなくなっていたら、ブレイクダウンさせてみましょう。すると、「これだったらできる」と思える具体的な動作が生まれるはずです。
例えば、カレーを作るとします。野菜や肉は何を買うか、何種類のルーを混ぜ合わせるか、といった“サブゴール”を作っていきます。サブゴールを「これならやってもいいな」と思えるところまでブレイクダウンすることが、デカルト的なアプローチです。
ここで、カレーを作るための「野菜を切る」というTo Doができないと思ったら、「野菜を買う」までブレイクダウンします。そんなところまでブレイクダウンしてTo Doにしていいの?と思っても、問題ありません。細かい確実にできる段取りの複合が「カレーを作る」ことですから、やれることから始めましょう。
Schooの授業「その悩み、哲学者がすでに答えを出しています。」。第21回の悩み「大事なこととわかっていても面倒くさいと感じてしまい、手をつけられない」の一部を深堀して、授業を振り返りました。
今回の悩みは、生徒の中にも共感する声が多く、「めんどうさいともう人は、やることが丁寧すぎる」といった鋭い意見もありました。寄せられた質問や感想への小林先生の解答は、実際の授業でご確認ください!
『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています。 第21回 「大事なことと分かっていても面倒くさいと感じてしまい、手をつけられない」その悩み、哲学者がすでに答えを出しています。』