ハウスミュージックの起源
ハウスミュージックは、ディスコや、フィラデルフィア・インターナショナル・レーベルやサルソウル・レコードなどの、いわゆるフィラデルフィア・ソウル(フィリーソウル)などの楽曲を音源とするものも多かった。また、先駆者であるラリー・レヴァンや彼の「パラダイス・ガレージ」の客層と同様に、初期のハウスシーンは、ディスコと同様、DJ、客層ともに黒人やゲイが多かった。
ニューヨークの「パラダイス・ガレージ」のDJであったラリー・レヴァンの友人で、自らも有能なDJであったフランキー・ナックルズは、1977年にシカゴに新たにオープンした「ウェアハウス」の主力DJとしてニューヨークから招かれ、1980年代にローランド・TR-909でフィリー・ソウルの有名な楽団MFSBでドラムを担当していたアール・ヤングが生み出した4つ打ち=Four-on-the-floor(主にダンス・ミュージックにおいてバスドラムにより等間隔に打ち鳴らされるリズムのことを指し、曲の中でバスドラムを使い、1小節に4分音符が4回続くリズムであることからそう呼ばれる。ディスコとエレクトロニック・ダンス・ミュージックで多用されるビート。4つ打ちの上に2拍、4拍で手拍子が入ることでも有名で、ハイハットは1拍、3拍目をクローズで、2拍、4拍をオープンで叩く、いわゆる「裏打ち」が多用される)を強調するなど、ディスコや、フィラデルフィア・ソウル(フィリーソウル)などの楽曲を音源に独特のミックスを施し、特にゲイたちから高い人気を博したため、地元のレコード店が「ハウスミュージック(ウェアハウス・ミュージック)」と称して販売したのがシカゴ・ハウス誕生のきっかけの一つと言われている。つまり、ハウスミュージックは、70年代のディスコやフィリー・ソウル、サルソウル・サウンドなどを起源としている。4つ打ちで一定のリズムを刻むキック、8分音符ないし16分音符刻みかつ拍の間でオープンするハイハットパターン、そして突出したシンコペーションを持ち、時にはオクターブでなるエレキベースのベースラインの上で演奏される。
では、ハウスの源流となったフィリー・ソウルやサルソウル・サウンドを見に行ってみよう。
フィラデルフィア・ソウル(フィリーソウル)は70年代前半に一世を風靡したフィラデルフィア発のソウルミュージックの一形態で、作品の大半がシグマ・スタジオで制作されたことによりシグマ・サウンドとも言われる。ストリングスを擁した華麗で柔らかく甘めのサウンドが特徴である。それまでのソウル、R&Bをより洗練された都会的雰囲気のサウンドに変貌させた。
1973年 ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルー・ノーツとMFSB(Mother Father Sister Brother)の演奏でフィラデルフィア・インターナショナル・レコードからリリースされた曲「The Love I Lost」の一部で、MFSBのドラマーのカール・チェンバースがソックシンバル(ハイハットの前身)の裏打ちの入った4つ打ちビートを演奏し、この裏打ちを同じくMFSBのドラマーであるアール・ヤングがディスコに取り入れた。
フィリー・ソウルの代表的な曲としては、次の2曲である。
次にサルソウル・レコードであるが、1974年にフランシス・コッポラ監督による映画「ゴッドファーザー」のヴィトー・ドン・コルレオーネのモデルとなったコーザ・ノストラのボス、NYマフィアの故ヴィトー・ジェノベーゼを頂点とするジェノヴェーゼ・ファミリーの一員にして音楽業界の首領でもあったモリス・レヴィーの支援を得て、Cayre brothersの兄弟3人がニューヨークに設立されたニューヨークディスコサウンドのトップレーベルで、フィラデルフィア・ソウル(フィリーソウル)の流れから都会的なニューヨークのディスコサウンドとラテンを融合させた(サルサ+ソウル=サルソウル)サウンドは黄金期の75年~85年までの実質10年間の間に約120枚のフルアルバムと300枚を越える12インチ(世界で始めてロングエディット、DJ用の12インチを生み出したレーベルとしても有名)をリリースし、又ラリー・レヴァンやウォルター・ギボンズ、シェップ・ペティボーン等のリミックスヴァージョンを生み出し、そのサウンドは現在のハウスミュージック~クラブミュージックへの架け橋となったソウルミュージックの歴史とクラブミュージックの誕生を繋ぐミッシングリンクとしてその功績は現代の音楽シーンに欠かせない。
一大レーベルへと導いたのは、その代名詞的グループ、サルソウル・オーケストラの誕生だった。元々はMFSBとしてフィリー・サウンドを支えてきたが、ギャンブル&ハフと契約でもめ、ヴィンセント・モンタナの指揮のもとにニューヨーク発のハウスバンドとして生まれ変わった。そして、ニューヨリカン・ソウルでリヴァイバルした「Runaway」などのヒットを連発した。
サルソウルには現在でも人気の高いアーティストが多数所属しており、前述のサルソウル・オーケストラをはじめ、商業ベースで初の12インチ「Ten Percent」をリリースしたダブル・エクスポージャーや、「Runaway」でヴォーカルを務めたロレッタ・ハロウェイ、フィラデルフィア出身のファースト・チョイス、「I Got My Mind Made Up」が大ヒットしたインスタント・ファンク、ジョセリン・ブラウンがいたインナー・ライフ等、あげればきりがない。
現在でもハウス系を中心に人気が高い理由として、DJラリー・レヴァンの影響が大きい。彼がまわしていたNYのクラブ「パラダイス・ガラージ」では、積極的にサルソウルやフィリー系の曲をかけ、自らも12インチのリミックスに携わっていき、シカゴの「ウェアハウス」で爆発した。こうして現在でもハウスの教科書的存在として親しまれている。
サルソウル・レコードの代表的な曲としては、
などが挙げられる。
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